No.252 神田雑学大学 平成17年2月18日講演


社会基盤の老朽化と 荒廃する日本への懸念

講師  蒔田 實

講師紹介
講師の蒔田さんは30年近く建設省でコンクリート構造物の耐久性を研究をされてきた人。昭和59年、NHK特集「コンクリートクライシス」で紹介された「塩害」や「アルカリ骨材反応」などの危険が忘れさられてきつつある中で、高度成が始まってからもうすぐ50年、これが現実のものとなりつつあります。アメリカで発行された「荒廃するアメリカ」は多くの示唆を含んでおり唱和30年代後半に、急速に建設がすすめられた公共施設の寿命が迫っています。

略歴
1935年文京区生まれ
1959年都立大学理学部卒業
1959〜1986年 建設省土木研究所
1986〜2002年 ニチレキ株式会社
現在 (財)土木研究センター参与
   (社)インターブロッキング塗装技術協会 理事
    日本エルガード協会顧問


NHK特集「コンクリートクライシス」(1)        
1984年(昭和59年)放送
半永久的なものと誰もが信じていたコンクリート構造物が、意外にも早期に劣化することを、日本およびアメリカの事例を紹介した。
その原因は「塩害」、「アルカリ骨材反応」によるもので、耳慣れないその言葉は人々の不安を一層かき立てるものであった。
マンションのローンをようやく払い終わる定年間近になって、大規模な修繕あるいは立て替えが必要となれば、誰でも途方に暮れる。こんな思いを人々に与え、大きな反響を呼んだ。

NHK特集「コンクリートクライシス」(2)
日本の「塩害」の主たる要因は、川砂に変わり海砂が使用されるようになり、特に山陽新幹線では不十分な洗浄のまま使用されたことなどを、生コン業者などの証言等から明らかにしていってる。
「アルカリ骨材反応」は、後に明らかにされたことだが、当時は亀甲状のひび割れを生ずるコンクリートの奇病として、紹介された。

塩害の種類
1.海砂によるもの  海砂は洗浄して使用することになっているが、使用され始めた初期には、洗浄方法なども確立していず、塩分がかなりの量含まれていた。
2.飛来塩分によるもの
  海から飛来する塩分で、コンクリートに浸透する。従来、沿岸部のコンクリートに重大な影響を与えるとは、必ずしも考えていなかった。
3.融雪剤によるもの
  冬季の凍結路面に散布されるもので、一般に塩化カルシウムや岩塩が使用されている。現在は、それによる塩害はほとんど認められていないが、やがて顕在化すると予想される。
              




コンクリート中の鋼材の腐食に必要な因子



鉄筋はコンクリート中で保護されている (日本エルガード協会資料)


塩害のメカニズム              (日本エルガード協会資料)








(建設省土木研究所資料)
アルカリ骨材反応のメカニズム
SiO2 + Na+(又はK+) + H2O 
                     → nNa2O・nSiO2

 SiO2     ; 骨材中の非晶質のシリカ鉱物

 Na+     ; セメントなどからのコンクリート中のアルカリ
 (又はK+)         及び海砂等からの塩化物

 H2O    ; 混練水又は外部からの水
     











「荒廃するアメリカ」の反応(1)
1981年4月27日 タイム誌の特集
 
 「スペース・シャトルの派手な宇宙ショーが
  演られているけれども、アメリカ経済を支
  えている道路をはじめとする公共施設の
  痛みが激しく、アメリカの再生計画は足下
  がぐらついている」と警告
「荒廃するアメリカ」の反応(2
・新聞などの報道
  読売新聞が、タイム誌の特集と同時に報道      するとともに、その後各紙が一斉に報道
調査団の派遣
  アメリカの現状に驚くとともに、各種機関が実状調査
「荒廃するアメリカ」の背景(1)
アメリカの公共施設は維持管理がないがしろにされたまま、日々脆弱化している
緊縮予算とインフレと言う切迫した事情の下に、老朽化した公共施設の修復が延期され続けている

期間施設のこのような劣悪な状況は、今後のアメリカ経済の再建のボトルネックになる
                   (“はしがき”から)  

「荒廃するアメリカ」の背景(2)
1930年代のルーズベルト大統領のニューディール政策により、TVAをはじめとする公共施設の建設
1970年代になり、建設後40年を経てこのころの公共施設の老朽化が顕在化しはじめ、1970年代末には深刻化
ベトナム戦争などの影響による、財政事情の悪化

我が国の現状
昭和30年代後半(1970年代)から急激な経済発展とともに、大幅な公共施設の建設
これらの施設が建設後そろそろ40年を経過することになる
公共施設の寿命を50年とすれば、今後10年から20年後に一斉にその時期を迎える
財政難から必ずしも的確な維持管理がなされていない

橋梁の架設年次と橋梁数 (国土交通省資料より)















荒廃する日本への懸念(1)
1999年
 小林一輔 著
  岩波新書












 小生の子供の頃は川に鉄骨製のコンベアが入って、玉砂利を掘っていたのを覚えています。それがいつの間にか、採石場からの砂利をコンクリートに使うようになり、更にこれに海砂を混ぜるようになってからの鉄筋コンクリートは寿命が極端に少なくなっているとお聞きしてまたひとつ怖いものを思い出させていただきました。こういった物より、戦前に建てられ震災、空襲を生き残ってきた建築物は壊すのに時間を要するとの事でした。タヌキしか通らないような高速道路にお金をバラまく資金を劣化重要構築物に流用した方が子孫につけを回さないで済むような感じがします。それにしても、温暖化、オゾンホール、東海大地震、赤字国債、小子化、年金問題となんと子孫に残す問題が多いことでしょう。(^^・)    (山本 後記)

文責;蒔田 實  会場写真;橋本 曜  POWER POINT からHTMLに編集;山本 啓一