神田雑学大学 平成18年9月15日 講座No328

へび博士の大巷談U

講師 高田 榮一 


目 次

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1.はじめに

2.大宅壮一との不思議な再会のドラマ

3.感動とは何か

4.猛獣ライオンと暮らしてみれば

5.かめがうさぎに勝ったホントの理由

6.裸婦ばかり描く画家の本音

7.ディズニーランド一人勝ちの秘密

8.質疑応答



1.はじめに

 こんばんは。いつもの顔の高田です。今吉田さんからテレビ出演の話が出ましたが、実は私6月、7月、8月とテレビ4局から追われていました。テレビ局ってのは我侭でして、勝手気ままなんです。この前も「小散歩」という番組で何時間も打ち合わせして撮影し、なんと放映されたのは数分、かないませんねー。かつて私はレギュラー番組を2本持っていました。黒柳徹子さんとのおしゃべりでツークールやりました。それから日本テレビの「特種登場」という番組もレギュラーになってあちこち歩いた思い出があります。最近だいぶテレビにご無沙汰していたら、日刊現代が取材に来て、それがなんと「あの先生は今どうしている」というテーマなんです。それじゃ僕はもう過去の人間なのかって怒ってやったんです。

 俺は少しは先細ったが、現役なんだといってやりました。そんないきさつもあって、まあいまだにテレビは私を見捨てずと思い、我慢してお付き合いしています。
テレビに出ると意外と顔を知られるのに驚きます。いつかもね、私が道を歩いていたら、あるこちらにおられるスリランカかなんかの外人がです、私に「ご無沙汰しています」なんていうのです。出合ったことがない人なんです。そしたら「あっそうだ。テレビの先生だ。」なんていっているのです。こういうこともあるので今更悪いことは出来ません。すぐ指名手配になってしまいますから。

2.大宅壮一との不思議な再会のドラマ

 八重洲口に大阪の大手百貨店の大丸百貨店が進出したのが昭和29年の1月です。それから関西百貨店の東京進出が始まったわけです。有名な有楽町のそごう。あるいは数寄屋橋の阪急、あるいは阪神、あるいは京都のまるぶつ、などが次々と東京に進出してきました。結局大阪も人口的に行き詰ってきた。飽和状態になった関係があって、揃って東京へ進出を図ったのです。では東京勢は黙ってそれを見ていたのか。そこで東京の百貨店は、三越にしろ、高島屋にしろ、松屋にしろ、松坂屋にしろ、大手は全部増床期に入ったのです。

 例えば、上野の松坂屋の新館が出来たのもそうだし、三越もあちこち拡げたし、高島屋も日生とタイアップして増えたし、それが戦後復興期の百貨店の動きです。
 こうなると起きてきた問題は、小売商への圧迫という問題です。これは政治問題化して、国会に百貨店法というものが提出されました。どういうものかというと、百貨店の増床とか進出とかいうものを出来るだけ抑えて、小売商を助けようという法律が出てきたのです。

 ちょうど、私は百貨店の業界新聞を発行していましてね、小説家になった椎名誠が私の部下で仕事をしていた時代、それは昭和30年ころだったと思いますが、この新聞は百貨店側に立っているわけですから、百貨店法反対のキャンペーンを張らなければならない。それで当時有名な評論家を使おうということで、たまたま大宅壮一と知り合いの人がいたもんですから、お願いして、杉並の大宅邸へ朝記事をいただきにお伺いしたわけです。当時売れっ子の大宅さんですから私みたいなチンピラ記者には普通合わないんです。それが知り合いの口ききのせいで会ってくれたのです。

 しかし徹夜でおそらく原稿を書いていたのでしょう。縁側の籐椅子に眠そうな顔してドテラ姿で現れて、めんどくせー質問だなという顔をしながら、それでも百貨店法反対についてすごくいいことを言ってくれたのです。どういうことかと言うと百貨店が力をつけてきたのは「恋愛のこつ」を使うからですよ。と言われたのです。つまり小売商は伝統に甘えるだけでお客さんにサービスをしていなかった。百貨店は恋愛のこつで、お客様にサービスしていると。

