画像で比較する東京プロジェクト

 講師 山本 富士雄
 まず東京タワーからの風景ということでご説明します。1965年から昨年まで45年間でどれだけ景観が変わったかということをご覧ください。

 これは東京タワーの特別展望台から四方を俯瞰した写真の比較で、この間非常な変貌を遂げたことを物語っています。ひとことで言えば多くのビルが無秩序に林立し非常に雑然とした大都会になったということがいえます。
 インターネットで東京タワーを検索してみて頂くとよくわかると思います。今後再開発が進む地域として汐留、防衛庁跡地、お台場、表参道などおおきく変貌することでしょう。

ここ10年ほどの変貌を見て頂きましたが激しく変わったのはこの5年間です。見方によっては芝生の庭を埋め尽くした雑草の感じがなく、ちまちまとバラバラに好き勝手に、専門用語でいえばグランドデザインなくビルがたっているように見えます。ひとくちに言って東京にはグランドデザインがありません。なぜそうなったのかお話したいと思います。
 グランドデザインの定義、どこの都市がグランドデザインがあるかといいますと典型的な都市はみなさんご存知のパリでないでしょうか。
 東京でグランドデザインをやり直すにはどうしたらいいか?ひとつは大地震がきていったん壊れてしまうことでしょう。震度7では殆どの建物が壊滅することはあり得ないでしょう。
震度7というのは南淡路阪神大地震ではじめて定義づけられた震度です。 それまでは6までしかなかったので現実に起こってみると気象庁も慌てました。
将来震度8の地震の可能性が皆無かというと、ありうるわけで、若しおこれば壊滅的な被害となるでしょう。そういうことが起こればグランドデザインを作ることは可能かもしれませんが明治になってからグランドデザインが出来なかったのは宗教と市民意識に起因しています。
 欧米の中世のアーキテクトは神の代理人として仕事をするという意識を持っていました。
それと国家権力が非常につよくないとできません。たとえばオーストリアのハプスブルグ家とかマリアテレジアのように巨大な権力を持った者だけが建築家に命じて非常に強引な開発を行うことが可能だったのです。
 もうひとつ重要なことは市民意識で日本は伝統的に木造建築で燃えやすく、すぐ老朽化して立て変える必要があったために大工棟梁が自分で設計して、ばらばらに家を建てたという現実に起因しているといえるでしょう。
 欧米は石造りが基本になっているので数百年はもつことを前提に都市づくりが行われてきました。ローマのパンテオンに至っては築後2600年たっても、まだ当時のままの姿が残っています。
 たとえばスペインのバルセロナのサグラダ・ファミリア教会はアントニオ・ガウディという建築家が設計したもので、今も建設中ですがまだ200年あまりかかるといわれています。
 ドイツのミュンヘン大聖堂は出来上がるまで630年かかっています。
 このように欧米では数百年のレンジで、都市との景観を考慮した計画が行われていますが日本はそういきません。最大のネックは土地の私有制です。
 大英帝国すなわちイギリスはいまでも殆どの土地が女王のものになっています。シンガポールの景観がなぜあんな綺麗かというと土地の95%が国有地だからです。
 日本では99%が民有地で土地が庶民にとっては大変な財産となっています。バブルがはじけて、土地の価格は大幅に下落したとはいっても絶対に手放しません。隣接した兄弟の土地といえども整理してすっきりした開発をやろうとしても無理です。
 関西の人の意識は若干違うようです。それは長い歴史があって由緒ある国宝建築などがたくさんあり、あまり乱暴な開発はできないからからです。建築家もプライドを持っているようです。
 それと日本人は宗教意識が希薄であることも相俟って、グランドデザインが出来難い状況になっています。グランドデザインがないということは美しくない。外国人が口をそろえてこういいます。しかし面白い、不思議な街と表現します。各地に昔の情緒を残した地域などはいくつかあります。
東京近辺の特徴は地下鉄を含めて鉄道網がすごく発達しており、まだまだ開発されると思います。これからはモノレールが増えていくでしょう。東京の街づくりの最適モデルには二種類ありまして、一つは外科手術的モデルともいうものと、漢方薬的都市再開発モデルがあると思います
外科手術的モデルというのは一定規模(数ヘクタール)が開発可能な用地、たとえば汐留、丸の内(地権者は三菱地所が殆どであることから)、防衛庁の跡地(新東京ミッドタウン)でのみ再開発が可能です。
 日本人には超高層信仰のようなものがありまして、これがまた制約条件になっています。折角再開発の可能性のある表参道でこんなことをやると大変なことになります。
 東京都庁の建設のために丹下設計事務所は百以上のモデルを作っています。勿論低層の開発案もあったのですが、新聞テレビを中心とする高層建築信仰の世論に負けたというのが実態です。
 パリで超高層ビルは郊外のデファンスという地区に絞っておりロンドンでもドッグランドに集約しています。日本では土地があればその容積率ぎりぎりのものを作って周囲との調和というものを考えません。やたらに高層を志向することは地震の対策からみてもかなり問題があります。
 漢方薬的再開発というのは地権者の利害関係が絡み合っていて一挙に開発できない地区を長期的観点から少しずつ行っていきという考えです。地震対策の面からも築25年以上の建物は震度7の地震がくれば半数以上が倒壊するものと思われます。江東区あたりの木造家屋密集地なども安全上非常に問題があります。
 これの再開発も個人の利害関係がからんで実行は不可能です。
大(大手町)丸(丸の内)有(有楽町)の再開発についてお話します。この地域は地権者の殆どが三菱地所でやりやすい駅の前で、利便性がいいことから比較的実行しやすい計画といえます。金融、マスコミの本社など事業会社が4100、昼間人口が24万人という地域です。ここで推進協議会をつくってそうとうな議論をやっています。
 たとえば工業倶楽部のような古い建物を生かす、二つのビルの間に屋根をつけて下を自由な通路空間にする、高さを揃えるというようなことが検討されています。高さについては150メートルラインと200メートルラインを決めています。(しかし出来た丸ビルは180メートルで統一はなかなか困難です)かって東京海上ビルの建設に対して、高さを100メートル以内に下げさせられたという経緯もあります。
六本木の森ビルは非常に苦労したビルだと思います。一階は通行地域で低層はマンションになっています。ここでは毛利公園という緑地も残して建物の容積率を増やすということもやっています。ですから街としては面白いところだと思います。以前からここの小さな家に住んでいた住人は新しいマンションに住めることを条件に移ったわけですが光熱費の負担が問題になるかと思います。そのために一部を貸して、その家賃であてたということも聞いています。

