神田雑学大学2000年9月29日 講義録

アルメニア料理はいかがですか


講師:「日本アルメニア協会」会長・中島偉晴&メラニア・バグダサリアン


                                          

目次

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 ★「アルメニア」って、どんな国?

 ☆アルメニア料理を召し上がれ!

    <トルマの作り方>

    <パフラヴァの作り方>

    <バストゥルマの作り方>

 ★今宵、楽しい一時を過ごすことができました♪




★「アルメニア」って、どんな国? 皆さんは、あの独特の旋律と速い調子の「剣の舞」を何度か耳にされたことがあるでしょう。
作曲家・ハチャトゥリアン(1903〜1978)の象徴的な曲として広く知られていますが、これはバレー曲『ガイーヌ』の第3組曲第5曲です。

 「ガイーヌ」(アルメニア語では「ガヤネ」)というのは、アルメリア人の女性の名前ですが、グルジア生まれのアルメニア人であるハチャトゥリアンの思いが曲名に込められているのでしょう。
「アルメニアの歌、グルジアの民謡、アゼルバイジャンの弦楽器。街は音楽であふれていた」とハチャトゥリアン自身が述べているほどですから、当時のアルメニア一帯がどんな国だったか想像できますね。

 本日は、『日本アルメニア友好協会』会長・中島偉晴さまに「アルメニア料理」をご紹介いただきますが、その前にアルメニアの地理と歴史を簡単にご紹介しておきましょう。

先ず、アルメニアの地理的な位置は、北はグルジア、東はアゼルバイジャン、西はトルコ、南はイランに接しています。

ほとんどが標高1800〜2400mの高原地域で、面積は3万平方km弱、日本の四国の1.6倍、人口は約370万人という小さな国です。

地図を見ますと、国境には『旧約聖書−ノアの方船』で有名なアララト山(5165m)があります。そこが人類の堕落を怒った神がおこした大洪水の折に、方舟に乗ったノア一家と動物たちが漂着した所だとされています。

そんなところから、アルメニア人はノアの子孫だという説があるくらい古い民族であり、またアルメニア高地は文明発生の地のひとつでもあるとも言われているのです。


 そのアルメニアの歴史を年表風に列記してみましょう。


 * 紀元前9〜6世紀、ウラルトゥ王国。
 * 前5世紀末、アケメネス朝ペルシャに征服され、続いてアレクサンドロス大    王、セレウコス王国に支配さる。
 * 前2世紀、セレウコス王国がローマに滅ぼされたためアルメニア独立(アル    タシェス王朝)。
 * 前1世紀、アルメニアはティグラン二世大王の時代に繁栄。
 * 1世紀、アルシャク王朝アルメニア。ローマとペルシャの間の「緩衝国」化    する。
 * 4世紀、ローマとイランに分割される。
 * 5世紀、ササン朝ペルシャに服属。
 * 7〜9世紀、アラブに支配される。
 * 9世紀、アショット一世によってアルメニア独立、ヴァン湖を中心に王国   (バグラトゥ王朝)栄える。
 * 11〜14世紀、キリキアにアルメニア王国。
 * 11世紀、ビザンチン帝国、セルジュークトルコに荒らされる。
 * 13世紀、モンゴル帝国に侵入される。
 * 16〜18世紀、サファヴィー朝イランとオスマントルコの争奪の的となり、両 国に東西分割される。
 * 1826〜1828年、ロシア対イランの戦争で、イラン領の東アルメニアがロシア 領となる。
 * 1877〜1878年、ロシア対トルコの戦争で、トルコ領のアルメニアの北東部の カルス、バトゥム地方がボルシェヴィキのソヴィエト領となる。
 * 1920年、ボルシェヴィキのソヴィエト政権成立。
 * 1936年、アルメニア、隣国のグルジア、アゼルバイジャンとともにソヴィエ ト連邦構成の共和国となる。
* 1990年、ロシア共和国誕生。
 * 1991年、アルメニア共和国として独立。

いかがですか。海にかこまれた列島日本と比べたら、何ともモノ凄い歴史をもっている国ですね。
そんなアルメニアの誇るべきものは、アルメニア教会とアルメニア文字です。

1世紀に、アルメニアでキリスト教の伝導が始まりました。
3世紀末には、グレゴリウスという人が出て、当時の国王トゥルダト3世をはじめとして多くの国民を改宗させています。言えば、キリスト教史のうえで世界初の国教となったのです。以来、教会を基盤とした民族的結束は強固なものになりました。

4〜5世紀ごろ、メスロブマシトツという僧が36文字からなる独特のアルファベットでアルメニア文字をつくって、さらにアルメニア語による『聖書』を完成させました。

また、アルメニア建築はキリスト教世界の建築に大きな影響をもたらしたとされています。代表的な建築として、エチミアツィン大聖堂(5世紀)、アフタマール教会(10世紀)、アニ大聖堂(10世紀)などがあります。

建築評論家は「光と影の部分の交錯から生まれる空間の広がりを浮き立たせることにより、訪れる人に沈思と瞑想の時を与えてくれる」と最高の賛辞を与えています。



☆アルメニア料理を召し上がれ!

