神田雑学大学 3月24日 講義録

ヨーロッパの列車風景

                      講師 戸矢雅道


目次

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前書き・講師紹介
列車とヨーロッパの風景
ドイツとスイスの鉄道
ライン川
氷河急行(Glacier Express)
ユングフラウヨッホ
ツェルマット
氷河急行の中間付近
ロートホルン鉄道
ローテンブルク


●前書き・講師紹介

本日(3月24日)の神田雑学大学の講義は、戸矢雅道さんの「ヨーロッパの列車風景」だった。
戸矢さんは印刷会社「エニカ株式会社」の社長さんだが、どうやら普通の印刷屋さんとは違うらしい。印刷業の本質は情報にありと30年も前に見抜き、所用や旅行でヨーロッパを訪れる度に、ご自分の目、耳、足とカメラで現地の情報を集めてきた。
今日のお話はその中からヨーロッパの、主にドイツとスイスの列車風景であった。

そういえばドイツは、印刷業のステイタスと人気が高い国である。優秀な機材や素材のメーカーがあるだけでなく、印刷の専門大学が4つくらいあると聞いた。そんなことが戸矢さんの目を、ドイツに向けさせたのかも知れない。



●列車とヨーロッパの風景

戸矢さんは印刷会社を経営し、また印刷に関連するセミナーを開いている。その関係でいろいろ新しい情報を集めるため、海外に出かけることも多い。そのついでの週末に、あちこち訪ねて撮った写真が、30年間に膨大な量となったという。
今日はそのなかで列車の風景を中心に選んだ。汽車が趣味の人ばかりではないと思うが、列車をヨーロッパの風景の中におくと良くまとまるのである。これらの美しい風景をご覧になって、是非行って みたいという気になってもらえれば、しめたものある。

ヨーロッパの目的地、例えばパリまで往復航空券を買うと、実はもう一区間他の地点、例えばマドリッドまで、無料で往復することができる。それを利用して週末、ホテル代だけでほかの場所へ行って見聞を拡げてくることができた。
今日の写真はそのようにして撮ったもののなかから、エリアをドイツとスイスに決めて集めているが、季節はバラバラである。同じ場所でも季節や時間によって、随分趣が違う。
一般の旅行者が、行った場所で一番良い写真を撮ることはなかなか難しい。



●ドイツとスイスの鉄道

・最初にドイツの2階建て列車の写真

主に長距離用だが、最近は通勤用にも多く使われている。日本人にとって、ヨーロッパを旅行するには汽車が一番便利だ。特にドイツとスイスでは時間が正確だし(JRのL特急は、ドイツをモデルにしている)、後で出てくるように駅の行先表示板が良くできていて、誰にでも分かりやすいからだ。
また駅の案内所で行きたい駅と時間を言えば、コンピュータで最適の経路や、乗り継ぎ時間などの情報を打ち出してくれる。

ただ地名が日本で使われている英語表示と異なるものがあり、チューリッヒとかミュンヘンなどのように注意を要する場合がある。
ミュンヘンはMainlandとなっている。



・ミュンヘンの駅

一般に駅には改札口がなく、外から直接入って来れる。平らなので車椅子でも、自転車でも入れる。
駅の中にはドイツ人が好きな、豚のモモ肉を焼いたのを売っている売店がある。
ミュンヘンのような大きい駅は、大抵上野駅のように行き止まり(ターミナル)となっている。

・列車の出発時刻表

列車の種類、行き先、発車時刻、乗車ホームなどが明確に表示されている。
またホームに設置されている表示板には、各車両の番号や種類(食堂、寝台車など)が、ホームのどの位置に停車するか分かるように表示されている。
BR> なおドイツやスイスの列車は、車輛毎に行き先が違う場合が多い。あちこちの駅で連結したり、切り離したり、増結したりするからだ。
各車輛の扉や内部に行き先が表示されているので、乗り間違えないように気をつけねばならない。

・ドイツICE

この間事故を起こしたが、ドイツ自慢の新幹線である。
外観や窓は汚れている。日本人ほど丁寧に清掃しないらしい。しかし内部のビュッフェはユッタリしていて、すいている。

