神田雑学大学 7月21日 『男と女で世界は廻る』

『男と女で世界は廻るー戦乱の中の男と女−』

出演 廣川 文子   (朗読)
田村 恒彦  (ギター演奏)
関 かずえ  (シンセ・キーボード演奏)
田口 和男 (司会・朗読)
鈴木 一郎  (構成・朗読)
   

  



                                          
目次

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   <導入部>『鉄道員』
   <第一部>
    1.『禁じられた遊び』
    2.『グレンミラー物語』
    3.『遠い人へーーー出さない手紙』
    4.『戦争のある風景』
    5.『悲しみは星影と共に』
    6.『人間の条件』
  <第二部>
    7.『慕情』
    8.『渚にて』
    9.『カサブランカ』
    10.『誰がために鐘は鳴る』
    11.『愛情物語』
    12.『二十四の瞳』
    13.『子猫が見たこと』 
    14.『りんごの唄』 

出演者のご紹介 田村 恒彦  

平成11年10月第39回
「現代ギター社」主催アマチュアギターコンサートで優勝
平成12年2月
「コネスコクラブ」主催チャリティーコンサートでソロ演奏

その他の演奏出演
三鷹ギターフェスティバル
御茶ノ水「アンダンテ」ホリデーコンサート
シンガーソングライター枝松貴子ライブ


<導入部>

『鉄道員』(ギター演奏:田村 恒彦)私たちのポケット映画館に、ようこそお越しくださいました。
本日お届け致しますのは、『男と女で世界は廻るー戦乱の中の男と女ー』です。
男と女で世界は廻ります。男は波に流離う舟、そしてそれを操る海は女、 その先行きは風の間に間に行方もしれません。二十世紀は戦乱の時代でした。
本日は、皆様の心の中に、戦争に命を燃やした男と女のドラマを映画音楽と 朗読で再現いたします。あの暑く長かった日から、今年で丁度55回目の夏を迎 えました。この催しを、今次大戦で散った英霊、銃後を守った女性、そして幸い にも生還して戦後の復興に邁進したすべての人々に奉げます。

<第一部>

1.『禁じられた遊び』 (朗読:市川 加代子)

舞台は、第二次世界大戦下のフランス。オープンカーに乗った都会育ちの小さな ポーレットが、ドイツ軍の侵攻で逃げる人の群れの中にいる。ペットの子犬が 逃げて、ポーレットが追う。そこに機銃掃射。ポーレットをかばって地に伏せた 両親が撃たれて死ぬ。そのあと、川に流された子犬の死体を追って、ポーレット は11才の少年が住む農家に置いて貰う事になる。その少年ミシェルとポーレッ トの無邪気な交流を通して「死」というものがポーレットの中におぼろげに認識 されていく。

無教養で粗野な大人たちの世界と喧騒から隠れるようにして、二人は「お墓作り」 に熱中する。やがて墓地から盗んできた立派な十字架を立てた、動物や虫たちの 秘密の墓地が出来あがる。

『禁じられた遊び』のテーマ(ギター演奏:田村 恒彦)

2.『グレンミラー物語』

アイオア州クラリンダ、あの「マディソン郡の橋」の舞台となった近くの町に 生まれたミラーは、コロライド大学時代から演奏,作編曲活動をはじめ、 1924年ベン・ポラック楽団にトロンボーン奏者兼編曲者として入団します。

そして、本格的な音楽教育を受け、次第に編曲者として注目され、遂に新鮮な あのミラー・サウンドと呼ばれる演奏のスタイルを創造します。特に、 楽団のテーマ曲にもなる「ムーンライトセレナーデ」のシーンは 映像に載せた創作過程が感動を呼びます。

その後、第二次大戦で志願して入隊、慰問演奏などで活躍しますが、1944年 12月、演奏会に向かう飛行機が大西洋上で消息を絶ち、帰らぬ人となった。
この最後の演奏会では、彼の演奏プランで、思い出の「茶色のこびん」が 演奏され、故国で聴く夫人はその茶色のコビンをまさぐりながら涙します。

『ムーンライトセレナーデ』(テープ演奏)


3.『遠い人へーーー出さない手紙』

(朗読:廣川 文子)

