神田雑学大学 2001年4月13日 講義録

インターネット時代のエスペラント

講師 青山 徹




目 次

(クリックすれば該当の項へ進みます。
ブラウザの「戻る」ボタンで目次に戻ります。)

はじめに・講師紹介

1.国際語エスペラント

2.インターネットとエスペラントのかかわり

3.エスペラントの歴史

4.エスペラントの紹介

5.ネットで学べるエスペラント

6.エスペラントのふるさとポーランド

7.世界大会に参加して

8.基本的なあいさつなど




はじめに・講師紹介

青山徹さん

本日の講師青山徹さんは、世界共通語として名高いエスペラント(エスペラント語)の実践家です。
学生時代にエスペラントのクラブに入ってから四十年あまりこれに関わり、世界各地での大会にご出席、世界中に同好の知己を持っていらっしゃいます。
現在、
世界エスペラント協会専門委員、日本エスペラント学会会員。

インターネット時代を迎えてエスペラントも、新しい世界を拓きつつあります。
ホームページを呼び出して、楽しく解説して頂きました。将来は英語より、こちらの方が本当の国際語になっていくかも知れませんね。
青山さんのホームページは下記の通りです。

青山さんちの部屋
    

1.国際語エスペラント

エスペラントは、諸民族が平和に、自由にコミュニケーションできるようにとの願いを込めて、1887年に創案された国際語です。
使用者は現在、世界で100万人、日本では1万人といわれます。
特定の国や地域との結び付きがないかわり、世界120カ国以上をカバーする独自のネットワークを持っています。

2.インターネットとエスペラントのかかわり

インターネットで何をやるかというと、ご存知のように電子メール、ホームページ、ファイル転送、ネットニューズなどです。
ではエスペラントの場合、これらの機能をどういうことに使っているのでしょうか。

電子メールはインターネットのおかげで、世界中ひとつのネットになりました。
いままでは海外の人と交流しようとすると、言語の問題がありました。
従来の国際郵便ですと110円か、高いところは130円の切手を貼って、1週間かかるわけですが、電子メールは10円足らずで、地球の反対側のブラジルにでもすぐ届いてしまいます。

いまインターネットのなかで使われている言語は、多分7〜8割は英語だと思いますが、日本や中国の漢字も使われているし、勿論フランス語やドイツ語もあります。
フランス人も英語のアルファベット26文字だけでなく、アクサン記号やcにヒゲの生えた字を使っています。これらもみなコンピュータで処理できるわけです。

エスペラントの場合も、帽子をかぶっているものとか色々あります。タイプライターの時代には、デッドキーを使って打っていました。
パソコンの時代になり、いまはラテン3(Latin3)というフォントが多く使われています。また最近はユニコード(Unicode)が増えてきました。

日本の場合は今年の初め、コンピュータで使うフォントの
JISが再検討されて、外国語の文字が大体入るようになりました。
いま7万9千円くらいでパソコンを買えば、ちゃんとフォントが入っています。ただ、キーボードから入力する場合はショートカットのやり方、つまりCtrかAltキーとの組み合わせの設定を使う必要があります。

ホームページはエスペラント語で書いてあれば、世界中どこででも、エスペラントがわかる人なら読むことができます。
日本語の場合は特殊なMS−IMEを使いますので、外国人には読むことができません。ですからホームページを、普通の人は日本語の部分とエスペラントの部分とを別々に作りますが、私は両方一緒にしています。
他の国の人には日本語の部分は読めませんが、エスペラントが読めればいいわけです。
両言語が分かる人には対訳として利用できます。MS−IMEがないと
このようになります。

逆に日本人が、例えばスラブ文字などを読もうとすると、このように見えるわけです。

FTP(ファイル転送)はソフトウェアのダウンロードや、データのアップロードに使いますが、エスペラントの場合いま非常に役立っているのは、リアルプレーヤー(Real Player) で、ラジオ放送を聞けることです。
いままでは語学の勉強で発音がわからないと、テープが付いた図書を買ったりして苦労しましたが、いまはリアルプレーヤーで世界中の放送が聞けます。
また参考書を買わなくても、人のホームページを使い無料で勉強ができてしまいます。

ネットニューズは、世界的なフォーラムのようなもので、世界中の人が一つの場で討論します。
エスペラントの場合、世界各国語と並んでsoc.culture.esperantoという、公式的な討論の場があります。ここで発言するとメーリングリストのように、みんなに伝わり、返事がきます。とても読みきれないほどです。
つい最近
日本の標準的なエスペラントのメーリングリストを、5〜6人で作りました。

