2006年4月21日 神田雑学大学定例講座 NO308
犬の画像ご提供は harumama さん。


プロフィール

よしだ・えつか。千葉県出身。「吉田悦花のわん句にゃん句」主宰。月刊俳句誌「炎環」編集長。「豆の木」「海程」同人。読売・日本テレビ文化センター「吉田悦花のわん句にゃん句」講座講師。飯山・菜の花大使。現代俳句協会、江戸ソバリエ霞の会、レディス・雑学倶楽部、風の学校、NGO緑のサヘル、編集人ペン集団・仮面の会、各会員。


● 主宰サイト
江戸ソバリエ☆吉田悦花の俳句ファクトリー
http://touki.cocolog-nifty.com/
「吉田悦花のわん句にゃん句」大募集
http://www.clubalp.net/wanku/index.html

●関連サイト
江戸ソバリエ霞の会 http://www.redolog.net/sobalier/

ノンフィクション作家、エッセイスト。単行本デビューのきっかけとなった「日本犬」はもちろん、編集記者時代より1日1人に取材することをモットーに、これまでに、3,000人以上に取材を実践。

旺盛な好奇心のおもむくままに、ペット、人物ルポルタージュ、法学・食・労働現場・女性の生き方・がん医療・福祉・介護・環境などにも執筆ジャンルを広げ、新聞・雑誌等に記事を発表。多岐にわたる現場の生の声を蓄積、いずれも独自の視点を磨いている。大学やセミナーなどでの講義、専門学校の講師、シンポジウム等のイベントのコーディネーターなど、多方面で意欲的に活動。

日本ジャーナリスト会議(JCJ)運営委員、平和に生きる権利の確立をめざす懇談会 事務局長(代表・榎本信行弁護士)、日本ペットエキスパートアカデミー(ドッグライフアドバイザー養成講座)講師。読売・日本テレビ文化センター「備えあれば…の老犬生活」講座講師。

●主宰サイト
e‐ファクトリー 吉田悦子アーカイブス
http://homepage3.nifty.com/e-factory/
吉田悦子のブログ e‐ファクトリー
http://etsuk.cocolog-nifty.com/

● インターネット ニフティ「語ろ具」連載
「韓国ぶらり散歩 アカスリ体験」http://golog.nifty.com/archives/001389.html
「お江戸ぶらり散歩」 http://golog.nifty.com/archives/001147.html

● 主要著書
『犬がいる暮らしを詠む  ビジュアル版 わん句歳時記』
(チクマ秀版社)

『江戸ソバリエ』(マキノ出版・編)
『日本犬 血統を守るたたかい』
(新人物往来社・小学館文庫)
『老犬との幸せなつきあい方』(新星出版社)
『備えあれば…の老犬生活』(ネコ・パブリッシング)
『犬ときらめく女たち』(新人物往来社)
『全国ペット霊園ガイド』など


吉田悦花さんわたしと「わん句」

私は、もともと犬が大好きで、犬とたわむれ、俳句をたしなみ、お蕎麦の食べ歩き(江戸ソバリエ)を楽しむ、というように「犬・蕎麦・俳句」と親しみながら、ひたすら文章を綴って(著述業)暮らしてまいりました。

私は、月刊「愛犬チャンプ」創刊号より10年間にわたり、「日本犬 血統を守るたたかい」「犬がいて私がいる」などを連載。現在は、日本犬マガジン「Shi-Ba(シーバ)」に、「吉田悦子のニッポンの犬探訪記」「真・ハチ公物語」を連載中です。一方、石寒太主宰の「炎環」で俳句を学んで15年くらいになります。

「いちばん好きなものと親しみながら俳句をつくる。これが俳句上達の第一歩です。イヌたちも喜んでいます。」
このお言葉は、俳人・金子兜太さんが、私が今年1月に発刊した『犬がいる暮らしを詠む ビジュアル版 わん句歳時記』(チクマ秀版社)に寄せてくださいました。

兜太さんもご指摘くださっていますように、私は大好きな犬を俳句に詠む「わん句」を2005年1月にスタートしました。インターネット上に「吉田悦花のわん句」サイトを主宰して、広く「わん句」を募集したところ、全国からたくさんの「わん句」が寄せられました。その「わん句」から、春夏秋冬の「わん句」を厳選して、愛らしいさまざまな種類の犬や自然を含めた豊富なカラー写真とともに1冊にまとめたものが、『ビジュアル版 わん句歳時記』です。