昭和二十年八月十五日、終戦。辛く悲しく、そしてとても暑い日でした。
もう今日はとても無理だと諦めていた。真夜中に、大混乱の航空隊から あなたは来て下さった。汗ばんだ作業服のままの姿に一瞬目を見張り思わず 走りより寄りました。門の傍らの暗い夾竹桃の木蔭で、何も言えずに抱き 合っていると、足元の草むらで虫が鳴いていましたっけ。これがあなたとの 最後なのだと、私にはよくわかっていたのです。

何時もはひっそりとしていた小さな駅が、あわただしく去って行く航空基地の 人たちで溢れ、ごった返しているプラットホーム。担任の授業を一時間だけ 代わってもらって駅にかけつけたけれど、あなたの姿は見つけられず、遠く 汽笛を響かせて汽車は出て行きました。

にじむ涙の中に、踏切小屋の横に咲くカンナの花の紅がぼやけていたのを おぼえています。あれから五十年。海峡を隔てて時が過ぎました。
今のあなたがおひとり住いだと風のたよりに聞きました。そして私も今は一人。 今年は暑さが厳しかったせいか、夾竹桃の花がひときわ色濃く咲きました。

あの年の夏を思い出します。一度でいいからお目にかかりたい、せめてお電話 でもと何度思ったことでしょう。でも多分お会いしない方がいいのだと自分に 言い聞かせました。二十二才の私を愛して下さった若く凛々しい海軍士官の 面影をそのまま取っておきたいから。そしてあなたにも、せめて心の片隅にでも あの頃の私を残しておいて頂きたいから、あの激しい戦いのさなかでも失われる ことのなかった青春の日々。
この手紙があなたのお手元に届くことは無いでしょう、多分ーー。
これは過ぎ去った思いでのための私自身へのラブ・レター。

あなたのおすこやかな日々を心から祈りつつ。   かしこ

『ひまわり』のテーマ
(シンセ・キーボード演奏:関 かずえ)

4.『戦争のある風景』 

さて、皆様を北満州の美しい草原に御連れ致しましょう。
彫刻家 石場清四郎さんのエッセイ「戦場のある風景」です。石場さんは 昭和十七年大陸に出征、チチハルを振り出しに満州北西部を転戦いたします。
描かれている花は、中国ではイェンチュンホア、迎春花といって、李香蘭の 映画や唄で有名です。でもこれは一つの花ではありません。早春に咲く花の 総称で、北満州では、蒼い「ヒロハオキナグサ」別名を白頭翁。北中国では 鮮黄色の「オウバイ」又は「モクレン」をさします。

(朗読:廣川 文子、鈴木 一郎)

某日、古い本を整理して居た時、夏の間から、ふと迎春花の押し花が出てきた。 思い浮かべても、もうすでに二十年ばかりを経ていることになる。
色こそ褪せて居るが、銀色の産毛に、暑く包まれた濃紫のこの可憐な花は、 北満に住んだことのある人々にとっては、忘れようとしても忘れ得ぬ花である に違いない。

或人にとっては、単なる旅情を慰めたに過ぎぬかも知れない花だが、或人に とっては、生命を賭けた思いでを持って居る小さな花、この花と共に、 私にも亦少なからぬ想い出がある。

ハイラルから一路南に進むと、蒙古に続く大草原地帯に入ってノモンハンに 達する。大草原というがここは、草の海原だった、大草海と言ったほうが ピッタリする。風が草を靡かせて吹き寄せるさまは、海の波のうねりに そっくりなのだ

合唱『草原情歌』(歌唱指導:市川 加代子、シンセ・キーボード演奏:関 かずえ)

5.『悲しみは星影と共に』


チャップリンの娘ジュラルディン主演、メロ・リージ監督のイタリア映画。
これはユダヤ人の子弟がナチスの目を逃れながら生きる姿を描く哀切な物語。

『悲しみは星影と共に』のテーマ
(シンセ・キーボード演奏:関 かずえ)


6.『人間の条件』

第一部の最後は1959年、にんじんくらぶ製作松竹配給の「人間の条件」 これは、上映時間九時間半、全六部の大作で、戦争を知らない戦争世代が 親たちの経験を追体験するのに絶好の作品といえます。
軍隊の非人間性に敢然と立ち向かう主人公の梶は原作者五味川氏の分身であり、 我が家への帰還を夢見ながら原野に倒れるラストシーンは、今次大戦に散った 英霊、そして生還してその後の経済戦に立ち向かった日本の男性の思いを代弁 しているかのようです。

