平成16年7月30日
神田雑学大学 NO225講義録


マイ散歩のスヽメ

講師 鈴木 一郎  橋本  曜

鈴木氏 橋本氏
 今、散歩がブーム。なぜ散歩がうけるのか? 現代人の弱くなった足腰を鍛え、ストレス発散に効くとともに、野生の本能を蘇らせます。
 散歩を楽しみましょう。散歩への誘い、散歩のコツ、コースの紹介等々、散歩には「雑学」が充ち満ちています。あなた好みの「マイサンポ」を……。 当神田雑学大学きっての散歩愛好人の鈴木一郎、橋本曜の両人がご案内します。


鈴木 江戸のころ、屋台や振り売りで鮨が売られたそうです。だから江戸人は辻々で鮨を味わうことができました。木挽町などでは、一月にはこはだ、二月には白魚が鮨のネタになったというふうに、季節ごとの味を楽しむことができました。
 落語が好きで私はよく聴きます。三代目桂三木助のマクラなどで江戸の魚河岸、芝の辺りのたたずまいが目に浮かんできます。潮の香が鼻先に漂い、長屋に住んでいた人たちの生活の有様が彷彿する。そしてこの界隈をそぞろ歩きしたい思いに駆られます。フラリと出かける。行った先々、話の種、話材、雑学ネタが転がっている。うれしいことです。

1 ここはどこの細道じゃ……

鈴木 私のアルバムから写真を選びました。対象は全国です。ご当地当てクイズをしましょう。


1)写真

 文豪 S、H の作品や、映画監督 O のかの名作の舞台。海と山が近接。海はまるで河のような海峡で、対岸に造船所が望めます。歴史的には聖徳太子時代から栄えた港町。 山坂の多い町を散歩して違和感がなかったのは、私の住む町に似ていたからでした。
            こたえ……広島県 尾道……

2)写真

 茶道に関心の深い風流な藩主の居城を中心として、S 湖という塩水湖から揚がる小魚のかき揚げを載せた蕎麦は絶品です。この町は、ギリシア系アメリカ人がこよなく愛した地域としても知られます。
                            こたえ……島根県 松江……

3)写真

 我が国に散歩を紹介した維新の元勲 K の別荘があった地域で、公園になっています。
桜の季節には、屋台がひしめき、この一帯はにぎわいます。
                こたえ……東京・目黒区 洗足池……


4)写真

 文化人の邸宅が並ぶ、関東で有数の歴史的地域。寺社、博物館、海岸などで週日、休日を問わずにぎわいます。

 こたえ……神奈川県 鎌倉……

5)写真

 旧江戸市中で、M、N 等、明治の文豪が杖をひいた坂や路地、国立大学等の文化歴史のある地域です。

 こたえ……東京・文京区 本郷……

6)写真


 渋谷川が更に西に向かい、海岸に近い工業地帯を潤しています。ここには、山の手ながら、下町っぽい商店街があります。

 こたえ……東京・港区 麻布を流れる古川……

7)写真
 S 川、A 川に囲まれた日本海側有数の歴史的な地域で、この写真の S 川のほとりにある魚屋経営の居酒屋に雪に降り込められた日々、よく通いました。

 こたえ……石川県 金沢市……

8)写真

 これも日本海に面した港のある町です。北前船が寄港し、商業が盛ん。繁華街は名前も古町といい、そば屋で銘酒の K、S 等を嗜みました。

 こたえ……新潟市……

9)写真
 最果ての軍事都市で、駅周辺は碁盤の目のようなレイアウト。無慮数千の飲み屋が集積しています。







←・・・・・・こたえ


10)写真

 目新しいネーミングのはしりとなった町。著名な舞踊家の命名です。
 同じ会社の私鉄が交わるターミナル駅で、山の手の女性に人気の繁華街です。

 こたえ……東京・目黒区 自由が丘……


2 東京散歩へのおすすめ
 

橋本 私は、東京を舞台に、散歩を楽しむ、散歩で楽しむという観点からお話しします。 いつでも、どこでも、気が向いたとき、出かけることができるのが散歩のいちばんの効用です。そして、その地の歴史でもよし、言い伝えでもよし、さまざまな雑学的あれこれを知ることができる。これまた散歩の効用です。
 散歩とは本来、これといった目的を持たずに歩くことだろうと思いますが、それじゃ何かとりとめがない、そこはかとない目当てがあれば、散歩の味わいが深まろうか……と思う人も多いようで、インターネットをのぞきますと、実に多くのサイトがヒットいたします。

 お手元に東京散歩をテーマにした検索例を差し上げました。ご覧になって分かるように、歴史散歩あり、泉、川、坂道探訪、文士、名士、有名人の散策コースあり、まこと多岐多様にわたっております。
 古墳、貝塚等考古学から、近現代、そして今の今、考現学に至るまで対象の幅もまこと膨大です。つまりはひとつとして散歩の興味の対象にならざるはなしというわけで、老若男女、それぞれがムリなく楽しめるのが散歩です。

 散歩についてネット情報を提供するに当たっては、東京・中央区がこの種の企画に熱心で、懇切丁寧に情報を提供しております。参考にして頂くとよろしいと思います。こうした地方公共団体をはじめ、同好の団体、個人が作成したサイトがネット上たいへん賑やかであります。

 富士見坂についてお話ししましょう。東京には、江戸時代から富士見という名の付いた坂や塚が各所にあります。東京だけで20幾つもあるでしょうか。富士山が望める所がそのように呼ばれたわけですが、その幾つかをカメラを携え、訪ねて見ました。 そうすると高層建築が増えて今では富士は望めず、地名だけに名残を留めている所が多いことが分かりました。
 
