神田雑学大学 5月10日 講義



少年犯罪の初動原因について


講師:二村 元夫(慈しみ育児研究所)



目次

(クリックすると該当の項に飛びます
ブラウザの戻るで目次に戻ります。)

講師紹介

粉ミルク年間生産高

粉ミルク普及の経過

母子分離や粉ミルク育児がどうして・・・

乳児期のスキンシップの大切さ


二村元夫講師 講師紹介

二村さんは元ソニーマンです。昭和40年代にソニーの井深大会長が幼児の育て方を 研究する財団を設立され、その仕事にずっと携わってこられました。当時そのようなことを 研究する機関は日本になく全く手探りからの出発でした。

いろいろ調べるうちに粉ミルクで育った子供は情緒的になにか問題がありそうだという気がしてきました。

最近の少年犯罪の増加が問題になっていますが、原因は複合的なものであり、 いくつもの原因が積み重なって起きていることは言うまでもありませんが、少年犯罪の根本的、 初動 の原因が、乳児期にあるのではないかとの仮説を統計的に明らかにできないかと考えました。


粉ミルク年間生産高出生1人当たり 少年犯罪検挙者数(14年後)


年 次 生産量 年 次   実 数 人口比
1956     7.0kg     1970     37,804     11.5    
1957 8.8 1971 38,979 12.5
1958 8.3 1972 38,585 12.3
1959 11.4 1973 44,444 13.9
1960 13.5 1974 47,930 14.9
1961 16.4 1975 48,481 15.3
1962 20.9 1976 48,484 15.4
1963 22.6 1977 51,578 16.0
1964 21.4 1978 60,325 18.2
1965 26.8 1979 66,258 19.1
1966 36.4 1980 80,241 24.8
1967 27.0 1981 94,169 28.5
1968 28.3 1982 103,756 28.0
1969 31.4 1983 110,433 29.5
1970 31.6 1984 193,451 27.1
1971 32.5 1985 103,729 26.5
1972 42.5 1986 97,126 24.1
1973 44.4 1987 92,788 22・6
1974 40.1 1988 96,019 23.4
1975 38.6 1989 83,572 21.1

1.
出生一人当たり粉ミルク年間生産高:農水省の「牛乳乳製品統計」による調整粉乳」の生産高をその年の「出生数」により除したもの。


2.
少年犯罪の検挙者数:「犯罪白書」の「交通業過を除く少年刑法犯の年齢層検挙人員及び人口比」から「年少少年」の数値による。人口比は、同年齢1000人当たりの数値である

3.
この間、施設分娩は1955年の17.6%から1989年には99.9%に増加している。この表から分かるように分娩場所が自宅から産科施設

に移行するにつれて粉ミルクの生産高が殆ど一本調子に伸びている。1974年
WHO母乳育児推進決議、75年厚生省母  乳推進政策で、粉ミルク生産高が初の減少傾向を示す。

この粉ミルクの普及の結果、母親の育児態度に大きな変質が生まれ、その結果、14年後の少年犯罪の数の増加をもたらしたことが読み取れる。

84年以降は、文部省はじめ、学校やPTA、警察などによって、事前に社会的な対策が執られるようになり、少年犯罪検挙者の「実数」も「人口比」も減少した。

少年犯罪と粉ミルク育児の相関関係にかんする研究資料の説明として

粉ミルク普及の経過

1.
設分娩が主流になっていくにつれて、新生児室への赤ちゃんの集中管理が進み、母子が分離 された。

2.
新生児に対する夜間の哺乳は、看護婦らの手によって、粉ミルクを哺乳することが多かった

3.
産院において、粉ミルクの調乳の仕方についての指導が行われ、乳業会社から無料でサンプ ルが手渡された。

罪人にしない子育ての本 4.
在院中、母乳授乳や赤ちゃんとの接し方に習熟するには、母子分離があったりして不十分で あった。

5.
自宅への退院後、退院時に手渡された粉ミルクが手元にあり、つい、粉ミルク育児に走った 。また、粉ミルクは、質において母乳と同等で、便利さにおいて勝っていると考える母親が多かった。

母子分離や粉ミルク育児が、どうして、少年たちが罪を犯すことに結びつくのか?