(朗読:廣川 文子、鈴木 一郎)

雪になった。珍しい、綿のような雪だ。宵闇に紛々と舞い狂う。そこは、 見渡す限り、刈り取られて根株だけが行儀良く残っている高粱畑であった。
その涯に寝そべっている山の麓に、行きくれた旅人を誘い寄せるような暖かい 灯がともりはじめていた。梶は立ち停って、遥かに眺め、ほほえんだ。
そこはまだ老虎嶺にはほど遠かったが、梶にはそれが思い出のその山に見えた のだ。

「美千子、ここまでせいいっぱいやって来たことで許してくれ。
美千子、ここまで来た俺を見てくれよ。美千子、これは食べないで君にやるよ、 君に持って帰るよ。この饅頭は、、、たった一つのおみやげだ、七百余日の留守 をした僕のたった一つのみやげだ。沢山人を殺した、君の所へ歩いて行く為に僕 は随分と人を殺した。美千子、君はまだ俺のことを待っていてくれるだろうね。」

  美千子「よかったわ、誰がなっていったって帰って来ると思っていた。
痛い、あなたの髭、、今夜、ちゃんと剃ってね。お風呂に入ってね。
だめよ、ご飯はその後よ。あなたのことですもの、きっと帰って来るって、、、。
あなたに抱かれていると、身体が融けちゃいそう、まるで、、、、。」

「待ってくれ美千子、もう大丈夫だ。もう直ぐだよ。俺はここまで来た。苦し みばかりと並んで歩いてきたが、それももう終わりだ。今夜俺は君を見る、君の 声を聞いて、君の手に触れ、そして失われたもののすべてを、今夜取り戻す。
五分間だけ休ませてくれ。とうとう俺たちは、さよならを言わずにすんだね、 美千子。君と俺の生活は今夜から本当に始まるだろう。 美千子、俺はとうとう、帰って来た。とうとう、君の所へ。」

梶は、そこが柔らかいしとねであるかのように、背を伸ばして切り株の間に寝た。 美千子が戸を開けて、狂喜するに違いないその瞬間の顔と、奥でパチパチと はぜているであろう暖かい火の他は、何も考えなかった。

雪は降りしきった。遠い灯までさえぎるものはない暗い荒野を、静かに、 忍び足で、時間が去っていった。雪は無心に舞い続け、降り積もり、やがて 人の寝た形の、低い小さな丘を作った。

『梶美千子のテーマ』(ギター演奏:田村 恒彦)


<第二部>

7.『慕情』テーマ
(シンセ・キーボード演奏:関 かずえ)

8.『渚にて』

さて、ここで皆様を未来の戦争に立ち会って戴きます。
数ヶ月前に起こった第三次世界大戦で北半球は崩壊し、放射能が地球を覆って 今や南半球のオーストラリアのみが生き残っている。ネヴィル・シュートの 原作をスタンリー・クレイマーが映画化した1959年ユナイト作品。最後に生 き残った人々の行動を、若い海軍士官ピーターの家庭を舞台にお聞き頂きます。

(ボーカル:市川 加代子、シンセ・キーボード演奏:関 かずえ)

9.『カサブランカ』

いよいよ皆様お馴染みの映画の登場です。マイケル・カーティス監督、 ハンフリー・ボガード、イングリッド・バーグマン、ポールヘンリード出演の 第二次大戦中のアメリカ映画「カサブランカ」。この映画はアメリカの参戦に 向けた戦意高揚の映画で、真珠湾攻撃の翌日から製作が開始され、連合軍の モロッコ上陸に合わせて1942年11月に封切られました。
中立地帯の仏領モロッコのカサブランカでリックの経営する「カフェ・アメリカ ン」に、かっての恋人イルザが抵抗運動リーダーの夫、ラズロを伴って現れます。 そして、奥から「この曲を弾いてはいけないと言ったはずだ!」とリックが現れ、 そこにいるイルザを見て目を見張ります。そして閉店後、サムと酒に酔いしれ、 パリを回想するシーンと続きます。