 しかし、日暮里大塚の富士見坂ではかろうじて富士山が見えました。目黒の富士見坂からも富士山を望むことができました。しかし、多くの富士見坂は、かつてここから富士山を見ることができたという歴史的事実を名前に留めるだけであります。


 東京には坂が多く、低い所が湧水地となっている場所があります。
 目黒不動のそばの湧水は今もわいていますが、古来、水場であったところが今は水源が枯れて、機械循環で水を工面しているところもあるやに聞きました。
 

 隅田川です。千住大橋、吾妻橋、永代橋、新大橋、両国橋等、江戸からの橋に佃大橋など後出来の橋も加わり、東京の水辺の風景を形作っていますが、背景は高層ビルの林立で、渡し場があった往時をしのぶよすがはなくなってしまいました。
 
 神社、仏閣、祭り、縁日など、歩けば楽しい散歩のコースは幾つも自分で作れます。カメラ片手に歩いた東京散歩のショットをご覧になって、参考になさってください。


3 東京散策「盛り場巡り
 
 盛り場は賑わいは同じでも、日に日に変っていきます。だから盛り場を見ていると愉しいのです。そして盛り場の変化を大きな波として捉えていくと、さらに面白くなります。さあ、盛り場を散策しましょう。 

 浅 草 仲見世の写真を撮っていて気づきました。どのショットにも必ず画面に外国人が写っていることです。外国からの観光客にとって浅草は日本の代表的な盛り場、日本人観察に最も適した場所と認識されているのではないでしょうか。
 
 銀 座 銀座は盛り場の代名詞です。大正時代から昭和を通じて平成の今日に至るまで、日本一の盛り場の座を守ってきました。写真にある尾張町の四つ角はその象徴です。

 池 袋 池袋に電車から降りた客を、根こそぎ西武デパートに取り入れようという西武デパートの戦略で繁華街が遅れた街です。サンシャイン60ができて、ようやく盛り場らしくなりました。新宿や渋谷に比べ10年から20年くらい遅れています。

 秋葉原 原宿が若い女の子の街とすれば、ここは若い男の街です。ご存知、電気屋街です。今では電気製品といってもパソコンやゲーム機が中心で、目を輝かして商品を選ぶ若者で充満しています。
  
 原 宿 全国の女子中・高生の憧れの地。修学旅行で上京し、この地を訪れるに際して、制服をカジュアルなシャツに着替えてくるヤングが多い。この街で売る商品の価格は3000円以下です。

 六本木・麻布十番 六本木といえば外人が多く、夜の街をイメージします。ところが六本木ヒルズが建ち、麻布十番と結びついたため昼の街に変身したかに見えます。まだまだ観光目的に来る人たちが多く、これからの街でしょうね。

 新 宿 日本一乗降客が多い(30万人/日)街です。いや世界一かもしれません。新宿に来る人は種々雑多で、あらゆる階層の人がやってきます。強いて特徴付ければ、若い会社員がお金を落とす盛り場でしょう。

 巣 鴨 おばあちゃんの原宿。とげぬき地蔵さんへの熱い思いが伝わってくる。きんちゃく、がま口から取り出して使うおばあちゃんの予算は1500円見当だとか。

 渋 谷 周囲を山に囲まれこれて、これ以上発展する余地がない街。そこに集まる20歳中心の若者が、ちょうど鍋で豆を炒っているような感じで弾けているのを想像します。金を持っていない若者が、路上で情報発信をしている様子が目に浮かびます。

 上野・御徒町 アメ横。ご存じ、千貨万品がそろい、しかも安売りの店々が軒を連ね、朝から夜更けまで人波が絶えない。写真を見てもわかるとおり、商品を看板代わりに飾るあたり、いかにも下町風情ですね。

 青 山 1辺・1キロメートルの三角地帯の中にある渋谷、原宿、青山は夫々性格が分かれます。中・高校生の原宿、20才前後の渋谷、20才以上の青山というように、成長するにつれて歩く場所がほんのわずかですが移動します。 


橋本 こうして見てきますと、「こうあらねばならない」いったふうなシバリが散歩にはないのです。自分が主体です。ブラブラ出かけてそこで見たこと、聞いたこと、感じたことを素直に受け止めればそれで十分じゃありませんか。
 先入観にとらわれず、あるがままに事象を受容することで、五感が研ぎ澄まされ心身が活性化されると思います。

鈴木 東洋思想の根底には「随所に主となる」という考えが横たわっているそうですが、散歩にこそこの考えが生きていると思います。気分転換、健康促進、頭脳活性化、いいことづくめの散歩をぜひ生活習慣に取り入れてほしいと思いますね。

橋本 通りすがりの庭の花の名を知る、街路樹について聞く。こうして無理なく何かが増えていく。それだけで十分じゃないでしょうか。

鈴木 雑草は除去する、雑念は取り払うと言いますが、コレステロールや体内脂肪とは違って、雑学は増えて邪魔になる、害になるものじゃありません。むしろ増えれば増えるほど個人の楽しみとなる。そのネタは散歩の途中にゴロゴロ転がっている……。さぁ、出かけましょう。

橋本 「散歩が拓く雑学大学の輝ける未来」といえば、雑学大学関係者としてPRが過ぎましょうか。

鈴木 いやぁ、それでいい、それでいい(笑)。
終わり

文責;阿部 宏  写真;鈴木一郎、橋本曜、山本啓一   HP化;山本啓一