平成17年7月15日 神田雑学大学講座No.271 

ダムの話

講師  北川正男

はじめに
ダムは治水や利水に大きな役割を果たしています、しかし ダム建設事業には時間、費用、環境などの問題点があります。私たちは、変化する社会経済情勢のなかでそれらの問題解決に立ち向かっているところです。ダムに関する基本的な知識を収得して頂くことが、ダム問題のよりよい解決への糸口になると思います。

「宇宙船地球号と日本---ダムのやくわり---」

 1章 宇宙船地球号

  ・銀河を旅する宇宙船地球号。太陽系には地球の仲間である9つの惑星が回っている。宇宙のなぞ、生命のなぞ、不思議がいっぱい、でも、生命の源「水」をたたえる星はただひとつ。私たちにかけがえのない水の惑星、宇宙船地球号。

 2章 古代文明と日本の国土
・古代文明と水。エジプト文明やインダス文明など、昔から人類は自然との折り合いをつけながら生きてきた。私たちの国土、海に囲まれた日本列島には美しい日本の四季がある。
  ・日本=日(太陽)の本のクニ
   太陽エネルギーが、海洋から水を大空へ蒸発させて日本列島へ運び、脊梁山脈で雨や雪になる。夏は、太平洋からの梅雨・台風。冬は、日本海からの雪。大雨も、3日ほどで海へ流れ出る。一気に流れる川は、洪水の原因となる。一方すぐに渇水が訪れることになる。その国土の特徴を活かした日本の生活システムを築き上げることが大切。
  ・環境問題から
    今、地球レベルで環境問題が問われている。地球温暖化は、私たちの生活に大きく関わってくる。洪水、渇水などの気象変動が大きくなる。わが国は多くの食料を外国に頼っている。外国の異常気象は、私たちの台所を直撃する。また、温暖化は、自然のダムとなる降雪を少なくする。背景に、化石エネルギーの大量消費や森林の大量伐採等の人間の活動がある。私たちは、宇宙船地球号の乗組員としての暮らし方を考えてみたい。

 3章 人類の知恵:ダ ム
  ・ダムは、一石五鳥の働き。
   (1)洪水を防ぐ
    (2)水不足を防ぐ
   (3)河川環境を守る
    (4)飲料水や工業用水を確保
    (5)発電
・ダムにも弱点がある:弱点克服対策
(1)土地提供等:水源地域対策(地域活性化、上下流の交流)
(2)堆  砂 :排砂、堆砂対策
(3)自然改変 :環境への配慮と環境創造

 4章 クニづくり----環境先進国をめざして----・ 一人一人が『宇宙船地球号』の乗組員の一員であるというグローバルな視野を持つこと、人間と環境との関わりについて理解を深めて自然と共生すること、身近なところから具体的な工夫を進めることなどが重要な課題となっている。

・ 日本の役割は環境先進国。日本らしい、特色を生かしたクニづくりをめざそう。太陽と水は地球の命。国土を活かすクニづくり、ダムづくりは、日本の知恵。宇宙船地球号キャプテン日本をめざし、かけがえのない地球を守ろう。
日本の河川とダムの役割

1.洪水氾濫地域に人と資産が集中
  国土の10%の洪水氾濫地域に人口の50%、資産の75%が集中している。一旦、洪水になると大きな被害を受けるため、計画的な洪水対策が必要。
  

2.日本の河川は諸外国に較べて急流
  山に降った大雨は、3日で海へ流れ込む。洪水や渇水になりやすい国土に、私たちは住んでいる。


3.日本の治水整備状況はまだまだ
日本の主要河川の整備率は40年に一度の洪水に対して未だ約70%整備。欧米の主要河川の整備率に較べてかなり低い水準。
  

4.日本の河川は、最大流量と最小流量の差が大きい
 諸外国に較べて、洪水と渇水の繰り返しが多くなる。また、水利用量が最小流量を大きく上回るため、ダムが水供給の役割を果たしている。
  

5.ダム貯水量は、アメリカが3700億トン、日本は200億トンで人口の比率から見て格段の差がある。
  一人当たりの貯水量はアメリカが1400トン、日本が160トン。

しかも、アメリカはダムを建設中、老朽ダムは撤去している。

6.水道水の36パーセントはダムの水。
  

7.水力発電は、火力・太陽・風力・原子力発電に較べても最もCO2発生量が少ない。
  

8.水力発電だけでも、昭和30年代の生活に戻れば生活可能。
  

9.ナイル川、コロラド川などでは、河川の水を効率よく貯めて利用している。日本は、かなりの水を流してしまっている。
  

10.着々と温暖化が進んでいる。
積雪量の減少(自然のダムが減少)するため、代替のダムが必要になってくる。


■ 下記のアドレスに「宇宙船地球号と日本 ダムのやくわり」のダイジェスト版が掲載してありますのでご覧下さい。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/damdoko/dam_doko.html


北川正男さんのプロフィール
北川正男さんはゼネコンの現役のダム技術部長です。更に社内だけにとどまらず下記のように積極的に地域活動もなさっていらっしゃいます技術者です。今回の講演はインターネットからの申し込みを戴きました。今回の講演は8月から「愛地球博」に先立ちまして 神田雑学大学 で上映させていただきました、Power Point による一部ビデオ入り(NHKより許可済)の上映でした。サーバーの容量の都合上画像が小さくせざるをえませんでしたが、雰囲気だけはご覧いただけるようにいたしました。(山本記)


 北川さんの活動状況 は
     ダム工学会講習会 委員長
     ダム工事総括管理技術者会 常任幹事
    (財)電源地域振興センター 専門家 
   食材王国 みやぎ大使
     宮城県 大和町「まほろば大使」 
     東京七峰クラブ 副会長(在京 宮城県黒川郡の会)
     ふるさと交流紙「ナナタイムズ」編集次長
 主な受賞
   平成3年 RACコンテスト グランプリ(建設省)
     「アサイナ サブロー等による建設広報活動」
   7年「大和町町制施行40周年記念特別表彰」(宮城県大和町長)
   8年 松戸市稔台まちづくりコンクール最優秀賞
   16年「ダムどこでもドア」ダム工学会賞

 プロフィール 1948年(S23) 京都市生まれ
 1971年(S46) 京都大学工学部卒
    三井建設株式会社入社
その後 高速道路・新幹線・ダム工事に従事
 1979年(S54) 寒河江ダム建設 10年間 建設省 山形県西川町
 1989年(H元) 宮床ダム建設 5年間 宮城県 大和町
 1996年(H8) 三井建設株式会社    ダム技術部長     
             三井住友建設株式会社  同 上

京都生まれ京都育ち。
小学校は室町幕府跡、中学校は烏丸通り、高校は平安京大極殿跡、大学は「紅燃ゆる吉田の郷」に。建設会社に入ってから、中央道、東関道、上越新幹線工事を経て山形県の寒河江(さがえ)ダムに10年宮城県の宮床(みやとこ)ダムに5年従事。
特に、宮床ダムでは地域と共にダム建設を考え、地元の民話を掘り起こして、現場のシンボルにすると共に町のアイドルキャラクターに育てあげ、上下流の交流、地域のアイデンティティ啓発などの地域振興の力になった。
今回はダムの話ですが、是非、時代を超える創造への情熱、人に宿る地域のエネルギー、元気が出る「アサイナ伝説」も聞いて頂ければと思っています。


文責;三上卓治 会場写真;橋本曜 ビデオ、HTMLその他;山本啓一