神田雑学大学2003年9月5日講義録


講師 横田 寛之 


目 次

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ドイツのワイン

ドイツの地形の特徴

ドイツのワイン産地

ワインの醸造

00トロイチリースリング 1L

00クレメンスラング シュペートブルグンダーブァイスヘルブスト






講 師


横田 寛之 氏(神田和泉屋主人)


ドイツのワイン

 多分皆様はドイツのワインを飲んだことがおありと思いますが、多分甘いワインとの印象をお持ちかと思います。しかしドイツのワインというのは半分以上辛口なのです。

 なぜかというと国土の半分以上は地理的にぶどうの採れない地域なのです。そこでぶどうの採れない地域の人は甘いワイン、それも殆んど輸入したものを飲んでいます。

 ワインの生産量は非常に少なくて、全世界の生産量の3〜4%程度にすぎません。もっとも日本の生産量は1%以下にしか過ぎません。僅かな生産量といっても現地のぶどう畑は車で走っても走っても続く広さなのですが、ここのワインがフランス、イタリヤと並んで全世界に輸出されているのです。

ドイツの地形の特徴

 世界のワインの80%ぐらいは旧ソ連を含めてヨーロッパで作られています。地球儀の上で東京と同じ緯度を辿っていきますと、ヨーロッパには触れなくて北アフリカに行き当たります。ローマが函館と同じ緯度です。フランスの有名なワイン産地ボルドーが網走ぐらい、いまからお話しするドイツのワイン産地フランクフルトは樺太の真中あたりに相当します。

 すなわち北緯50度でこれがワインの出来る北限です。そんな寒いところでぶどうが採れるのかとお思いでしょうが、あのあたりはメキシコ暖流が流れていてわりと暖かいのです。
 しかしドイツ北部はシベリヤ寒気団の影響で果物の成長には不適で、糖度の高いぶどうはできません。ここの人は、非常に苦労しながら、このぶどうで2000年以上、独特のワインを作り続けてきたのです。

 ワインを判定する基準はフランスのワインです。ソムリエもフランスワインを基準としていますがワインには酢の物が合わない、ドレッシングをかけた食べ物はあわないといいます。しかしドイツのワインは、地形上の特徴からリンゴ酸をおおく含むためにフランスタ、イタリヤのワインとは食べ物の相性が少し違うのです。南のぶどうは乳酸に富んでいます。

 このリンゴ酸系のワインは柑橘類に合いますので日本の辛口の酒の肴に意外と合うのです。神田泉屋がこのドイツワインに拘っている理由はここにあります。

ドイツのワイン産地

 ここにドイツの地図がありますが北のボーデン湖がドイツのワインに大きな影響を及ぼしています。ココから出たライン川とその支流の沿岸にぶどうの産地が広がっています。
 北緯50度以北のボンあたりではもうぶどうはとれません。ここではもうリンゴの世界です。パリもフランスのぶどう産地の北限です。リンゴからはカルバドスブランデーが作られます。それより北はじゃがいも、小麦の世界で、ウオッカ、ビールなどが作られます。

 ワインの醸造技術はフランスが先輩ですが地形、国民性の違いからワインの鑑別の基準はかなり違っています。
 もともとどこの国にもワインの鑑別法がありますがEUになって統一されたランキングがあるのですが従来のものも使っていいというので二本立てになっています。



 神田泉屋は現在9軒のワイン蔵とお付き合いがありますが、現地の人は日本人がドイツの白ワインは甘いというイメージを持っているのを残念がっています。

 もともとドイツのワインは辛いのですが、たまたま熟しすぎて糖分が高いぶどうが酵母菌が処理しきれなくて、デザートワインのような甘いワインができるときがあります。
 ドイツは日本と同じ敗戦国ですが、戦後の混乱期に甘口の酒というものが好まれた。ドイツでは甘口にするためにジュースを加えたという時があったのです。これは法律でも一応認められているのですが、日本に輸入されているワインは殆んどこのタイプです。