さて、アルメニアを訪問した中島さんは、ある日ちょっとした調べものがあって博物館へ出かけたのですが、そこで一人のアルメニア美人と出会われたのです。

その博物館で中島さんが何を調べられたのかは分かりませんが(アルメニアの美女でも調べられたのでしょうか、失礼!)、結果的にはその美しき学芸員を奥さまにされてしまいました。

本日、中島さんは奥さまのメラニア・バグダサリアンさんと、一粒種の可愛いアナヒータちゃんとご一緒でした。というよりも、今宵のテーマは「アルメニア料理」の紹介ですから、奥さまの方が主役になりますか。
というわけで、中島夫人によるアルメニア料理の実演が始まりました。

アルメニアは古い歴史をもつ国です。肥沃な盆地で農業が早くから発達したせいもあって、料理も古い歴史をもっています。アルメニア料理の調理技法が手を取るものが多いのも、歴史の古さと食材の多さを示すものかもしれません。

たとえば、アルメニアではよく野菜や果物や肉や魚を詰めものにしたり、巻いたり、編んだり、ピューレ状にしたりします。そのうえに様々な香辛料、辛子、キンザ、ミント、タイム、ういきょう、青物、大蒜などを使います。

   ここで、代表的なアルメニア料理として「トルマ(Tolma)」をご紹介します。

<トルマの作り方>

材料:四人分として,牛豚挽肉400グラム、玉ねぎの微塵切り80グラム、米(半煮えのものも好い)20グラム。

トマト、ピーマン、ナス、キャベツ、それに葡萄の葉。
塩、胡椒、香草(レハン=バジル、パセリ等)。

キャベツは、硬い筋の部分を取り除いて、塩を入れたお湯に5分くらい浸けて軟らかくしておきます。

トマトは、首(?)の部位を切り離さないように、蓋になるように切って、中身は鍋に入れます。

ピーマンも、へたの部位を切り離さないように、横切りにします。中身は不用です。

ナスは、へたを切り取ってしまい、横に切ります。
この際ふくらんだ部位を切り離さないようにします。中身を鍋に入れます。
材料3品を捏ねておいたものを、上記それぞれのなかにニュルッとうまく収めます。
(煮たとき、具が外にでないようにうまく切ってあるはずです)。

キャベツ、葡萄の葉では、それぞれくるむように巻きます。
鍋には、下からキャベツ巻、ナス、ピーマン、トマトの順に重ね置きます。
(葡萄の葉巻きは別に煮ます)。

水を半分くらい入れ、塩、ヴイヨンを振り掛けて煮ます。
(煮るのは50分くらいですが、具の固めたものをひとつ裸で入れておき、煮えたと思われるところで、米がやわらかくなっているかを試るのが一番です)。

また、日本人は、塩の振りかけ方が上品過ぎて、足りない場合が多いのでご注意を!

次が、紙のように薄いパン、これを「ラワシュ」といいます。
「ラワシュ(Lavash)」は、土中に埋めたトニール(Tonir:筒形の粘土の窯)で焼きます。燃料は枯れ枝や乾かして固めた牛糞です。トニールの焼けた壁にパンの生地を貼りつけます。すると焼けると落ちるわけです。

「ラワシュ」は3〜4月分ぐらい焼いて貯えておきます。だいたい秋に焼きますが、乾燥させて、山積みにして保存しておくのです。そうして食べる前に水で濡らして、温かい布をかけると30〜40分ぐらいで柔らかくなります。


<パフラヴァの作り方>

材料:バター400グラム、小麦粉4カップ 上記を粉々にして、「1カップの冷水、コニャック2テープルスプーン、酢同1」に入れて、よく練ります。
6つに分けて丸め、冷凍庫に30分くらい置きます。
その後、丸めたものをそれぞれ四角にひろげて、200グラムのバターあるいはマーガリン6分の1を塗って折り畳み、再度冷凍庫に30分くらい入れます。

ひろげて折り畳む、を2回繰り返します。
オーブンにひろげた後、胡桃、砂糖、シナモンをまぶします。
3枚嵩ね作業の後、菱形に切り込みます。
溶きたての玉子を上に塗ります。
予め170℃にしたオーブンで焼きます。
160〜170℃で35分くらい焼きます。

キツネ色になったら、端のものを切り取って真ん中の生地もベイクドしているかを確かめて、オーケーでしたら、良質の蜂蜜を充分に、主には菱形同士の隙間にかけて、でき上がりです。
(コーヒーはブラックでどうぞ)。

肉の薫製「バストゥルマ(Basturma)」やケーキ「パフラヴァ(Pakhlava)」も召し上がってください。

<バストゥルマの作り方>

軟らかい牛もも肉に塩をまぶして布で巻いてから12時間プレスし、再度12時間プレスし、血を充分に搾り出します。
キュミン、ニンニク、唐辛子などを水で練ったものを塗りつけ、入れ物に入れて4日間放置、再度塗って3日間放置、三度塗ってと計12日間放置します。
それから干して乾かします。格好のおつまみができ上がります。

★今宵、楽しい一時を過ごすことができました♪

私たちは、初めてアルメニア料理を味わってみましたが、気持のよいデリケートな濃さと、ピリッとした味や刺激性があって、われわれ日本人の口にも合うような気がしました。

本日の講義は、7月21日の「一度は行きたい全国の名料亭」に続く<料理シリーズ2>になりました。
当然、そのときの講師・西浦義夫さまの顔もありました。
またの機会に、<料理シリーズ3>を楽しみたいものです。

また、本日の会場は、いつもの神保町教室ではなく、御茶ノ水にあるオーガニックキッチン『うさぎ』で開催されました。
この店の料理は、素材として有機野菜・自然飼育の肉類・天然の魚介類、天然の調味料しか使わないということで知られてますが、今宵のテーマに相応しいお店でした。



日本アルメニア友好協会(Japan Armenia Friendship Association)のホームページ
( URL:http://member.nifty.ne.jp/armenahit/homepage.htm)−「アルメニアへようこそ」("Welcome to Armenia")

をぜひご覧ください。

 

文責:星ひかる
会場写真撮影:橋本 曜
HTML制作・編集:大野令治