表参道は低層の再開発です。やったのは独学の建築家で東大名誉教授でもある安藤忠雄氏です。古い同潤会のアパートを取り壊して再開発するというもので何よりも景観が重視されるところです。ここでは街路樹の高さを上限として建設費の高い地下を利用しようとしています。地下のメリットのひとつとして地震に強いことがあげられます。新しいビルでは屋上の空調設備の占める面積を除いた20%を緑地にしなければならないという法律があります。

姉歯の問題について
 最初、これはあり得ないこと、信じ難いと思いましたが現実に起こってしまったのです。マスコミが今、これは氷山の一角といっていますがこれが問題です。建築許可を出した都が計算すると0.38だったものがEホームズが再計算すると0.58だったとか、別の人が計算すると違う値がでたりします。
 確認申請というのは文字どうり確認するだけ。つまり性善説にもとづいています。地方自治体の監査官というのは正直いって8割はめくらと同じ。正確な強度計算はできないと思います。Eホームズのような民間の検査機関は建築主事などを定年退職した人たちがやっているのが実情です。建築法規はわかっていますが構造はよくわからない人がやっています。ソフトも100種類以上あって統一がとれていません。これの解決にはマスターキイのような共通ソフトを作ればいいのですが簡単にはできないでしょう。
 さらに計算書を見ても巧妙に改ざんされていれば見抜くのは困難です。責任はとれないので役所は責任をとりません。今度問題になった大手建設会社が販売したマンションが丸投げで実態はかなり問題のある建設業者がやっていたなどということも現実です。
  鉄筋も本当にどれくらい入っているのか疑問ですしコンクリートのテストピースもすり替えがいくらでもあって信頼できません。
 保障問題で今、国がどこまでやるべきか議論になっていますが反対論も多くて非常に問題があると思います。 淡路阪神大地震後に改定された新耐震といわれる構造計算にもとずいて建てられたビルであれば地震で崩壊するようなことはまずないとおもいます。それ以前の25年以上前の設計によるビルではなかにはかなり問題のあるものが多数ふくまれていると思います。
一般的に壁の弱い建物、溶接の手抜きがあるものなどは危険です。      以上
文責 三上卓治   会場写真 橋本曜   HTML編集 山本啓一