・ルフトハンザ専用列車

ルフトハンザ航空会社が借り切って、航空客のためにフランクフルト・デュッセルドルフ間を1日4−5往復走らせている。鉄道の乗車券では乗れない専用列車である。
航空客にとっても、列車は便利なのである。


●ライン川

・ライン川の観光船

ライン川は全長1320km、ライン川観光船は主にマインツ−コブレンツ間を往復している。観光船は大きいが内部は殆どレストランばかりである。
両岸には美しい古城、中世の町並み、広大なブドウ畑が続く。また川の両側に列車の線路が走っている。

・ローレライの岩

ハイネの「ローレライの歌」で有名な、皆が期待しているローレライの岩は、実際に見るとなんの変哲もないただの崖である。頂上に旗が立っている。
流れも日本人から見れば緩やかで、とても急流とは感じられない。しかしドイツの人から見れば、大変な急流であるらしい。


●氷河急行(Glacier Express)

ツェルマット−サン・モリッツ間、約260kmを8時間半ほどかけて走る。時速約30kmの世界一遅い特急である。
客の人数に応じて本数・車輛数を増減、2輌のものもある。一度間違えて本来停車しない駅で待つことになったが、交渉したら停めてくれた。空っぽにもかかわらずほかの客は乗せなかったが、友好的というか万事親切で、観光を大事にしている国であることが感じられた。

・お花畑

花は6月の半ば位から咲き始める。お花畑のようだが実はほとんどが牧草地である。名もない白や黄色の小さい花で一面に覆われる。6月から7月にかけてがシーズンである。



・パノラマ車輌

氷河特急に最近出てきた、天井の方までガラス張りの1等車。天気のよい日は内部が暑くなるので、この車輌だけには冷房がついている。
明るくて格好もよいが、4人がけのため窮屈で人気がいま一つない。ほかの1等車は1列3人がけである。

・花を飾る

スイスでは駅でも家でもよく花を飾る。真冬ですら花を絶やさない。
寒冷地だから大変だと思うが、農協とか花屋とかどこへいっても花の種や苗を売っている。

・ラックレール

スイス全体が登山鉄道のような国なので、半分近くの線路が歯車のついたラックレールを使用している。以前碓氷峠で使われていたアブト式と同様のものである。

・サースフェイ

氷河の見れる観光地。標高2400メートルくらいあり、7月のこの時期にもスキーができる。スイスには夏スキーのできるところが沢山ある。

●ユングフラウヨッホ

・シューニゲ・プラッテ(Schynige Platte)

インターラーケンからユングフラウヨッホへ登る途中の、ヴィルダースヴィルからクラシックな登山電車が山上まで50分くらいかけて、ゆっくり昇っている。
シューニゲ・プラッテの山上にはホテルや植物園があり、ユングフラウ3峰(ユングフラウ、アイガー、メンヒ)が一望に見渡せるので、夏は賑わっている。

列車内部の様子。窓がドアになっており内部に通路がない。木の簡素な横長ベンチの座席は勾配に合わせて傾いている。トロッコのようなレール幅60センチくらいの、かわいらしい車輛である。

・ユングフラウヨッホ

  標高3454m、鉄道駅としてはヨーロッパで一番高所にある。麓のインターラーケンからグリンデンバルト経由の左回りと、ベンゲン経由の右回りの2ルートあるが、どちらも途中2回乗り換え、2時間半ほどかかり往復料金は1万円以上する。

アイガーとメンヒのお腹の中を通る7kmのトンネルを40分かけてアイガーの肩まで昇る。この鉄道は明治年間の建設で、私鉄であるが専用の発電所まで作った。驚くべき商魂というべきか。真冬でも除雪して運行している。

車内放送はドイツ語、フランス語、英語に次いで4番目にに日本語がある。最近韓国語も加わった。観光客数ランキングがわかる。JTBが非常に有名である。

・アレッチ氷河

トンネルを抜けて展望台地にでると、アルプス最大のアレッチ氷河(27km)が見られる。幅は約2kmで、夏は横断ツアーがある。氷河は氷の川で、年間数メートル流れている。

・グリンデルバルト(Grindelwald)