 大宅さんはそういうキャッチフレーズがうまいのです。早速それを使って新聞のトップを飾り、百貨店のお偉いさんからえらい褒められたのです。天下の大宅壮一が百貨店法には無理があると言ってくれているんですから。しかし向こうは大物、こちらはチンピラの新聞記者でしょう。こちらは辞を低くして行って、大宅さんはふんぞり返っていましたね。まあそういうことで一つの新聞記事を作ることが出来たのです。

 それで終われば、別になんでもないのですが、これが話しになるのは、それから10ヶ月くらいたって、週刊文春から電話がかかって来まして「大宅対談に是非先生出てください。」ということからなんです。当時大宅さんは週刊文春で「大宅対談」というシリーズをやっていましてね、社会の著名人たちをお客様に呼んで、質問して面白おかしく記事を作っていたのです。まさか私のところなんかへ来るとは予想もしていないのに、私に出てくれというのです。

 私一瞬迷ったんです。最初は私が頭下げ下げ大宅さんのところに行って取材したわけです。今度は私が上座に座らなくちゃいけませんね。もし大宅壮一が自分のことを覚えていたらバツが悪いと思いますよ。わたしもバツが悪いです。動物学でアナフィラキシーショックという言葉があります。アレルギーショックの凄く強いやつをアナフィラキシーショックといって、例えば毒蛇に噛まれて血清を打ちますね。そのあとまた噛まれて血清を打つと身体の中に血清抗体が出来てしまっていて、そこに血清が入るとすごい大きな死に至るようなショックが起きることがあるのです。今でも血清を打つ時はこれを予防するために、何年何月何日に血清を打ったという証明書をくれます。

 そういうショックが私の頭に浮かんじゃったんですよね。わたしはまだいいとして大宅壮一も具合悪いでしょう。威張りくさって、「恋愛のこつ」なんて言ったのが、今度はどうぞどうぞという立場になったんですから。わたしは運を天に任せて前のことには一切触れないで迎えの車に乗りました。もうばれたらしょうがない。なるようになれという気分でした。そして日本橋のとある料亭に連れて行かれたのです。

 部屋に入ったら入口に大宅さんが立っているのです。わたしの顔をみるなり「どうぞどうぞ奥の方へ」なんていって、大変低姿勢なんです。まあばれたら仕方ないと覚悟を決めて床の間の前の座布団に座ったわけです。覚えていないです。まあ考えてみれば忙しい大宅さんがチンピラ記者の数分間のインタビューなんか覚えているはずがないですよね。でもわたしにとっては覚えていないということが分ったあとの開放感は大きかったですね。それから一週間後週刊文春が出たのです。私の写真は入っているし、私が動物もそうなんだから、人間も自然にもどって一夫多妻制をやれなんていう話も出ちゃいました。つまり精力のある人間も一人、ない人間も一人なんては悪平等なんじゃないかと、これは種の保存を考えた時、動物の世界では当たり前のことで、理にかなっている話なのです。

 人間は人間の都合で制度を作っちゃって、あたかも一夫一婦が真理みたいな常識を持っている人がいますね。実際は地球人口の半分くらいは一婦多妻の社会なんですよね。そんな話を私、大宅さんの前でやっちゃったんです。また大宅さんがそういう話が好きでね、「ところでへびはどうやってやるんですか」なんて質問から始まったでしょう?聞かれれば言わないわけにもいかない。「縄なりに捩れて、先っぽが二つに分かれているペニスをねじ込む。ましてペニスにはとげとげが生えているなんていう話がそのまま載っているんですよ。
 大宅さんはそういう下ネタの質問が好きでね、結局私は人間論まで語っちゃったから、この出会いが、私がスケベ人間なんてよばれるきっかけになったのです。

3.感動とは何か

 これは皆さんご承知と思いますが、数年前「6000人の命のビザ」という本が、朝日ソノラマ社から出てベストセラーになりました。

 バルト海の沿岸のリトアニアという国にカウナスという町があります。そこの領事館にある朝、何百人というユダヤ人が押しかけてきたのです。そこの領事館にいた領事が杉原千畝さんなのです。なんだろうと思って代表に聞いたら、通過ビザを是非出してくれというんです。そうすればシベリア鉄道を通って日本を通過してどこかに逃げられる、それでないと明日の命も分らない。

