神田雑学大学2002年2月8日

#126 「総合的学習とシニアの役割ーパネル・ディスカッションー」


今回は、わが雑学大学が積極的に取り組んでいる「総合的学習」への支援について、初めて公の場で行政、学校、地域といった各立場の方々と意見を交換する催しです。

・講師の紹介
コーディネーター:日本女子大学教育学教授 田中 雅文先生
パネリスト   :千代田区教育委員     坂  光司先生
         :千代田区立昌平小学校   新井  滋先生
         :NPO神田雑学大学理事長 三上 卓治さん
事例紹介者:神田雑学大学会員 佐藤 秀一さん
23区南生活クラブ生活協同組合 吉田由美子さん

・パネル・ディスカッションの概要
田中:雑学大学ではいち早く学校問題に取り組まれ、既に具体的な支援のご活 動を実施されています。今回はその成果も踏まえ、行政、学校、地域といった 各立場の方々との初めての意見交換を行われるということです。 本年からこの総合的学習に取り組まれ、苦労されている学校としても、お集まり の各立場の方々とこの問題について意見交換することは意義深いものがあるので はないかと思います。

まず、パネラーの方々から15分ずつ・・・・。
坂:制度的な面から、世の中では、総合的な学習では、何でもやれるという見方がありますが、学習指導要領によると、「生徒が自ら考え、調べ、理解する」ことを身につけさせる態度形成を目指すことが主たる眼目になっています。

これは、従来の日本の教育が遅れている新しい発見、理解、修得など課題意識や解決能> 力を、先生がコーディネーター、パイロットとして指導するものです。とかく総合的学習というと、例えばカレーライスを作ればよいように「活動あって学びなし」といった> 批判を受ける通り、学習のねらいや系統性が明確でないことになりがちであります。 外部講師には、その趣旨をご理解の上、ご支援頂きたい。特に土日の活動や学習のきっ> かけづくりにお力を貸して頂きたい。

また、中学校で進路学習、職業体験を重要なテーマとしており、この面で指導や受入先としてご支援願いたい。

最後に、「総合的、横断的学習」として、これまで従来各科で区分されたものを 横断的な学習内容へ掬い上げることを目指したいと思っています。

新井:小学校の立場から、昌平小学校の特色をまずお話致しましょう。
6年前に童夢館を設立し、全国から先駆的な施設として見学が絶えません。 私は見学者にその設立の目的、背景を理解してお帰り願いたいと思っています。 それは、本地域では「学校がふるさと」、つまり地域と学校が密着し、地域のこころが 学校を向いているという背景であります。
童夢館の運営は地域の委員会が進め、地域のサークル団体が自主的に企画運営 して、学校は先生と生徒共々これに参加します。
「学校の恥は地域の恥」、学校がうまくゆかないのは、地域の力が足りないと言うことで、祭りや行事で殆どの土日は施設が活用され、自然先生方も職業と 役割よりボランティアとして参加していて、この両立はたいへんです。
「総合的学習」の実態は、まだ始まったばかりで、まだまだ検討の余地があります。

これが正しい方針と言うものが、実践を積むことによって確立してゆくことと考えます。現在、遠方の学校との交流といった宿泊行事、神田明神の和太鼓の稽古、童夢館の各行事への参加交流などから実施しています。まずは、年間105時間を計画することが当面の課題となっています。最後に、地域の綜合学習のご支援で、有り難いことに人選、企画を地域が一枚岩で対応してくれることです。

三上:(事例1)孫の学ぶ学芸大学小金井小学校から、「世代間交流」の依頼がありま した。講堂に何人かのお年寄りが緊張した表情で集まっていました。生徒が各々のテーマで分かれ、お年寄りの子供時代の遊びや生活の話を聴きま した。終わってみると、お年寄り方は生徒以上に元気になっていました。 この成功の話を聞いて、武蔵野第五小学校から、講話の依頼がありました。 私は前回の反省から、なるべくヴィジュアルにこんな話を致しました。

(OHPでその三上さんの実際の話を聞く)
・1930年生まれたばかりの三上さん ・小学生時代の三上さん
・生まれ育った家と庭 ・岩木山と桜、桃、リンゴ
・夏は「ねぶた祭り」 ・秋は「遠足」お弁当はおにぎり
・冬は「スキー、凧挙げ」
特に、遠足のおにぎりから、母親の早朝の準備風景、母の思い出が感動的でした。こういう話を三上さんは自分の子供たちには、産業戦士で働いていた時代に話していなかったことに気がつき、その代わりの全国の子どもたちに語り継 ぐことを決意しました。

事例2)神田雑学大学「竹とんぼプロジェクトの活動」紹介(佐藤さん
「総合的学習」といっても、初めから真っさらな状態から、構築するのは難しい。そこで我々は、そのプランづくりを提案します。 例えば、三上さんの講話を聞いた生徒に、
(1)お母さんの味は何か?(宿題で考えてこさせます)
(2)生徒が次の世代の子供に何を残したいか?(各自纏めます)
順次、生徒の関心の進む方向でテーマを導いてゆきます。
例えば、(1)から、食糧自給や、環境汚染の話題に。
(2)から、生徒のなりたい職業、どういう社会にしたいと思うか等の話題に展開します。神田雑学大学は、このように企画からきっ かけづくり、そして具体的な指導などで多くのテーマで支援の用意 があります。