日本人が大勢泊まる有名な観光地である。真中はゴルフ場のようだが牧草地である。アイガーはグリンデルバルトからは真上に見える。

・メンリッヒェン

グリンデンバルトからロープウェイで30分、やはり3巨峰を展望するに絶好の山(2345m)である。12kmのタフで壮大なスキーツアーコースがある。

またここからクライネシャイデック辺りへの、ハイキングコース、お花畑も素晴らしい。
一般にアルプスのハイキングコースや登山道は沢山あり、よく整備されている。初心者、中級者、上級者向けにランクわけされている。初心者コースは、常に表面を研磨してあり、車椅子でも通れるくらいである。ハイキングコースの標識は各駅にある。
コースはユングフラウエリアでは、鉄路に沿っているのが多い。列車の窓から手を振ったりして、よい雰囲気である。

・ミューレン

車の入れない村なので、グリンデンバルトと違って静かで、素朴である。ユングフラウを、谷底から頂上まで見れるという、贅沢な眺望に恵まれている。

●ツェルマット

・ゴルナグラート(3090m)

ツェルマットからの登山鉄道の終着点で、マッターホルンの絶好の展望台である。
どの駅からでも電車をおりて歩けるハイキングコースがあり、天気が良ければずっとマッターホルンの眺望が楽しめる。途中に素晴らしくマッターホルンの眺めがよい、レストランとホテルがある。

・マッターホルン(4478m)

マッターホルンは三角形の尖った独立した山で、見る方角によってかなり形が違う。何度も行ったが、麓からスカッと頂上まで見えるチャンスには、なかなかぶつからない。かかっていた雲が、流れて行ったかと思うとまた沸いてくる。
ツアーの一度だけの旅行者がよいチャンスにぶつかるには、よほどの幸運が必要だろう。

・クラインマッターホルン(3883m)

ヨーロッパの展望台としては、最高地点にある。
初めは6人乗り程度のゴンドラで、あとは100人あまり乗れる大型ロープウェイに乗り換えて昇る登る。最終点で降りてトンネルを抜けると広い台地に出る。夏スキーのゲレンデである。
ここから見るマッターホルンは、左肩に大きい段があり、絵はがきなどでお馴染みのものと、かなり違った姿をしている。

・スネガ(Sunnega)

高速地下ケーブルカーで5分で昇れる展望台である。ツェルマットから手軽に行けるが、ゴルナグラートよりマッターホルンの姿が美しいといわれる。絵はがきや商標に使われるマッターホルンの写真の多くは、ここからのものであろう。
ケーブルカーを降りたところにレストランがあるが、山の上と下で物の値段が変わらないのが、スイスのすごいところである。規制をしているらしいが。

またどこへ行ってもトイレは水洗である。高い場所ではヘリでタンクごと交換している。女性もトイレの心配がないほど、どこへ行っても清潔である。



●氷河急行の中間点付近

この辺りは、日本人観光客が少ないところである。スケジュールの都合で立ち寄り難いようだ。
ここではアレッチ氷河を、ユングフラウヨッホの反対側から見ることができる。スイスではマッターホルンに次いで、2番目によい観光地とされている。
下に降りると、フィッシュというリゾート村で、ホテルもある。

氷河急行の駅からロープウェイで昇るわけだが、スイスには荷物の託送便制度がある。空港で荷物を預けると、降りる駅まで運んでくれる。駅から上までもロープウェイで、運んでくれる。1個10フランである。バスの駅にも運んでくれる。
スイスに関する限り、個人客でも荷物を自分で担いで歩かなくて済む。

●ロートホルン鉄道

眺望のよいロートホルンの、山頂に昇る鉄道が面白い。
蒸気機関車は急勾配に合わせて、水のタンクが水平になるよう、予め前に傾斜している。急勾配のため2輌編成しかできないので、何度か行ったが頂上まで乗れたのは一度だけである。


●ローテンブルク

ロマンチック街道のハイライトで、中世の姿を残す保存都市である。汽車で行ける数少ない町の一つでもある。
看板が面白かった。凝っていて楽しいものが多かったので、沢山撮ってみた。




★さすがに何十回も、現地へ行かれた人のお話である。一度や二度の旅行や、ガイドブックからは手に入らない貴重な情報に溢れていた。
ヨーロッパがぐっと身近に感じられ、また行ってみたいと思ってしまった。

おわり(文責 大野令治)

会場写真撮影:橋本
HTML制作:大野令治
画像選定、編集、HTML編集:田口和男