神田雑学大学

163回 平成155月9日講義録

 

雑学折り紙

講師:武田 健一

1.プロフィール


 皆さんはコンピュータの「2000年問題」を覚えていますか。コンピュータの記憶装置が非常に高い頃、少しでも記憶装置を節約したいと言うことで、4桁の西暦年数を最初は19と決まっているからと最初の2桁を省略してしまいました。ところが段々と年数が進んできて、1999年になると次は当然00年になり、頭の2桁が19であるから2000年にならず、1900年になってしまいます。これが2000年問題で、00年を2000年にするためにプログラムを直す事が必要でした。

プログラムはCOBOL(コボル)という言語で作られたものが多くありました、しかし若い人はパソコンでCOBOL以外を使っている方が多くCOBOLを教えられる人は極めて限られていました。私は定年退職直後で、ソフトハウスと呼ばれる会社から新人教育でCOBOLを教えるよう要望されました。プログラム作成で使用するコンピュータ用紙は意外に良い紙を使っていて、プログラムミスがあって使いものにならない紙くず同然の用紙を貰って折り紙として使用しました。こういう紙でも折り紙には使えます。

2.はじめに

年をとると記憶力が衰えて来ます。そのため私は高齢になったら無理して覚える必要はないと言っています。但し、受講料を払って頂いてる場合、覚えなくても良いというのは少し無責任であり、「他のものに覚えさせなさい」と言ってます。受講者は怪訝な顔をしますが、具体的にはノートに書くとか、テキストにアンダーラインを引くことです。そうするとノート・テキストが覚えていてくれる訳です。しかい折角覚えさせたものを後から容易に参照出来なけれ意味が無いので整理しておくようにすすめます。この整理が大切なのです。

 「折り紙」の場合折り方を覚えておくために線を引くとか、描くとか言う訳にはいきません。折り紙には折り紙の手順を描いた設計図みたいなもので「折り図」というものがあり、それで覚えさせる方法があります。実はこの折り図を描くのは大変なことなのです。

 例えば今日パンダの折りますが、皆さんに折り図を描いて下さい、と言っても先ずこの中で描ける方は一人もいないでしょう。私も簡単には描けません。    どうしても折り方を覚えておきたい、しかし忘れてしまう、というような場合には折ったものをそのまま残しておくのが良いと思います。その時、完成品だけでなく、そこまでたどり着く途中過程の物を残しておきます。具体的には一番最初に折った物を残し、次にその先まで折った物を残す。更にその先まで折った物を残すといった具合に完成するまでの物を次々折り、順番に番号をつけておきます。このようにしておくと紙が折り方を覚えていることになるのであとはこれを参照して折れば良いことになります。実際には途中まで折った物がバラバラになってしまうので、工程順に紙に貼って残しておいても良いでしょう。工程は各自の理解に応じて残せば良く、ある程度分かっていれば一気に飛ばしても構いません。

 皆さんは鶴の折り方をご存知と思いますが、例えばウサギを折る時にこの鶴折りの基本から出発しても良いのです。もし鶴折の基本が分からない場合は前の段階の折った物から残しておけば良いのです。

 今年医師国家試験の合格者の最高齢は66歳で合格者の最高齢の記録を更新しました。これ以前の記録は62歳で私の知人でした。知人は現在宮崎で小児科の開業医をしていますが、「子供が来ると、言うことを聞かなくて困る」と嘆いていました。それではパンダでも折って差し上げたらどう?ということで、パンダの工程表を送ったところ知人はこれを見ながら結構自分で折れるようになりました。折り方を忘れた時など、この工程表を残しておけば、これを参照して折ることが可能になります。

 折り紙は何も覚える必要はなく楽しめば良い。少々形が悪くても構わない。多少ゆがんでいても気にしない。幾何の証明をやっているのではないから、自由に折れば良い。ハサミを入れても構わない。ただ、あまりハサミを入れ過ぎると「折り紙」より「切り絵」になってしまう。折り紙には特に明確な定義はありません。

3.折り方の呼び名

折り方の記号は「日本折り紙協会」で提唱している「折り図」の基本形です。これから谷折り、山折り、中割れ折り、かぶせ折りの折り方の基本練習します。

谷折りは折り紙を内側に折った時、下部の折り線を言います。谷のように折るところから命名されています。山折りは反対に外側に折る事を言い、山のように折るところから山折りと言われています。中割れ折りは谷折りや山折りをしたあと、一部分を内側に折り込むことを言い、くちばしのような形になります。昔、中折れ帽子と言うものがありましたが、丁度あのような形に折り込みます。かぶせ折りは髪をかぶせる様に折った物です。この言葉を念頭において、今日はパンダを折って見ましょう。

4.パンダの折り方

「顔の折り方」 表黒地、裏白地の折り紙を用意する。先ず、白い方を内側にして半分に折る。そうしたら一度開いて両脇から斜めに折る。真ん中に筋が入る。両脇から三角に折る。ここまで折ったら裏返して、いま折った斜めの線を、真ん中の縦の線に合わせるように折り返す。反対側も同じように折り返す。黒い四角のような形をしたところを境にして折りあげていく。そうするとピッタリか大体合う筈である。上にズレているか、下にズレていれば修正する。極端でない限り、多少ズレていても構わない。次にそれを縦に開く。両側とも開く。今度は斜めに両側から折っていく。ちょうど真ん中の角と角が合うように斜めに折っていく(ここまで折ってくるのに苦労する)。そうしたら先ほど折ったところを取り出し、いま折ったものは隠れているから、左右から取り出し、いま折ったところに挟み込む。両方挟み込む。