 そのユダヤ人達はポーランドにいてナチスに追われ、つかまれば収容所に入れられて殺されてしまうのです。必死の思いで来ているわけです。杉原さんは勿論ビザは人道的にも出したいけれど、外務省の訓令を得なければならない。そして日本の外務省にユダヤ人に対してビザを発行することの許可を求めたのです。ところが何度意見を求めても外務省の答えは拒否だったのです。その時の外務大臣は誰だと思います?松岡洋右なんですよ。あのドイツの大好きな人です。ですからドイツから逃げようとしているユダヤ人にビザを発行しようというのは何事というわけで、何度お願いを出しても拒否、拒否でした。

 杉原さんは偉かったですね。外交文書というものは本省が拒否したものであっても、出先外交官が発行すれば有効になってしまいます。これは国際的な流れなのです。もしそれが本省の意向で無効になったりしたらその国の外交信用は全くゼロになってしまいますから。だから杉原さんは独断でビザを発行したのです。6000人という意味は家族を含めると6000人になったのです。

 ところがあまりビザを出されると、当時はロシアもリトアニアに進駐して行こうと言う時代でしたから、あまりロシアもドイツともめたくないんですね。ドイツがロシアに攻め込む前の話ですから。それでカウナスの領事館を日本は撤去してくれとロシアは言ってきました。それで時間がない。その時間がない中で6000人のビザを書いたわけです。駅の発車ベルがなっている合間にもビザを書いたと言われます。すごい美談ですよね。これだけでも感動しますよね。
 その後日談があるのです。その時助けられたユダヤ人数人がもしこのビザで私たちが無事に助かったら杉原さん、あなたをどんなことがあっても探し出して私たちはあなたに感謝の意を捧げます。と言ったのです。

 そういうことがあって、その後戦争は日本の負けで終わったですね。杉原さんは敵国の外交官だということで、捕まって2年かかって舞鶴に戻ってきたのです。敗戦国の外交官だし、ビザを発行したりして色々問題を起して目立っていたのです。舞鶴について、それから外務省に行って帰朝報告をしたら、突然辞めてくれという辞令です。そうでしょう。外務省訓令に違反しているんですから、外務省の立場としてはそういうことになります。それで杉原さんは免官されて、そして逗子の田舎に住んだのです。だんだん杉原さんの名前も消えてしまった。

 れから1年か2年たってから、見知らぬ外国人が逗子の陋屋を訪ねてきたのです。私はあなたに助けられたユダヤ人です。その証拠はと言って杉原さんの書いてくれたビザを出して見せたんです。それで杉原さんも分って涙の再会になりました。そしたらすぐイスラエル大使館から通知がありまして是非御出席いただきたい。つまり杉原さんへ、国家を守った素晴らしい人というイスラエルの国家賞をイスラエル大使館は出したのです。このどんなことがあっても探し出して顕彰するといったこのユダヤ人の想い、その人が実際に戦後探し出して証拠をもって訪ねて来た、これに私は感動しますね。
 その本が朝日ソノラマ社から出たんですが、なんとその本を企画して発行に導いたのが私なのです。だから私はこの話は余計身にしみて感動するのです。

 杉原さんの奥さんが幸子さんというのです。この方が歌人なんです。実は私もプロの歌人なものですから、ある歌人の集まりでたまたま幸子さんと席が隣だった。で話をしているうちにこの話を伺ったのです。私は、これは凄い話だと感動してすぐその企画を朝日ソノラマ社に持ち込んだのです。これはベストセラーになったんです。でも読者の多くの反応を見ますとユダヤ人を助けてビザを出したというところに感動して葉書なんかが来るんです。しかしユダヤ人が戦後杉原さんを顕彰したというところにはあまり反応がないんです。それで私はこれが後にテレビ化されたとき、テレビのプロデューサーに言ったんです。多くの人を助けたということが偉いということは分る。しかしそういう話は他にも多々ある。感動というのはもっと深いものだろう。助けられた人が逆に苦労して探し出して顕彰したという話があってこの話の感動に深みが出るんだと。

 これにはもう一つエピソードがあるのです。本がベストセラーになって、外務省はバツが悪いんですよ。せっかくこれだけの美談の人をくびにしてしまったのですから。訓令違反で。それで幸子夫人を外務省にわざわざお招きして外務省としても遺憾だった、謝罪すると公式にやったんですね。その時の政務次官誰だと思います?鈴木宗男ですよ。そういうわけで杉原さんは名誉回復したんです。私は鈴木宗男も買っているのです。ロジカルな人間ではないかもしれないが感動する人間なんです。