本書の前書きに私は、「四季折々の犬のメッセージ 『わん句』は、あなたと犬が歩んだ足跡」と題して、次のように述べております。

私は、十八年間、ジョニーという犬と一緒に暮らしていました。ジョニーは私にとってなくてはならない存在、家族の一員です。ジョニーのことを思うと、あたたかな気持ちに満たされ、新たな勇気が湧いてきます。 私は今まで、いくどとなくジョニーという存在に励まされてきました。

受講生と講師 私にとって犬は、最も身近な友達。私とジョニーの間にあるもの、それは、飼う、飼われるといった単純な関係ではありません。ジョニーとは、言葉を交わさなくとも気持ちが通じ合い、お互いを実感し合う空気のような存在です。

私たち人間は、何万年も前から犬と一緒に暮らしてきました。ともすると、自然から切り離され、頭でっかちで、脆弱な生き物となりがちな人間とって、犬は自然への入口です。

犬は、私たちが忘れかけてしまっている自然や野性、人間本来のやさしさといったことを気づかせてくれる使者として、私たちに寄り添うようになったのかもしれない、と思うこともあります。

犬とともに毎日、朝に夕に散歩する中で、さまざまな自然とふれあいます。空の色、風の匂い、雨の音、星の輝きなど、四季折々の様相があります。犬と歩む途中で心にとまった風景、犬とのふれあい、犬への想い、思いがけない発見、思わず吹き出してしまうようなユニークな犬の様子、豊かな犬の表情など、犬のいる暮らしのヒトコマ、ヒトコマを季節感豊かに俳句で表現してみませんか?

四季折々の愛犬へのメッセージ、それが「わん句」です。豊かな自然と犬が織りなす「わん句」は、あなたと犬が歩んだ足跡といえるでしょう。

現在、私は、インターネット上で「吉田悦花のわん句」というサイトを主宰しています。サイト上では、多くの方が、愛犬との生活を「わん句」にして応募してくださっています。

あなたも、大好きな犬との暮らしを「わん句」にしてみましょう。

といっても、「えー、いきなり、どうやって作ればいいの?」「なんだか難しそう」と思われるかしれませんね。でも、大丈夫。初めて作るのですから、たとえ下手であろうと、ちょっと変な句でもよろしいのです。誰でも、最初は初心者ですから。

まず、「愛犬と一緒に俳句入門」を読んでいただければ、「わん句」を作るために必要なことは、ほとんど身につきます。初心者はもちろんですが、経験者も俳句のレベルアップに役立つうんちくが、たくさん散りばめられています。ステップ1から段階を追ってご案内してまいりますから、あなたのペースに合わせて進んでください。

「わん句」を出発点に、あなたと愛犬の生活がより楽しく、いきいきと充実したものになることを心より願っております。

わん句の本 このように私は「わん句」を募集する一方で、webマガジン「パブリデイ」の「日めくり犬の句猫の句」で、毎日1句ずつ更新しております。さらに、月刊「psiko(プシコ)」
(ポプラ社http://www.psiko.jp/)で、「犬猫歳時記」(写真・岩合光昭)で犬の句をとりあげています。

私のブログ「江戸ソバリエ☆吉田悦花の俳句ファクトリー」では、「わん句カレンダー」と称して、「1日わん句」、つまり、大好きな犬を詠んだ句を毎日1句ずつご紹介しております。

「わん句カフェ」(句会)も各所で開催しています。高品質かつハイセンスなペットグッズを送り出されている「BIRDE バーディ」の直営店「BIRDIE And b.c.d.」(目黒区青葉台)のドッグカフェでも「わん句カフェ」を実施、おかげさまで、好評を得ました。

「わん句」って何


犬を愛し、好んで犬を俳句に詠んだ著名な俳人や作家などは少なくありません。いずれも、そこに犬がいて人がいる、ごく自然の気どりのない日常が表現されています。お互いに空気のような存在になっている犬と人との間には、社会の緊張から解かれた、おおらかであたたかい関係があります。のほほ〜とした風情すら漂っています。では、実際に、犬を詠んださまざまな「わん句」を見ていきましょう(『ビジュアル版 わん句歳時記』より)。





「春草」は、萌え出ずる香り高い草のこと。「芸知らず」「跳ねるのみ」という表現から、全身に春を感じて、ただひたすら跳ね回り、純粋に一途に春を満喫する犬の姿と歓喜が伝わります。「春草は足の短き犬に萌ゆ  中村草田男」は、ミニチュアダックスフンドのような「足の短き犬」をやさしく包み込むように、緑濃く萌える「春草」。




