神田雑学大学 7月7日 講義「お芝居をしよう」

「お芝居をしよう」

講師 堂面 亮子 氏


                                          
目次

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  1. 講師紹介
  2. 実技指導
    A. まず、体をほぐす
    B. 複式呼吸の練習
    C. 声を出す
    D. 発声練習
    E. 写真の表情の決め方
    F. イメージする
    G. 存在しない物を見る
    H. 詩の朗読

1. 講師のご紹介堂面 亮子 氏

 桐朋学園の演劇科を出てから青年座を経、その後フリーで大中小の特にステージを中心に仕事を してきた。テレビのコマーシャルなどの経験もある。
 途中子育てのため中断したが、ふたたびこの世界にもどり、現在、工藤ゆきなどの所属する事務所で、 子役やタレントを養成したり、マネージャーなどの仕事をしている。
 仕事は仕事として、それ以外に考えていることがある。演劇のレッスンというのは、 タレントに演技指導をして商品として売り込むこと以外にも、 別の利用の仕方があるのではないか。
 たとえば、人前では赤面してうまく話ができない人や、自分の殻にとじこもってしまう人たちに、 自分の心を解放する方法として利用できるのではないか。また、素人の方や、 芝居が好きなお年寄りたちがサークルを作って芝居をする、 見る人のためではなくやっている自分たちが楽しむために芝居をする、 ということができたらいいな、というのが、私の夢である。
 夢は夢として、現実ではそういうビジネスの中で演技を教えているが、 今日は芝居の経験のまったくないみなさんと一緒に時間を過ごすことで、 夢に一歩近づくのではないかと楽しみにしている。みなさんもこれを契機に、 さらに芝居に興味をもっていただければと思う。
 芝居を見に行ったときに、自分たちも少し科白のけいこをやってみたがやっぱりプロはすごいなとか、 あるいは、なんだたいしたことないじゃないか、自分のほうがうまく出来そうだなど、 今までとは違った角度から芝居を楽しみ、いっそう芝居に親しんでいただければ幸いである。
2. 実技指導 机を片づけ、椅子を丸く並べて座る。即席のタレント養成ワークショップの始まりである。

A. まず、体をほぐす

 「いつもは床に座ってやるのですが、今日はみなさんがきれいな洋服を着ていらっしゃるので、 立ったままやってみましょう。からだをほぐしながら、心をほぐしながら、 自分もタレントになったつもりで挑戦していただきたいと思います」 という講師の言葉で、まず背伸びをする。
 しっかり背筋をのばし、そのまま力を抜いて手を下のほうにおろす。このときに注意することは、 まっすぐに立つこと。自分ではまっすぐ立っているつもりでもちょっと前屈みになって 首が前に出ていることがあるので、肩胛骨と肩胛骨を付けるような感じでやってみるとよい。

B. 複式呼吸の練習

 髪の毛がてっぺんから引っぱられるような感じでまっすぐ立って、お腹に息を吸い込む。 次に口から息を完全に吐く。背中とお腹がくっつくような感じで全部吐く。 苦しくなったところでふっと力を抜くと、勝手に息がお腹に入ってくる。このときは鼻から入れる。

C. 声を出す

 すっーと口から息を吐くときに、そこで声を出す。まずハミングから。
全員一緒だと誤魔化す人がいるから(笑)、ということで一人ずつ練習する。

D. 発声練習

 口を大きく開けて、大きな声ではっきりいうこと。はじめに「あ行」を講師がとなえ、全員があとに続く。 次は一人ずつ「か行」「さ行」・・・と続ける。

あ行 あえいうえおあお
か行 かけきくけこかこ
さ行 させしすせそさそ
た行 たてちつてとたと
な行 なねにぬねのなの
は行 はへひふへほはほ
ま行 まめみむめもまも
や行 やえいゆえよやよ
ら行 られりるれろらろ
わ行 わえいうえおわお
が行 がげぎぐげごがご
ざ行 ざぜじずぜぞざぞ
だ行 だでじづでどだど
ば行 ばべびぶべぼばぼ
ぱ行 ぱぺぴぷぺぽぱぽ
鼻濁音 がげぎぐげごがご

 これを聞くと、知っている人は「あ、発声練習をしているんだな」と思うほど有名。 実際の稽古場では、これを早口で言ったり、いろいろバリエーションを加えて練習する。 そのあと「ういろう売り」というのもやるのだが、今日は省略。

E. 写真の表情の決め方

 芝居のことなど何も知らない、きれいだというだけの素人の男の子・女の子をすぐ仕事に 送り出さなければならないことがある。そういうときに、最初に即席で教えるのは、写真写りをよくする コツである。
 最初からカメラのレンズを注視しない。じっと待っている間に表情がこわばってくるので、 はじめは下を向いていて、カメラの準備ができて「はい、とりますよ」というときにはじめてカメラを見る。
「はい!」という合図とともに、ぱっと上を向いてレンズに視線を合わせ、フランス語で「ウイ!」と言う。
ではやってみましょう、ということになり、一人ずつ「チーズ」ではなく「ウイ!」と言って笑顔をつくる。

F. イメージする

 まっすぐ立って目をつぶり、春・夏・秋・冬のどれかひとつの季節をイメージする。 現在その季節に身を置いたと想像するのである。いっさい言葉は出さず、動作も何もしない。 その季節の気温・風・風景・空の色などをイメージし、心で感じる。まわりの人にどの季節を感じたかが 伝わるだろうか。
 一人ずつ試みた後で、見ている人にどの季節だったかを当ててもらうと、何人かは当たる。 子どもたちにこれをやらせると、すっかり入り込んでしまい、冬だと寒そうに身を縮めたり 、春だと体中から力が抜けたりと、非常にわかりやすい表現になることが多い。

G. 存在しない物を見る

 美術館に行ったことにしよう。目の前に何かの彫刻があると想像し、それを鑑賞する。 椅子など実際にある物を見るのは視線が定まってやりやすいが、何もないところで、それをみる 、まわりの人にその視線をたどって何を見ているか想像させるというのは難しい。
 ミロのビーナスでもダンテの彫刻でも、自分の好きなものを想像し、それが目の前にあると思って鑑賞 するのだが、あまり小さな物だと視線の動きがなく見ている人にわかりにくい。 まわりで見ている人にそれを浮かび上がらせるには、大きい物のほうが伝わりやすい。

H. 詩の朗読

 最後に詩の朗読をする。15分ほど黙読をしながら、どういう雰囲気で読むかを考える 聞いている人に上手だと思われたいというのではなく、自分の気持ちで、自分の読みたいように読む。 詩の朗読やナレーションというのは、実はむずかしくて、実際の現場では 中堅以上の俳優が担当することが多い。
 1ヶ所だけ残して部屋の電気を消し、スポットライトを浴びて一人ずつ朗読をする。 今日のこれまでの仕上げである。
 講師の用意した詩は、それぞれ雰囲気が違い多様であったが、思い入れたっぷりに読む人、 淡々と静かに読む人、感情を込めて力強く読む人など、それぞれに味のある朗読であった。

文責:大井直子
会場写真撮影:橋本 曜
HTML制作:石川美雅
HTML編集、画像データ挿入:田口和男