4.猛獣ライオンと暮らしてみれば

 単にライオンの飼い方という話しではないのです。ライオンは世界的に百獣の王と言われますよね。なぜそう呼ばれるのか。たとえばシンガポールという地名がありますが、シンガというのはサンスクリット語でライオンという意味でシンガポールはライオンの港という意味です。ですからあそこには海岸にライオンの像がありますね。トラファルガー広場にも大きなライオン像がありますね。三越にもライオン像がありますよね。世界的にライオンは王様というイメージが認知されています。

 私は学生に動物学を教えているんですが、学生が「先生、虎とライオンが戦えばどっちが強いですか」なんて聞いてくるのです。答えようがないですが、そこは教える立場ではロジカルに説明しなきゃならん。どちらが強いかの答えのキーワードはなんだと言うのです。虎には縞がある。何故か。ライオンには縞がない。何故か。
 実際にアフリカで見て感じるのは、ライオンは青天井のサバンナのなかで家族を営んでいるのです。ライオンの家族はファミリーといわないでプライドと言うのですが、いずれにしても廻りは敵だらけですよね。ハイエナがいたり豹がいたりサイがいたりして、そのなかで悠々と家族と生活しています。ところが虎の縞模様というのは林に潜んでいなければならないという潜みとかひるみがあるからあの迷彩が出来たのです。
 それから穴です。虎穴に入らずんば虎子を得ずというでしょう。虎は暗闇の穴に隠れて生活しているのです。

 ライオンはあっけらかんとおおらか。平原で昼寝を平気でしている。そういう陽性のライオンとなんかこちょこちょして不安がっている虎とが戦ったら当然ライオンが勝つに決まっているじゃないですか。と言うのです。
 私は実は昭和40年の年賀状に今配った写真を使ったのですが、その当時私はライオンと暮らしていたのです。わたしはライオンと肌身触れて暮らした経験があるからライオンの話が出来るのです。このライオンは雄で10ヶ月、なんと立ちあがって私の肩に手をかけて私の顔を舐めずりまわすのです。手の太さ凄いですよ。相撲取りの手みたいです。それにね、一筋なんです。私になついたら一辺倒になつきます。実は私はピューマも飼った事があります。これは油断できないです。アフリカの豹も油断ならないです。隙があったら噛み付いてきたりします。ライオンは、迫力はありますよ。しかし味方にしたらとことん懐いてくれる。

 当時、私は朝早く上野公園を首輪をつけて散歩するのです。ライオンはのっしのっしと行きますよね。自動車がブブーってクラクション鳴らしますよね。ライオンはどう反応するか。全然、無反応。目玉ぴくりとも動かさない。わが道を行くのです。それから犬がキャンキャン鳴くんですよ。ライオンはそれに対してしっぽも目玉もぴくとも動かさない。のっしのっしと歩いていく。ライオンてやつは凄いなと思いましたね。そして忍ばずの池の周りを行くのですが、植え込みがあります。普通だったら植え込みを避けて迂回して歩きますよね。ライオンはまっすぐ行くのです。とっとと植え込みにまっすぐ入っていくのです。これは帝王学を子供の頃から身に着けているなと思いましたね。小ざかしいことをしないのです。堂々としている。アフリカでプライドを営んで子育てしている気持ちが分ったですね。そして世界中でライオンが百獣の王と言われている理由がそこにあったんだなあと思い至りましたね。

 ところがアフリカに実際に行ったった時、これをいささか訂正せざるを得ないライオンの実態を見ましたね。ライオンが王者であるということはそういうことから来ているのではないと思ったのです。 もちろんアフリカでは危ないからサファリの車からは降りられません。窓から見ているのです。そしたらライオンのやつセックスが好きなんですね。それで珍しいと言うのでばちばち写真を撮るではないですか。ところがライオンは何と20分おきにやるんですよ。すぐフィルムがなくなってしまいましたよ。そして終わった直後メスが振り向きざまオスの喉のところに腕をふって爪を立てるのです。ライオンのたてがみは雌よけだなと発見したのですね。あの勇ましいたてがみもなんのことはない、女房の暴力を防ぐ為にあるんだということを発見したんですね。まあライオンが王者だと言うのもどうも20分おきに出来る精力のせいじゃないかと思ってしまいましたね。同じ相手で20分おきですからね。

