神田雑学大学平成14年3月29日講義録

「IT時代の葬送」

二村尤祐輔(ふたむらゆうすけ)さん

講師の紹介

1953年生まれ。明治大学中退。 23歳から約18年間葬儀社勤務。その後、葬儀コンサルタントとして独立。 マスコミでその活動が多く取り上げられ、講演活動のほか葬祭関係のオピニオンリーダーとして、消費者の立場から葬祭業界全般の是正、改革を目指す。

特に葬儀式場の新規建設コンサルティングでは、地域貢献できる施設作りや、地元住民の意向を反映した開設で、全国に優良な葬祭企業を育成支援している。 著書に「大往生の値段」(近代文藝社)、各種週刊誌・月刊誌など執筆多数。テレビでは日本テレビ、テレビ朝日など葬祭関連の専属コメンテーターとして活動。 公職:日本葬祭文化学会 事務局長 現職:有限会社セピア 代表取締役。株式会社 日本葬祭アカデミー取締役。

現代葬送事情の概略

葬儀に関する素朴な疑問をお持ちの方は多いと思うのですが、改まってそれに応えるような機会(セミナーなど)はなかなかありません。 区の施設のような公の場所では講演の題を聞いただけで断わられてしまいます。 今日は神田雑学大学でこのような機会を設けていただきましてざっくばらんなお話をしたいと思います。私はもともと、この神田界隈で葬儀社に18年間ほど勤めていました。

葬祭コンサルタントとして独立したきっかけは、それまでの経験をまとめて「大往生の値段」という本を書いたことがきっかけでした。それまでベールに包まれていた葬儀の実態を値段も含めて公にしてしまったので社長に怒られたのがきっかけです。業界からも余計なことをするなと非難されました。

葬儀は価格の内訳を説明せずに一括していくらという交渉が普通でしたから依頼者は、なにか吹っかけられたような疑問をもちながら割り切れない気持ちで葬儀料を払っていました。最初、本は殆ど売れず全国に6,000社ほどある葬儀社のうち1,000社ほどにダイレクトメールも出してみましたが反応はさっぱりでした。  

しかし町内会の婦人部あたりから話しを聞きたいという要望があり、何ヶ所かで話しをするうちに皆さんが葬儀料の内訳に強い疑問を持ち、これを安くするにはどうしたらよいかという希望が非常に強いことがわかってきました。本のほうも少しずつ売れ出していまでは第5版を重ねるようになりました。

現在、東京都の平均で葬儀料は平均381万円かかっています。これにお墓の費用が350万円ほどかかりますから全部で700万円以上の費用がいることになります。そして、この381万円の内訳は殆ど知らされないまま不承不承払わされているのが実情です。

最近、葬儀のやり方に二つの流れが出始めています。一つは、馬鹿馬鹿しいから葬儀はやらないという動き。一つは個性的な葬儀を望む動きです。最近、葬儀社の予定に「火」のみというのを見かけることがあります。これはどうせ葬儀をやるのなら火葬だけ行って、あとはホテルのお別れ会にするとか、無宗教の音楽葬にするとか、海に散骨するといったやり方です。

葬儀とは何か?

ところで葬儀とはいったいなにかと問われると殆どのひとは答えられません。 一度葬儀社の社長さんが集まっている会で聞いたことがありますが皆さんびっくりして誰も明確な返事ができませんでした。 ひとが死んだら葬儀をするのがあたりまえということで、ただ習慣にしたがってわけの分からない高額な費用を払わされている、というのが殆どの人の認識です。

ここで死というものを改めて考えてみます。表面的な現象では脳が機能しなくなった、心臓が止まった、あとは死体という物体だけであるという見方もあります。しかし殆どの人は背後に宗教的な深い深層心理を持っています。それは死後の魂はどうなるのかということです。葬儀は1万1千年前、つまり縄文時代から行なわれています。昔の人は死というものをどうとらえていたのでしょうか。

人が死んで死体となると同時に魂が抜け出すと考えていました。それを確認するためモガリ(見届けの期間)を行ったのです。そして魂が抜け出した空間に再び魂が戻ってこないように、また別の悪い魂が入りこまないようにいろいろな手段を講じました。

例えば口、鼻、耳などに栓をするとか、顔に白い布を覆って封印するとか、刀をおいたりする風習がいまでも残っています。 葬儀に際してお棺に入れて釘を打って、埋ても上に重しとして石を載せたのが今の墓石の始まりだといわれています。


ところで死体から抜け出た魂がフラフラと迷わないように葬ってあげるのが葬儀です。葬の語源はハフルから来ていますが上の草かんむりのように草の下に収まると考えていました。 

草葉の陰という言葉もありますし藪医者というのは魂が藪に入る、即ち病気を治せない医者をいうのもここからきています。昔の人は、あの世はすべて現世の反対だと考えていました。死体に着せる着物を左前にしたり足袋を左右逆にはかせたりするのもこの考え方です。

葬儀にかんする行事も以前はすべて夜行われていました。昭和2年に東京都で公営の火葬場ができた祭従業員を夜だけ働かせるのもおかしいというので葬式も昼に行われるようになったのです。葬儀に関するしきたりは基本的に出産のしきたりと同じです。即ち生まれた子に名前をつける命名と死者に戒名をつけるのと同じです。一年目の誕生日が一周忌、七五三が三周忌、五周期、七周期と対応しています。子供は33歳で一応社会人として認められるのに対して死者は33周忌で一応けりをつけるわけです。

最後に葬儀にかかる費用について

お話しで381万円の費用がかかっています。これが内容が不明瞭だ、馬鹿ばかしいと考えている人が増えてきています。葬儀の費用は大きくわけて
(1)葬儀社の費用  (2)お布施  (3)接待  (4)返礼  からなりたっています。

まず葬儀社ですが普通病院の霊安室には葬儀社がつめていて一切をとりしきってくれるのが普通です。遺族は気が動転しているのでつい葬儀社のいいなりになってしまうのですが 最初に方針をはっきり話して交渉することが大切です。 病院で亡くなった場合は、ひとまず遺体を自宅に持ち帰ってワンクッション置いたほうが冷静に手順を考えることができます。

移送も葬儀社が連絡してくれる寝台車を使う必要はなく自家用車でもできます。寝台車も火葬の費用も以前は上等、中等の二種類だけでしたがバブルの時代に段々豪華になり最上等、特別賓館などというのも出てきましたが焼き方に違いがあるわけでもありません。前例とか親戚、近所の手前もあるかもしれませんが見栄をはって最上等をたのんだりしますと祭壇、お布施、接待などそれ相応に立派なものにどんどんエスカレートしてチップなどの額もあがってきます。

最近は本やインターネットで葬儀にかんする情報、費用がかなり具体的にわかるようになってきました。葬儀社のいいなりになって請求書をみてびっくりすることのないよう最初から納得できる葬儀を計画して交渉することが大切かと思います。
  
(完)

二村尤祐輔さんの著書



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文 責  得猪外明
会場撮影 橋本 曜
HTML制作 上野治子