「万緑」とは、草木の緑が日ごとに増えて、見渡すかぎり緑があふれることをいいます。新緑より広がりを感じます。中村草田男(なかむらくさたお)の「万緑の中や吾子の歯生え初むる(ばんりょくのなかやあこのははえそむる)」という句がきっかけとなり、新たな季語として広く用いられました。活力に満ちた「万緑」を「わくがごとしや」ととらえ、そこに犬の吠え声を共鳴させて、まさに湧き上がるような色と声を感じるダイナミックな句です。




「虚無僧」とは、袈裟(けさ)を付け、深い編み笠をかぶり、尺八を吹きながら諸国を回って修行する僧のこと。編み笠は、顏をすっぽり覆って、その表情を隠してしまいますから、犬にしてみれば、なんとも得たいの知れない、怪しいというか恐ろしい物体と映るかもしれません。「桐の花」は、高さ10〜15メートルになる高木の枝の先に、長さ5、6センチの薄むらさき色の花をたくさん咲かせる、高貴なイメージの花。遠くからでもよく目立ちます。




「奈良の横町」あたりでは、「柿」などはなるにまかせていたのでしょうか。熟した「柿」が、ぼたっと落ちると、驚いた犬が「なにごとか」と吠えるのです。あるいは、「柿」が「落ち」ることに関係なく、犬は吠えているのかもしれません。いずれにしても、のんびりとした古都「奈良」の雰囲気がよく伝わってきます。柿が大好きだった子規には、「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」という有名な句もあります。




「土堤」を降りて、「枯野」にまぎれてゆく犬。肺結核の療養中だった作者は、病床からその姿をじっと眺めていたのでしょう。「土堤を外れ」、さらに「枯野」へ向かう犬の姿を目で追っています。「枯野の犬となりゆけり」という表現に切迫したものが感じられ、作者の孤独な内面を映した心象句というべきものになっています。「寒き浜犬嗅ぎあひて別れ去る」も誓子の句です。

●「わん句」入選作より



暑くもなく寒くもない、春の朝の寝心地は格別なもの。いつまでも、うつらうつらして、なかなか寝床を離れられません。かたわらの愛犬もまだ夢心地。一体どんな夢を見ているのか。お散歩の途中で逢う、大好きなあのコのことかな。「朝寝」が春の季語。




5月5日は、男子の節句。「初節句」のお祝いをした子が、「犬の尾を枕に」す
やすや眠っているのです。安心しきって寝息を立てている子を、やさしく見守る犬のまなざし。兄貴分として、子守りをしてくれているのですね。なんて幸せな光景でしょう。ドイツには、情操教育のためにも「子供が生まれたら、犬を飼いなさい」ということわざがあるほど。犬と幼子をあたたかく包む家族の情愛も感じられます。




「良夜」は、陰暦八月十五日、十五夜、中秋の月のこと。この夜の月は、1年中で最も澄んで美しいとされています。穂芒を飾り、芋や団子などを供えて月を祭ります。虫の音や夜露や涼風など、あたりの風物も澄み渡り、心があらわれるような「良夜」に、まだ眼の開かない「犬の仔」の兄弟が寄り添って睡っています。「重なり睡る」が、様子が目に浮かぶようで、とてもよいですね。ところで、「十三夜」は、陰暦九月十三夜の月のこと。この日は、十五夜の名月から1ヵ月後の月であることから「後(のち)の月」ともいいます。




愛犬と仲良く並んで「日向ぼこ」。それだけで十分満ちたりた風景ですが、「無芸大食」とはよくいったもの。一緒に暮らす愛犬は、自分の鏡でもあります。寝て食べて散歩して、そんなシンプルな犬の生活への憧憬すら感じられます。

「わん句」を詠もう

いかがですか? あなたにも実際に「わん句」を詠んでみませんか? ということで、実際にわん句会を行ないました。会場に集まってくださったみなさんは、俳句は初めてという方ばかり。でも、俳句を難しそうと思っていた方も、なにやら面白そうと、自然に積極的に参加してくださり、数多くの力作が寄せられました。当日の「わん句会」より、主な「わん句」をご紹介いたします。



★提出句は吉田悦花が推敲したものをアップしている場合もあります。(敬称略)


四季折々の愛犬へのメッセージ。それが「わん句」です。あなたも愛犬との日日を「わん句」にしてみませんか?「わん句」をきっかけに、五七五の俳句の世界に親しんでいたただけますと幸いです。ただいま、「吉田悦花のわん句にゃん句」大募集中です。http://www.clubalp.net/wanku/index.html

文責 吉田 悦花
写真撮影 橋本 曜
HTML制作 和田 節子