 さっきプライドといいましたが、これには雄が2匹とか雌が3匹とかいてそれぞれの子供がいるのですけれど、時々他の強い雄に乗っ取られてしまうことがあるのです。この乗っ取った雄が一番最初にする仕事はなんだと思いますか?ここが動物学なのです。一番最初に子供を全て食い殺してしまうのです。凄い残酷さです。何故殺すか?つまり子供がいてお乳を飲ませていると雌が受胎しないのです。ですから子供を殺してしまうのです。すると雌に受胎能力が戻って、それで初めて20分おきにやって、子種を植え付けるというわけなのです。私は同じことを猫で経験しました。雄猫が新たにやってきて、ライバルだった猫の子供を殺すのです。食いちぎって殺すのです。残酷ですよ。
 動物園の3種の神器と言って、ライオン、象、キリンが必須なのです。ライオンがない動物園はやっていけません。ライオンはアフリカとインドの西の端のほうにいるくらいで新大陸にはいません。ヨーロッパにはいたのです。ローマ時代にはライオン部隊なんかもいたのです。

5.かめがうさぎに勝ったホントの理由

 うさぎとカメの競争の話、これは日本の話ではありません。イソップ童話から来ているのです。この話は簡単な童話の作り話ではないと言う話を申し上げたい。実は私がライオンを飼っていた時代、NHKの幼児向け番組、3チャンネルからカメの色々な風景を理科的に撮りたいので協力して欲しいという申し入れがあったのです。当時私は研究の為カメを200匹も飼っていたのです。NHKが来た時つい口が滑ってしまったんです。「どうですか、うさぎとカメの競争をやりませんか」とつい言ってしまったら「それ乗った」と言われてしまって、話が実現へ向かったのですが、始まってから私は悩んでしまいました。

 なぜならウサギとカメが競争してカメが勝つことであの童話が成立しているのです。それが童話として子供の精神構造形成に役立っているわけでしょう。それをもしウサギが勝っちゃったら長い間の寓話が総崩れではないですか。これは文化を狂わせてしまうかもしれないと私は悩んだのです。しかし悩んだのですが私には動物学的に見てロジカルにカメが勝つという思いが私にはあった。あったから提案したのですから。しかしそうは言っても今まで実験したことはないのですから、これは失敗したら偉いことになると悩んだのです。

 そして東京の西方町にある阿部幼稚園を競争の場に借りて、子供達がずっと取り巻いて通路を作って、そこにウサギとカメを放そうということにしました。ウサギはたまたま幼稚園が飼っていたうさぎです。そして両方放しました。ウサギはすごく早いのです。どんどん行ってしまうのです。これは困ったなーと思っていますと、うさぎの奴3mくらいいったらパタッと横になって鼻をぴくぴくさせながら寝ちゃったんですね。ところがカメはたったったったと進んで結局カメが勝っちゃったんです。

 これは偶然の結果ではないんです。私が考えた動物学の結果通りなのです。つまりアフリカあたりで観察していますと、弱い草食獣は危険が迫ったと思うともの凄い勢いで逃げます。ところがいつまでもは走れないのです。これは弱い草食獣の性なのです。一時パッと走りますが必ず泊まって振り返る、それで敵がいないと、なんだ来なかったのかとそこでじっとして草を食べるというのが草食獣の全体の行動なんです。うさぎもそうなんです。なにか不安で一時走りますが、子供達に敵意もないし、「なんだなんでもない」ところっと横になってしまった。私はイソップは実によく動物の行動を観察していたんだなあと感心しているのです。これはアフリカで草食獣見ているとみんなそうです。シマウマなんかも走ってもすぐ立ち止まって様子を見ます。

6.裸婦ばかり描く画家の本音

 友人に年齢的に先輩の絵描きさんがいましてこの前銀座で裸婦像ばかりのデッサンの個展を開きました。この人は裸婦を書くのが好きなんです。私はあるとき「あんたは何で女の裸ばかり描くのか」と聞いたんです。彼はいいことを言いましたね。私の論理とピッタリあったんです。こういうんです。「実は私は絵描きだから身体を描く為には男性も描きたい、ところが男の身体は全然定まらない。男の身体くらい変化が激しいものはない。環境にたちまち影響されるのが男の身体だ」と言うのです。