エスペラント人口は世界中で100万と言われていますが、何らかの形で組織化されているのは5〜10万人、日本では1万人のうち3〜4千人程度です。
各都市に代表者、英語のデリゲート(delegate)――エスペラントではデレギートといいます――がいます。その他にいろいろな分野の代表があり、私は銀行部門の「ファカルティ・デリゲート(エスペラントでfakdelegito)」になっています。東京の場合あわせて10数人です。
最近はみんなコンピュータを使うようになり、世界中がネットワーク化されました。

この場で何人かにメールすれば、例えば日本ではあまり記事にされないヨーロッパの洪水の様子なども、知ることができます。

3.エスペラントの歴史

エスペラントを作ったザメンホフ(1859〜1917)は、ユダヤ系ポーランド人でした。
彼はロシア革命の年に亡くなったので墓がありますが、子供達や親戚は第二次大戦時ナチに徹底的に迫害され、殆どの人がトレブリンカなどの強制収容所で死んでいますので墓はありません。

当時ポーランドはロシア領でしたが、ここは地理的に東西文化の交叉点で、いろいろな国の人がいろいろな言葉を話していました。
言葉が違うために諍いが起き、そのために不和になっている状態を見て、みんなが使える国際的な言葉を、と願って作ったのがエスペラントです。

ヨーロッパの言葉は、ギリシャ語→ラテン語→ヨーロッパ各国語と発展したものです。
19世紀にポーランドでザメンホフは、ポーランド語、イーディッシュ語、ロシア語、ドイツ語、フランス語がわかり、その後で英語を勉強しその簡潔性を加味して集約したのがエスペラントでした。

このようにエスペラントは、ヨーロッパ人が作ったヨーロッパ語(インド・ヨーロッパ語族)です。従って英・独・仏などヨーロッパの言葉を、一つでも知っていればエスペラントを容易にに覚えることができます。
トルストイは3時間でできたそうですが、日本人は単語から覚えなければならないので大変です。

トルストイがエスペラントに肩入れしたため、ツアーに睨まれロシアの運動は打撃を受けましたが、シベリアに行った二葉亭四迷によってエスペラントは日本にもたらされました。
日本語による最初のエスペラントの教科書は、二葉亭四迷が書いたものです。

インパク(インターネット博覧会)に友人が「インターネットとエスペラント語」というページを出展しました。 エスペラントは世界の言葉を一つに統一しようとして考案されたものではありません。 言葉の異なる民族との交流のための橋渡し言語で、まさにインターネットでの言葉の壁の解決策としてもふさわしい言語です。

次にこのページに基づき、文法を紹介します。

4.エスペラントの紹介

(1)アルファベット



  これらの文字はラテン3で表示出来ます。
(2)品詞

−o がつくと名詞     amo(アーモ)「愛」
−a がつくと形容詞    ama(アーマ)「愛の」
−asがつくと動詞の現在形 amas(アーマス)「愛してる」
−isがつくと動詞の過去形 amis(アーミス)「愛してた」
−osがつくと動詞の未来形 amos(アーモス)「愛するだろう」

複数は語尾にをつけます。
目的格(対格)にはをつけます。何もつかない英語が言語としては特殊なのです。
動詞は100%規則動詞です。
このように規則が明確なので、語順は割合に自由です。

(3)発音・読み
ローマ字読みです。母音は日本語と同じく5つで、日本人に向いています。
一番駄目なのがフランス人です(フランス語の母音は12ばかりあります)。
LとRは峻別されます。これだけ区別できれば日本人の発音は満点です。
"J"はドイツ語と同じようにヤ行に相当します。例えば "jes"は"イエス"と発音します(意味は英語の"yes"と同じ)。

一つの文字に対する読み方は一つだけです(文字自体が発音記号と言えます)。また一つの音に対する文字は一つです。
スペルを見れば発音ができ、発音を聞けばスペルがわかります。
1つの文字で2種の発音がある時は帽子で区別しています。

G グ(good) ジェ(register) 後者に帽子をかぶせる(上のアルファベット参照)
C ツ チェ   〃
J ユ ジュ 〃

chiはヘボン式ではチと読みます。フランス語ではシ、ドイツ語ではヒ、イタリア語ではキとなります。このように国際的にはヘボン式は通用し難く、エスペランチストは日本式を使う人が多く、チはtiと書きます。一般にティと読まれますが、日本語ではチと発音すると説明すればよいわけです。

