神田雑学大学 2月8日講義 

当世百物語(第ニ夜)


講師:森谷幸男 廣川文子 鈴木 一郎



 

目次

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講師紹介
口上(森谷)
羽織の怪(森谷)
幽霊滝の伝説(廣川)
小夜(森谷)
ブライトン街道にて(鈴木)
開いている窓(廣川)
人造人間と西行(森谷)
牛の首(廣川)
映像
青柳(鈴木)
たんぽぽ娘(廣川)
阿古耶の松(森谷)
裏庭(鈴木)
桜(廣川)
死神(鈴木)



講師紹介

森谷幸男さんは、パソコン通信の世界では、物知り博士の鳥越九 郎さんとして知られた方。特に古今の怪談奇談のコレクター。 廣川文子さんは、主婦、事業家、そして朗読者でもある

多彩な活動を展開され ている方。鈴木一郎さんは、本神田雑学大学の副理事長兼綜合プロデューサー 、特に最近は怪談等の話芸の世界にはまっています。 このメンバーは昨年初演で好評を得た「百物語」に再度挑戦致します。

内容:今回は千代田区ボランティアセンターの二部屋をぶち抜いた会場で、 結界をつくり、蝋燭を灯し、香を焚いて演じました。

講師の森谷幸男さん ・口上(森谷)


その昔から、森羅万象の宿る不思議な命と現象を冬の夜話で、いろりを囲ん で聞いたものです。村の寄り合いめいたこの

雑学大学での物語も都市での伝承 として、意義あるものでしょう。続いて、「百物語異聞」ーー 「江戸末期、薬王寺本堂で若い者が百物語を催した。話が八十六まできたとこ ろで、和助が鹿野の屋敷の娘の話に変えたところ、若い者だけにあちこちの

娘の品定めになってしまった。その夜、家に戻った和助を待っていた化け物た ち、出番を待っていたのに一向にならず、風邪を引いてしまったと、和助から 薬代をせしめたということである。

・羽織の怪(森谷)

安永年中(1770年頃)平将門の末裔、神田織部が同輩と意気投合し、赤城明 神に参詣し、茶屋で遊んだ。佐野五右衛門という同輩は、藤原秀郷の末裔。 これは、平将門を攻め殺した一族であった。五右衛門は知らずに、平将門一族 の紋、繋ぎ馬の紋付きの羽織を借り、  

宴に興じていた。そのうち、五右衛門の ようすがおかしくなり、その場に昏倒してしまったので、屋敷に送り届けた。 と、夢のなかを漂うようであったが、借りた羽織を脱ぐと、とたんに治った。 敵の家紋の着いた羽織を着たので、千年前の祖先の霊の咎めを受けたためで あった 。

講師の廣川文子さん・幽霊滝の伝説(廣川)

出雲の国である夜、勇敢な女房が子供を背負って、幽霊滝の賽銭箱を取って くる賭けに挑戦した。滝本で不思議な声に呼ばれた彼女、気丈にも飛ぶように 雨中を出発した小屋まで取って返した。皆の賞賛と驚愕の中、親切な婆が、 背中の子を降ろしてやろうとすると、背中がぐっしょりと、、、、。

・小夜(森谷)

青森県三戸の田中館という旧家の美しい娘小夜は山畠に桑の葉を摘みに行っ たまま帰らなかった。五、六十年も経った頃、一人の老婆が家の門をくぐっ た。彼女は山のものに見初められたお小夜だと名乗った。 何代ものちの子孫たちは昔聞いた話を思い出して、彼女をもてなした。 そして三晩泊まり、また来年来るといって帰っていった。

その後も、小夜婆は秋の末の 大嵐の頃に必ず山の土産を持ち、やってきて三晩泊まっては帰った。 ある吹雪の夜、雪をかぶった小夜婆が訪ね、これから出羽にいくのでと、別れ を告げた。それっきり小夜婆の消息は判らなかった。 

・ブライトン街道にて(鈴木)