 たしかにちょっとスポーツやればスポーツタイプ、柔道やれば柔道タイプ、水泳をやればそういう身体とたちまち環境に影響されて体型が変わるのです。ところは女性の身体はプロレスラーの身体も水泳の選手も走るアスリートもシェルエットは全く変わらないです。女性は裸になると楽器のギターのようにどの女性も変わらぬ体型をしていますね。女性の身体は安定しているのです。絵描きさんはそれを言っているのです。男のモデル選びは大変だと言うのです。

 つまりね、女の強さと色々いわれますが、環境の変化に強いと言うのが女の強さなんではないですかね。男は環境の変化に弱いから戦争をやってみたり、大航海時代を作ってみたり、ふっと気がつくと腕力なんて結局はたいしたことをやっていないということに気付くのです。女の強さと言うのは4つの大自然から成り立っていると言うのです。生理、妊娠、出産、哺乳、これは動物と同じです。なぜこれが大自然かというと、これ等は女自身もコントロールつかないことなんですから。この大自然の力によって女の身体は安定したシュリエットを持つのです。これは友人の画家の話ではないですよ。私が彼の話を聞いて、自分と同じ意見を持っているんだなと感じて思ったことです。

7.ディズニーランド一人勝ちの秘密

 私はパリは行っていませんが千葉のディズニーランドとかカリフォル二アのディズニーランドあるいはフロリダのディズニーワールドとか一応行きました。それは観光ではなくてディズニーランドの秘密は一体なんだろうということで行ったのです。私はその後、千葉のディズニーランドのスタッフになって建設に携わったある東大出の女性がいるのですが、その人の書いた本を読んでなるほどディズニーは凄いということを感じました。

 ひとつはディズニーが育ったアメリカのなんとかという町はいつも風が強く埃だらけの町だったそうです。そこで育ったディズニーはいつも風が無くてほこりのないところに行きたいという念願で育ったのです。ですから作られたディズニーランドのきれいさ、これはどこの場所でも全部同じです。徹底してきれいにする、これが大前提です。
   それともうひとつ、目先の快楽を追うのではない、本当のテーマアパークの夢を徹底して追うと言うことです。ディズニーは映画も作りました。映画の反応を見ながらお客さんになにが一番受けるのかを研究して、それがおとぎ話の世界だと言うことに行き着いたのです。ピーターパンの世界だとかは子供の頃に読んだのですが今でも懐かしい。

 私たち大人の中にも子供性というのは常にあるのです。ディズニーはこれに気付いた。これをテーマにしよう。だからおとぎ話が全部テーマなのです。あそこは変な観覧車のような皮膚感覚の快感を与えるようなことはやってないのです。電車に乗ると本当におとぎの国に行った様になるのです。どの大人にも子供性というのは必ずある。しかもテーマが何百年たっても古くならないんだから凄いですね。いっぽう観覧車で競争すると大きくして大きくして競争はきりがないのです。

 実は私東京ディズニーランドの機械場にいる技術者に友達がいるんです。表部隊の裏側の機械的な構造は凄いらしいです。池の水を循環させたり象を動かしたり凄いんですが、ところが機械的なものは一切誰にも見せない、それから売店に細かいものが売っていますよね。なくなれば補給しなければならない。日本の遊園地だったらトラックで持ってきて店の前に横付けしてというころですがディズニーはそういうことは一切しない。そういう裏側は見せない。徹底振りはすごい。

 東京に進出する時も喧々諤々の議論があって進出が中止になりそうだったこともある。それは料理です。日本的なものは絶対出したくない。これはディスニーの方針なんだそうです。日本の三井不動産なんかは日本でやるんだから蕎麦とかうどんとか出したいといっても、それは一切駄目だ、そんなことをするなら引き上げるとそこまで徹底していたそうです。まあ料理に関しては最後は妥協してもらったそうですが。いずれにしてもアメリカンドリームというか心に持っている夢を絶対に崩さないという徹底したコンセプトは見上げたものです。