アクセントは後ろから2番目の音節にあります。
接頭辞、接尾辞も規則的なので、うまく使うと少ない単語でも多くのことを表現できます。

(4)単語
語源は主にヨーロッパの言語から採られているため、連想できるものが多いです。

・英語から連想できる例
エスペラント語    英語         日本語
    sistemo      system       システム
    adreso       address      住所
    rivero       river        川

・英語からは意味が想像できないが他の外国語から連想できる例
エスペラント語    似ている外国語                                  日本語
    mondo         mondo (イタリア語)
                  mundo (スペイン語、ポルトガル語)
                  monde (フランス語)                                世界
    mano          mano (イタリア語、スペイン語)
                  main (フランス語)                                 手
    libro         libro (イタリア語、スペイン語、ポルトガル語)
                  libre (フランス語)                                本
    oro           oro (イタリア語、スペイン語
                  ouro (ポルトガル語)
                  or (フランス語)                                    金
    c^ielo        cielo (イタリア語、スペイン語)
                  ciel (フランス語)                                  空
    hundo         Hund (ドイツ語)
                  hund(スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語)   犬
    knabo         Knabe(ドイツ語)                                   少年
    amiko         amico (イタリア語)
                  amigo (スペイン語、ポルトガル語)                  友達


このようなエスペラントは、あまりに人工的で面白くないという考えもあります。
しかし、例えばフィンランド語もいわば人工語で、アクセントは一番前にあります。ポーランド語は後ろから2番目で、規則的な言語は他にも結構あるのです。

エスペラントは、欧米人も一から勉強しているので、日本人が訥々と話しても馬鹿にせずよく聞いてくれます。
最近「言語権」(マイナーな言語であっても言語として平等な権利がある)が主張されてきました。評論家の佐高信さんも国際語として、英語ではなくエスペラント語を支持している人です。

5.ネットで学べるエスペラント

先にも触れましたが、最近はネット上でエスペラントが(無料で)学べるページも多い。
例えば「ネットワーカーに贈るエスペラント語入門」は、0課から34課まであり、これで文法はほぼ完全です。
英語の先生が開いている「英語から入るエスペラント」というホームページもあります。
英語の教育を通して、なぜ英語なのだろうと疑問を持つ先生も多いようです。

FTPでダウンロードし、Real Playerで再生します。
これは誰の声だと思いますか・・・・ローマ法王です。
法王は四十数ヶ国語で祝福を与えますが、その一つがエスペラントです。すごく上手でわかりやすいです。

日本で聞けるエスペラントの短波放送は、中国国際放送(北京)だけです。中国は国際語としての英語に対してわだかまりがあり、エスペラントに国が力を入れています。
こちらは中国語なまりがありますが、イタリア語とスペイン語は、エスペラントによく似ています。

エスペランチストはイタリア旅行が簡単です。エスペラントで買い物をしたりすると、どこの田舎から出てきたのかと訊かれるそうです。

6.エスペラントのふるさとポーランド

ポーランドはザメンホフの生まれ故郷であり、昔の東ヨーロッパだったので、エスペラントが盛んな国です。
1989年頃に社会主義体制が崩壊し、ポーランド経済のハードな時期がありましたが、1995年デノミ実施で蘇りました。昨年ツアーで行きましたが、物価が安く我々が行くには非常にいい国です。

ワルシャワの街はナチに完全に破壊されましたが、このあたりは写真をもとにヒビ一つまで復元したと言われるところです。

ワルシャワ市内にザメンホフ通りがあります。角のところに「ここはザメンホフが住んでいた家です」という標識がありました。
それから巡礼みたいですが、ザメンホフの墓を訪ねました。ユダヤ人墓地がワルシャワの町外れにあり、ザメンホフはじめ奥さん、両親などいくつかの墓があります。

これはおわかりでしょうか。コルチャック先生の像です。
子供達と一緒にガス室に入りました。墓は同じユダヤ人墓地にあります。

ショパンの生家はこれです。これがショパンが住んでいた家ですね。
ポーランドの自慢は、二人ならショパンとコペルニクス、三人ならそれにザメンホフというところでしょうか。

これを見て頂きたいのですが、アウシュビッツです。彼女たちが纏っているのはイスラエルの紋章を描いたものです。
イスラエルは聖地として昔ユダヤ人が虐待にあった地に、学童・生徒を修学旅行に出すのです。歴史を忘れないように躾をしているのですね。わざわざ民族衣装を着ているのです。