ここまで折ってくると少しパンダらしく見えるようになった。これから段々とパンダになっていく(生徒たちの歓声の声が聞こえる)。今度は下の角と角を合わせ、盛り上げる。目がスッカリ隠れてしまうが、直ぐに出すからご心配無く。今度は斜めのところを下に合わせるように折る。左側からでも右側からでも、どちらからでも構わない。折ったら一度開いて、折っていない片側も同じように折る。要するに左先でも右先でも同じように折る。左右に筋がついている筈である。一度元に戻し、いま折った筋の通りに押していくと、真ん中の尖った形になる。尖ったものを左でも右でもいいから倒して見る。倒したら反対側のも倒す。尖ったものを左側、右側両方に倒す。そうしたら尖ったところを開いて潰す。そうすると四角になる。こうなったら下の小さな四角を半分折り下げると、口が出来上がる。泣き出したパンダみたいだけど、パンダらしくなってきた。これで口まで出来た筈だが如何?さっき隠れた目が出てきた筈である。これから耳を作る。耳はこの尖った真ん中に筋がついているところまで折っていく。左右から折っていくと真ん中でピタッと合う筈である。そうすると、折ったものを、またいまの口と同じように開いて四角にする。開いて潰すと四角になる。両方とも半分ずつ折りあげると、これで耳の出来上がり。大分パンダらしくなってきた(笑いがもれる)。これでは未だ泣きべそをかいたパンダである。あとは自由に後ろに折り返す。折り返す量は自由で良い(笑いと可愛いいの声あり)。これで完成です。これで出来上がりでも良いのですが、アクセントを付ける意味で、後ろの頭の所をちょっと左右折り下げるとより可愛い感じになる。同じものを折ってもお隣の方と比べてみると結構個性豊かなものになっている(大笑い)。これで同じパンダなの?別に多少大きくても小さくてもそれは構わない。それが個性である(大笑いが続く)。

「身体の折り方」 実際には顔だけではなく、身体があるともう少し可愛さも増す。やはり表黒地、裏白地の折り紙を用意する。最初の方の折り方は顔の折り方と全く同じで、先ず半分に折る。それから左右に三角に折る。ここまでは顔の折り方と同じ。次に下の方1cm位のところを折り返す。別に正確に1センチでなくても良い。2cmでも1.5 cmでも良い。下を折ったら先ほどと同じように、裏返して烏賊(イカ)の頭のような感じに折る。今度は下を折り返しているから、先ほどとは少し感じが違う(少し笑いが起きる)。そうしたら、それを少し開いて、これを潰して合わせると足になる。また裏返しして上にしてこれを折っていくが少し余裕を残して、適当で良い。ピタッと合わせると折り過ぎて手の部分が無くなってしまうから。今度は少し上に折り返す。上に飛び出すようにしないと、先ほど作った頭を載せられなくなる(笑いあり)。飛び出したら真ん中から二つに折る。 これで身体の部分が出来上がり。そして先ほど作った顔を挟み込めばパンダ出来上がり。向きは右でも左でもどちらでも構わない。(自分の折ったパンダを見て、歓声と喜びの声を挙げる)。

二回目は講師の説明無く挑戦する。先ほど折った記憶をたどり、各自自由に独自に折ってみる。然し、こういうことは女性の記憶力は強く、隣に女性のいたところの男性はいろいろと聞きながら再び折り始めたが、隣が男性同志のところは諦めの方が早かった。

講師曰く、「知らず知らずお互い話しながら折ったり、若い人に指導してもらったりして折っているが、これが折り紙の楽しいところと思っている」(「若い人」のところで異議申し立てがあり、「若くなくても良い」と訂正があり大爆笑)。

質問1: 丸で折った折り紙はありますか?

   知っている限りでは見かけない。五角形とか六角形のものはある。

例えばキキョウの花は五角形で折る。また正多角形で折ったものもある。

質問2:創作折り紙をしたことはありますか?

自分は創作をやったことが無いので分からないが、創作折り紙で有名な方は吉沢章さんと言う方がおられる。その方は高齢だが、ジーッと観察して霊感が涌きだしたら突然手に持っている折り紙を素早く折り出す。しばらくまたジーッと見てまた折り出す。これを繰り返して新しいものを作り出す。

質問3:折り紙は日本独自のものですか?

自分で明確に研究している訳でないので分からない。もしかしたら中国から来たものかも知れない。ただ、江戸時代にあったと言うことは間違いない。かなり折り図など詳しいものがある。

質問4:千羽鶴とは?

千羽鶴と言えば、鶴を沢山繋げたものと思いがちだが、実際あれは千羽鶴とは言わないようだ。千羽鶴とは一枚の紙で、いわゆる連鶴(れんづる)と言うが、それで折るのが本当の千羽鶴だそうだ。江戸時代に千羽鶴の折り方の本が出版されている。


(文責:桑垣 俊宏、写真撮影:橋本 曜、HTML制作:田口和男)