  (朗読:廣川 文子、田口 和男、ボーカル:田口 和男)
 

10.『誰がために鐘は鳴る』

1943年アメリカ映画「誰が為に鐘は鳴る」ヘミングウェイの原作を「駅馬車」 などの名脚本家タドリー・ニコルスが脚色、内乱時代のスペイン北部が舞台であ る。アメリカの教師ロベルト・ジョーダンが志願して、義勇軍に参加し、山間部 の鉄橋爆破をジプシーたちと工作する。その中に両親を殺され自分も陵辱された 美しいスペイン娘マリアがいた。二人の恋は戦場で生まれ、そして燃えつきた。

『誰がために鐘は鳴る』テーマ(テープ演奏)

(朗読:廣川 文子、鈴木 一郎)

11.『愛情物語』

(シンセ・キーボード演奏:関 かずえ)

お送りいたしましたのは、1955年コロンビア映画製作「愛情物語」 から、"To Love Again"でした。第二次大戦から凱旋したエディ・デューン を待っていたのは、忘れ形見の息子と、乳母代わりの英国女性。長年離れて いた息子との絆も出来、その英国人の彼女と結婚した幸せもつかの間、彼らを 切り離す冷たい風が吹いて、この曲を弾きながら最後を迎えます。

12.『二十四の瞳』

(朗読:市川 加代子)

  物語の始まりは昭和17年、戦争が12人の子供たちと先生の運命を変え>て行く。家が貧しく小学校を中退して大阪の病院で働くまつえ、肺病を病み 物置で寂しく暮らすおとえ、五人の男のうち三人がお方の質屋に奉公に出ていた 番頭になるのを夢見ていた乙吉は失明していた。

そして、戦争が終わった春の或日、クラス会が行われた。参加したのは8人、 まつえも大阪から賭けつけて来た。会たけなわ一枚の写真が持ち出される。
怪我をした大石先生を見舞うために、12人の子供たちが岬から二里の道を 歩いてきた、一本松の下で、先生を囲んで撮った記念写真であつた。

合唱『浜辺の歌』 (歌唱指導:市川 加代子)

13.『小猫が見たこと』 

本日の締めくくりは、大仏次郎さんの童話です。
54年前、昭和21年7月号の「幼年倶楽部」に載った「小猫が見たこと」。 さて、皆さんの戦後は如何だったでしょうか?廣川さんの朗読でその頃を 思い出して頂きましょう。

『小猫が見たこと』(朗読:廣川 文子)

小猫は風に吹かれていて、きゅうに鼻をぴくぴく動かしました。
「人間だな。たばこの臭いがする。」月明かりの中に黒い人の影が歩いてくる のが見えました。重い靴の音を聞いて、小猫はぴくりとして、からだをすくめ ました。それから急いで風呂屋の板塀に爪をたてて、高いところへ,逃げのぼ りました。

人間は小猫が思ったよりも、ゆっくりと歩いてきました。大きな重いリュッ クサックをしょっていたせいで、早く歩けなかったのでした。へいの上にのぼっ た小猫は、風をかいでみて、病気の人だなと思いました。その人は、小猫がいる 下まできてから、しげしげと、ろぢぐちを見ました。そして、へいの上の小猫を 見つけると、「猫か」とひとりごとをいいました。
そして、そのすぐあとで、背 中の荷物を、重そうにゆりあげてから、なにを思ったか、猫のなき声の真似をし ました。「にやぁお・・・」。悪いことされはしまいかと思って、身をすくめて 逃げる支度をしていた小猫は、みょうな人だと思って見送りました。

14.『りんごの唄』 

合唱『りんごの歌』 

(歌唱指導:市川 加代子、エレクトーン演奏:関 かずえ)

作詞:サトウハチロウ 作曲:万城目正 
唄:並木路子

赤いリンゴに くちびるよせて

だまってみている 青い空

リンゴはなんにも いわないけれど

リンゴの気持ちは よくわかる

リンゴ可愛いや 可愛いやリンゴ

−おわりー
文責:和田 節子
会場写真撮影:橋本 曜
HTML制作:鍜治 正啓
HTML編集、画像データ挿入:田口和男
会場ビディオ撮影:橋本 曜、市川勝昭
ビディオクリップ制作、掲載:田口和男