 私はこの傾向を残念に思っていまして、本来のドイツワインの市民権をささやかながら守ろうとして拘っているわけです。

ワインの醸造

 ワインも清酒も酵母菌の働きによって醸造されています。人類より、はるかの昔から酵母菌は糖分を食べてアルコールと炭酸ガスに分解して酒を作ってきたのです。

 たとえ話で言えば酵母菌は糖分という食糧を食べて炭酸ガスというおならをしてアルコールというウンチをしているということができます。

 糖度とアルコール濃度は比例関係にあり、天候が良くてぶどうの糖分があがると、よいワインができるのです。今年の夏、ヨーロッパでは記録的な暑さで多くの人が亡くなりましたがワインからいえば当たり年で素晴らしいワインができそうです。
 ただ暑ければいいというものでなくて、早く熟してしまうと土中の養分を吸い上げる時間がたらなくて特徴のある旨さがでてきません。

 ドイツは北国で十分な日照がないのでぶどうの糖分が充分に上らないのです。したがって甘いワインが出来難いのですが十分土中のミネラルを吸ったこくのあるものが出来るのです。

 ドイツ人と日本人の国民性には共通点があって、たべものであまりごてごてした物は好まず、刺身とかソーセージ、ハムなどシンプルなものをこのみます。これに酒なら辛口の清酒辛口のワインが合うのです。
 これが神田泉屋がドイツ白ワインに拘っている理由でもあります。

 ミカンの例ですと九州、中国のみかんは甘いけれどいまひとつピリッとしない、小田原あたりは少し酸っぱい、静岡の三ケ日あたりが一番みかんらしい味がするようにおもえます。
 ぶどうでも地域によってそれぞれ特徴のあるものが実って特徴のあるワインが生まれます。同じヨーロッパ大陸でも、イタリヤのように恵まれた気候のところはなにもしなくてもいいぶどうが熟します。半面糖分ばかり増えて酸が足りません。

 ドイツでは天候がどんなによくてもイタリヤにはかないません。糖分は低いのですが適当な酸があるのです。北緯50度ぐらいになると太陽の光を受けるために、斜面でないとぶどうは熟さないのです。またドイツのぶどう畑はライン川とその支流沿いに広まっていますが、これも川の反射熱と立ち昇る霧をを利用する人間の知恵です。

 ここで試飲していただくワインは、トロッケンといって非常に辛口で殆んど糖分がありません。私どもで扱っているワインの原料のぶどうは、全て有機農法で出来たものです。日本酒の原料である米は、有機農法のものがいいかというとそうではありません。酒を作る時は玄米を徹底的に精米して、中心だけしか使わないからです。

 ラインガウ(フランクフルとの近く)のロルヒでは、120年来辛口しか造っていません。ガンツ(完全な)トロッケナー(辛口)というイメージで家族で醸造している蔵が殆んどです。

00トロイチリースリング 1L

 ドイツの銘醸地ラインガウ地域のロルヒ村のラインの河に面した南の斜面に、ワイングートトロイチの醸造所と畑があります。このワインは地区の代表的な高級白ワインぶどう品種リースリングで造られた、香りのさわやかな豊かで上品な辛口白ワインです。

(アルコール度数10.97 酸度8.8g/L 残糖 0.3g/L)
岩手県蔵沢町黄海上中山 「神田泉屋舘ヶ森山荘ワイン庫」で熟成貯蔵

 余談になりますが、ヨーロッパの醸造学は殆んど修道院のなかから発達してきたもので、ブランデイのドンペリにしても、ベルギーの辛いビールにしても、当時学問的に優れた知識をもっている修道士たちによって受け継がれてきたものです。

 世界のぶどうは70%が黒ぶどうで、ドイツは地理的に寒くて黒ぶどうが育ちにくいので、殆んどが黒くないぶどうで白ワインになります。

二本目はドイツでめずらしいロゼですが、これは皮を除いて種から出る渋みの原因となるタンニンが出る前に絞って醗酵させたもので、色がピンク色になります

00クレメンスラング シュペートブルグンダーブァイスヘルブスト

 フランスのアルザスワイン産地とライン河を挟んで向かい合うバーデン地域、フライブルクムンツィンゲン村にワイングート クレメンス ラングはあります。火山灰土壌のカペッレンゲルグ単一畑で育てられた黒ぶどう品種シュベートブルグンダーは、味わい豊かな辛口のロゼワインとなりました。
(アルコール度 12、9 酸度6.3g/L 残糖 1g/L)

おわり
(文責 得猪外明)
会場写真撮影:橋本 燿
HTML制作:大野令治