7.世界大会に出席して

エスペラントの国際的普及を目指し、少人数でも各国・各種部門に浸透させる目的で、毎年世界大会が開かれています。
1999年 ベルリン
全部で4000人、日本からも百数十人参加しましたが、同時通訳不要です。あちこち行ってみたいので、ツアー(ロマンチック街道など)を含めて2週間かかります。現役時代には夢でしたが、退職を機に二人で参加しました。
2000年 テルアビブ
イスラエルだけでなく、ヨルダンへも行くという通常では考えられないルートでした。7月でしたので皆無事帰りましたが、9月に紛争が勃発しました。
2001年 ザグレブ(クロアチア)、2002年 ブラジルのフォルタレザ、2003年スウェーデンのイェテボリの予定。

日本国内でも毎年各地でデモンストレーション(大会)を行っています。
望月町(長野県、1999) 熊本(2000) 宝塚(今年)などです。日本在住の外国人エスペランチストも十数人参加しますので、ここで使われる言葉は日本語、エスペラント半々です。
開催の時期は、世界大会が夏、国内は秋となってきました。

宮沢賢治がエスペランチストだったことはよく知られています。彼も二葉亭四迷と同じように、エスペラントで世界に羽ばたこうとして詩を書いたりしました。
石巻あたりは宮沢賢治のふるさと、賢治といえばエスペラントで、JR釜石線の全駅にエスペラント語の愛称がついています。
賢治は岩手をイーハトーボと名付けましたが、これはイハテをエスペラント風にしたものです。

8.基本的なあいさつなど

最後に、また先ほどのインパクのページから、エスペラントの基本的あいさつのご紹介をして、終わりたいと思います。(拍手)

あいさつ

日本語 エスペラント語 英語
おはよう Bonan matenon !
ボーナン マテーノン
Good morning !
こんにちは Bonan tagon !
ボーナン ターゴン
Good afternoon !
こんばんは Bonan vesperon !
ボーナン ヴェスペーロン
Good evening !
おやすみ Bonan nokton !
ボーナン ノクトン
Good night !
さようなら G^is revido !
ジス レヴィード
Good bye !
ありがとう Dankon !
ダンコン
Thank you !
どういたしまして Ne dankinde !
ネ ダンキンデ
Not at all
いらっしゃい Bonvenon !
ボンヴェーノン
Welcome !
お元気ですか? Kiel vi fartas ?
キーエル ヴィ ファイルタス
How are you ?
元気です Mi fartas bone
ミ ファルタス ボーネ
I am fine.
はい Jes
イエス
Yes
いいえ Ne
No
どうぞ Bonvole
ボンヴォーレ
Please
すみません Pardonon
パルドーノン
Excuse me.
お名前は Kio estas via nomo?
キオ エスタス ヴィア ノーモ
What is your name ?
私の名前は ...です Mia nomo estas ...
ミア ノーモ エスタス
My name is ....
日本語が話せますか C^u vi povas paroli japanan lingvon?
チュ ヴィ パローラス ヤパーナン リングボン
Can you speak Japanese?
日本語が話せません Mi ne povas paroli japanan lingvon.
ミ ネ ポーヴァス パローリ ヤパーナン リングヴォン
I cannnot speak Japanese
もう一度言ってください Pardonon,ankouraufoje, mi petas
パルドーノン アンコウラウフォーエ ミ ペータス
I beg your pardon.
もっとゆっくり言ってください Bonvole parolu pli malrapide.
ボンヴォーレ パロール プリ マルラピーデ
Please speak more slowly
ちょっと待ってください Atendu momenton
アテンドゥ モメントン
Just a moment, please

(その他)

Saluton ! (サルートン)

「やあ!」 時間に関係なく使えるあいさつ言葉です。
saluto (挨拶という意味)の対格で「挨拶を」という意味です。

G^is reau~do (ジス レアウド)

表にある「さようなら」の G^is revido のG^is は「〜まで」 revidoは「再会」という意味です
(re=再び,vido= vidi 見る、会うの名詞形)

ラジオのエスペラント放送を聞くと終了時には G^is reau~do と言っています。
reau~do(re=再び、au~di =聞く の名詞形)。従って直訳すると「再聴取まで」という意味になります。


おわり

文責:大野令治

会場写真撮影:橋本 曜
HTML制作・編集:大野令治