講師の鈴木一郎さん イギリスのマイナーな怪談作家リチャード・バラム・ミドルトンの不思議な雰囲気の 話。舞台は、ロンドン南方の海岸にある風光明媚な行楽地ブライトンからロンドンに通ず る街道での話である。 「真っ白な雪で覆われた丘から太陽がゆっくりと昇って来ました。

頭の上では、空が橙色 から濃い藍色になり、さらに淡い水色に変わり、果てしなく広がる空と言うより、まるで 薄い一枚の紙のようです。陽射しは次第に暑くなり、それを吹き消すような冷たい風が交 じり合いました。道端で野宿した旅人が歩きだすうちに、不思議な少年に会います。」 同行二人というお遍路の心境にも似た奇妙な味。 

・開いている窓(廣川)

同じく有名なイギリスの短編作家サキの作品。「ルバイヤート」の酌女をペンネーム にする植民地経験ある作者、同じイギリスのキプリングにも似た作風の奇妙な味を醸し 出します。軽井沢みたいな避暑地にやってきた心臓病患者のF氏が訪れた家で、若い娘 の歓待のおしゃべりから、ホントに心臓に悪い結果となります。 (廣川さんの迫真のナレーションをお楽しみ下さい。) 

・人造人間と西行(森谷)

なにもロボット製造は西洋の専売特許ではありません。本邦でも、あの歌人西行は、 修行の結果、人間を合成しますが、上には上があって、、。  

頭は牛の首の女 ・牛の首(廣川)

当代の奇想作家、小松左京が多分実話に纏わる話を材にとったであろうコワ〜〜イ 話。最後までその正体は明かされませんが、その恐怖は確実に伝わることと思います。

ー休憩ー

朗読する名取裕子 ・映像

「NHK朗読シリーズの内、浮雲(林芙美子作)、演:名取裕子)

これより、植物怪談5編の特集です。

・青柳(鈴木)

今から530年前、ひとりの若い侍が越前で雪に難渋するうち、とある柳の並ぶ丘で 一軒の小屋に泊まった。そこの絶世の美女を妻に所望した侍は、楽しい新婚の日々の後 哀しくも不思議な体験をすることになる。

・たんぽぽ娘(廣川)

爽やかなニュータウンを見下ろす丘で、44歳の弁護士は、未来から来た不思議な少 女ーエドナ・ヴィンセント・ミレィの詩のヒロインのようなーに出会います。 二人は何時しか恋に落ちていました。 「一昨日は兎をみたわ。昨日は鹿。そして、今日はあなた。」 砂糖菓子のようなロマンスに終わるかに見える話は、現実の彼の生活に異変を起こしま す。 

・阿古耶の松(森谷)

山形市に残る一本の松をめぐる物語。都育ちの娘が出会った美しい若者との奇しき縁 の哀話です。  

・裏庭(鈴木)

アメリカ東海岸の田舎町である古本屋がとりつかれる裏庭の話。 それは、過去のある怨念が今も人々を異常な世界へと誘い込みます。

桜の木と侍 ・桜(廣川)

暖かな春の宵、若い侍が桜の樹の下で出会った不思議な女を自分の住まいに泊めまし た。朝眼を覚ました侍は、女の枕元にいってみると、、、、、。
最後に、柳家小三治が演ずる落語から、

・死神(鈴木)

落語には落(さげ)が付き物ですが、この落語の落はユニークです。原作はスペイン のある物語からといいますから、矢張り日本離れしているのも無理ありません。蝋燭が 人間の寿命を示すというのは、東西世界で共通なんでしょうか? 日本では

霊をれい、りょう、ろうと発音しますので、蝋は魂の火に通ずるかも!? この「百物語」、燭台に蝋燭を灯して演ずるので、更に存在感が出てまいります。 うまく消えましたらご喝采の程を、、、。   


文責:鈴木一郎
会場写真撮影:橋本 曜
HTML製作:和田 節子