(事例3)23区南生活クラブ生活協同組合の「食の安全、環境保全等のの支援活動」

紹介(吉田さん)
既に学校と食の安全や環境保全等の分野で協力しています。
この秋には、東村山中学校の依頼で、内容を検討中です。
食の分野では、他にも豆腐製造、豚肉解体その他で対応できます。
其の準備として、先生へのアンケートを実施しました。其の分析から今後いろいろと展開したいと思います。

<休 憩>

田中:前半の内容をふまえて、地域団体などがもっている人材や学習プログラムを、 学校の先生のコーディネートのもとに、どのようにしてカリキュラムに組み込んでいけ ばいいのか?地域と学校が手を結ぶためには何をしなければならないか?等、一歩踏み 込んだお話をお願いいたします。

坂:雑学大学の提示したコンテンツは学校は飛びつくと思います。しかし、 ここで重要なポイントは、学校側が一貫した指導方針を持つ事です。そうでな ければ、系統性がなく、学習の中身がばらばらで終ってしまいます。 ですから、学校と支援する地域の方々と企画準備段階から両者で打ち合わせ て、内容を調整することがぜひとも必要です。

新井:綜合的学習の対象児童は3〜6年生で、当然カリキュラムに組み込むこ とになります。その際、地域の支援する方の人格や指導能力等を検討したり、結果は終了後評価されます。あくまでも個別に具体的な綿密な準備が必要です。

三上:この点は、雑学大学の講師選定の進め方と同じです。
自薦の講師は、その内容や人格等のチェックを十分する必要があります。
また、別な機会に講義や出版の実績があったり、他薦の場合は内容チェックが
> 既に実施されて居るので、検討は容易いことになります。
> いずれにせよ、講師の選定は講座の品位や集客に重大な影響をもつ大切な事項です。雑学大学はこういった実績を23年程蓄積しています。いわば、雑学大学そのものが人材のスクリーン機関といえます。

・質疑応答
Q.1 一事業者です。文部科学省の「エコスクール・パイロット事業」を地域と学校の協力に活用できないでしょうか? 次に、小田原市のように、地域のボランティア登録は有効でしょうか?

A.1 坂:「エコスクール・パイロット事業」を含め種々も助成事業が教育委員会に参ります。しかし、その地域の負担分の多額な点や、手続きのタイミ ングが合わない等の問題点があってなかなか対応できない現状です。
岩本(ちよだボランティアセンター):現在の流れから、ボランティアの登録は実施していません。行政の情報開示を受けた個人団体との個別な> 対応となります。その際団体の人材バンクの充実などは選択条件にはなります。ボランティアの就労の適切なシステムは今後の課題です。

Q.2 雑学大学会員です。社会教育に関心を持っています。
4点ほど質問致します。(1)学校のカリキュラム検討の際、社会人講師等の 情報開示はどうやっていますか?(2)公共施設が土日の児童を受け入ている状況は?
(3)教師のボランティア活動の実施状況は?(4)童夢館内の学校専用ス
ペースの開放状況は?

A.2 坂:(1)教育委員会として人材の情報提供は致しません。理由は、各学校の独自性があるため、各学校で計画しています。今後検討すべき点です。
(2)公共施設は、学童の怪我や責任等を考えて、指導者への貸し出しとなります。今後は、施設に関与する団体への学童のボランティア体験等で関係が深まると思います。
(3)現状では、教員は勤務地での活動が主で、地元などでのボランティアへの参加は進んでいません。今後は教師の居住地域での参加を進めるのが望ましいと思います。
新井:(4)普通教室は開放していません。その他の部屋は積極的に開放しています。朝9時から夜10時まで、午前、午後、夜間に区分して受け入れています。

Q.3 教育出版の者です。そもそも綜合学習の目的は、山際さんの意見から、英会話、IT教育、ボランティア参加、国際交流の促進を目指したと聞いています。始まった現在、綜合学習でやることが決まらないと言うのは、その方向と違うんではないでしょうか?

A.3 坂:ブレインのお一人のご意見がそうであったと承知はしていますが、その方向で現在の「総合的な学習の時間」が動いては居りません。「総合的な学習の時間」のねらいは私の当初の発言の通りに理解して居ります。

・まとめ
田中:最後に一言ずつ纏めの言葉をお願いします。

坂:総合的学習以外にも、千代田区は開かれた学校づくりを推進しています。その際、外部講師の受け入れは学校の教育力向上に重要です。
そのため教師は遠慮せずに外部講師の方々と突っ込んだ話し合い、調整をして欲しいと思います。

新井:学校だけでは教育は完遂できません。千代田区の小学校が14から8校に再編成された時に思ったことですが、公立学校は誰の為にあるのか?
それは地域のためにあると思います。ボランティアの拠点も地域にあると認識しています。

三上:雑学大学には、品質保証された400人以上の講師、サポーターが居ります。是非ご活用ください。

田中:一点付け加えさせてください。地域の公共施設における中学生のボランティア活動や職業の体験についてですが、川崎市には「地域教育会議」があって、地域の方々が主体となって、夏休みに中学生が地元の商店、企業、公共施設で仕事体験をできるような仕組みをつくっています。
最後に、本会を通して、教育は学校と地域が支えあってこそ、進められるテーマだということを実感致しました。今回のパネルディスカッションを出発点として、今後さらにこの問題についての議論を深めていければいいのではないかと、祈念して本会を終了致します。ご参加ありがとうございました。
・尚、終了後、ちよだボランティアセンターから、9月6日開催の「NPOと学校の情報交換会」の案内がありました。


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以上
(文責: 鈴木 一郎)