 日本の遊園地は汚い、なにか嘘だらけです。ディズニーではおとぎ電車が走っていますね。あのレールはおもちゃのレールではないのです。本当に国鉄のレールと同じですからね。全部本物志向です。プリントベニャという建材がありますね。あれが全然使われていない。材木は材木で本物を使う。ベニヤはベニヤで本物を使うと徹底しています。
 それと同じ形が日本にもあるのです。それが今までの古い古い老舗の百貨店の経営なのです。百貨店の経営と言うのはお客さんに絶対嘘をつかない。お客さんを裏切らない。右といったらあくまで右のものしか売りません。高い安いは別です。ディスにーの世界に良く似ているのです。

 もうひとつ剣豪小説をお読みになると分るのですが、剣豪は後の先ということをするのです。自分から切り込まない。かならず相手から切り込ませる。そのことによってこいつの剣筋を見定める。相手の出方を見て後から切りこむのだけれど結局は先に相手を切ってしまう。大丸百貨店では社長室に「先義後利」という額がかかっているのです。お店の古い開祖が書いた額です。義を先にして利益は後にしろという意味です。なるほどと思いますね。三越では「現金掛け値無し」これも徹底していますね。三越の近代百貨店としての道を開いたのは日比翁助と言う方で、百獣の王と言われて誰も不思議がらないデパートを作った人です。

 ある時東北に旅行したのです。お土産に三越で虎屋の羊羹を買って青森のある家に持っていったのです。そうしたら家族中総出で現れましてお土産を褒めるんです。たかが羊羹の手土産です。何事かと思ったのです。そして聞いたら青森では子供が成長する時に「おまえ三越や虎屋からお土産もらえるような人間になれよ」と言われてきたんだそうです。そこへ私が三越で買った虎屋の羊羹をもって行ったんです。そこまでの信用があったんですね。そこまで信用があるのは長い間の徹底があったからです。こういう信用を高めるには徹底したこだわりが必要なんですね。ディズニーランドではレールやベニヤだけではありません。トイレにはいってもぴかぴか全然汚れていません。道には紙くず一つ落ちていない。お客様にいつも見られているんだと言う受身の姿勢が大事なんですね。

8.質疑応答

質問:ハーレムと言うのは雄が一匹に雌が何匹もいてハーレムだと思うのですが、さっきの20分おきなのですが一匹のメスとだけいたすというのはハーレムの趣旨に合わないようなきがしますが?
答え:ライオンはハーレムでなくてプライドという家族を構成します。雄も複数いるのです。2匹とか。かたや雌も複数いて5匹とかいます。それが一つのファミリーです。私が見ている限りでは何故だか分らないのですが同じ雌に20分おきに乗っていますね。
 こういう行動は動物学では面白いですよ。例えば何故ネズミが増えるのか、これには秘密があるのです。ネズミは20分おきよりもっと多いかもしれない。年中乗っています。ところがネズミはすごいシステムを持っているのです。雄が射精しますね。そうすると余分な精液が雌の膣を蓋しちゃうのです。これを動物学では膣栓と言うんです。他からはもう精子が来ないようにしてしまうわけです。

質問:ディズニーランドではどうやって仕入れ品を納入するのですか?
答え:別の入り口から繋がる地下から納品されます。

質問:ライオンはメスが狩に出る。雄は寝ているというのは本当らしいんですがこの分担はどうなっているんですか?
答え:今の話は、私は結婚式でするのです。ライオンの亭主と言う話をします。ライオンの場合確かに餌をとってくるのは雌なんです。雄はほとんど餌捕りをやっていません。じゃ雄は何をしているか。雄はそこに存在することによって敵が近づかないのです。ですから私は結婚式でいうのです。亭主を働かせるな。スーパーへ行け洗濯屋へ行けなどとこき使っていると家が敵に襲われてしまいますよ。亭主には家にいてもらえば良いんだ。そうすれば泥棒も空き巣も来ない、これライオンが教えてくれるのです。ルックスデンジャラスと言うんですがそう見える雄がでんといてくれることが大事なのです。大きさも関係しますね。アフリカでは象が王者です。その象もライオンには近づかない。ライオンも象に近づかないですがね。

おわり
文責: 臼井 良雄
講座企画・運営:吉田源司 会場写真撮影:橋本 曜 HTML制作:大野 令治