1.
母子分離によって、新生児は、寂しさを味わい非常な不安に陥り、ストレスを受けた

2.
在院中、夜間の粉ミルク育児によって、ストレスはさらに強められた。

3.
粉ミルク育児によって、母親の体内に母性ホルモン(催乳ホルモンのプロラクチン、
   オキシトシン)の放出がなされなくなり、母親の母性が発現しにくくなった。

4.
母性ホルモンの放出がないため、内側思索前野にあると言われる母性のスイッチが入らな  い(香川医科大学西鐘寿教授)

5.
母親は、母性の発現がないため、本能的母性ではなく理性的母性によって育児することとな った。

6.
これによって、育児は「母親としての喜び」ではなく、母親としての義務的作業へ変質する ことがあった。義務的な作業となるため、「育児が苦痛である」と感ずるようになった。

7.
粉ミルク育児の問題点を列挙すると、次のような問題があり、赤ちゃんのストレスになって いた。

(1)母乳の哺乳に比して、粉ミルクの哺乳は、調乳の時間もあって、待たされ易いこと。

(2)事務的・機械的な哺乳がなされやすく、ときに、独り飲みで放置されることがあること。

(3)肌と肌の接触が少なくなり、母子間の距離が開くこと。

8.
こうして、母子のコミュニーションの機会が減少し、子のコミュニケーション能力の成育が 不全となった。

二村元夫講師
9.
赤ちゃんは、ストレスによって、脳内神経伝達物質であるセロトニンの量的レベルを低下さ せた。

10.
セロトニンの量的レベルの低下によって、自制心の働きを弱めて育つこととなった。
(アメリカ国立衛生研究所ジェームス・D・ヒグリー博士)(モントリオールのマッギル大学の学生たちの電撃ゲームの実験)「育児室からの亡霊」(毎日新聞社刊・ロビン・カー・モース、メレディス・S・ワイリー著、浅野 富三・庄司修司他監訳)

11.
自制心が弱く、コミュ二ケーション能力の成育不全の状態で、両親の離婚、不和、身勝手、過剰な干渉、人格の否定、虐待、養育放棄、いじめ被害、先生・友人に恵まれないなどの複数の原因が積み重なって、自制心の限界を超えたとき、キレて罪を犯すこととなった。

乳児期のスキンシップの大切さ

赤ちゃんのときの母親とのスキンシップの大切さについて一つのエピソードをご紹介したいと思います。テレビなどでご覧になった方もあると思いますが山口県の幼稚園に遊びに来ていたペリカンのカッタ君の話です。

カッタ君は卵の時に洪水で巣が流され、その後人工孵化でひなとなりました。公園の飼育係の方にも、日本ではじめてのことで飼育の方法が分からず手探りで魚のすり身などを与えてやっと成鳥に育ちました。

羽を切らなかったためにカッタ君は自由に空を飛びまわり、やがて幼稚園に遊びに行くようになって話題になりました。このカッタ君が配偶者を見つけメスは卵をうみましたがなかなかうまくいかず5年目ぐらいになってやっと雛がうまれました。

二村元夫講師 ペリカンは夫婦交代でえさを採りにいって子供をそだてますが不思議なことがおこりました。

母親が取ってきた魚は雛が喜んで食べるのですがカッタ君がとってきた餌は雛が受けつけないのです。やがて雛はえさが不足し2羽のうち1羽が死んでしまいました。


この話しを飼育係の人から聞いて私はハッと思い当たることがありました。メスは取ってきた魚を

一旦呑み込んで半消化状態になったものを吐き出してひなにたべさせていたのです。人工飼育で育ったカッタ君は、自分が雛のとき飼育係りから与えられたえさの固さ加減を忠実に守 っていたのです。

カッタ君が雛のとき食べたのは、魚の肉をミンチにし消化酵素をまぶして湯通した雛の口に合わせた大きさの団子でした。湯通しされていたので、生の魚のと同じ固さであり、カッタ君は、取ってきた魚をそのまま雛にたべさせようとしたのです。

赤ちゃんを育てようという人は病院をよく調べてから行かれるようお勧めします。出産後は24時間後とか48時間後からの母子同室ではなく、出産直後からの母子同室がお願いでき、母乳育児を応援していただける産院を選びたいものです。(完)

                           



文責:得猪 外明
会場写真撮影:橋本 曜
HTML製作:和田 節子