平成18年12月8日
神田雑学大学定例講座NO339



「パネルシアター落語」





講師 大空メイ

元日本航空国際線スチュアーデス




講師の大空メイさん はじめに
今回は二回目です。第一回目は昨年9月30日でした。その時習志野の袖ヶ浦小学校の校長先生がお見えになって、そちらの4年生と5年生のクラスに呼んでくださったのが昨年の今日。12月8日でした。ですから今日は私にとって記念日なのです。こちらに そのときの感想文があります。子供たちがどれほど喜んでくれたか 後で読んでください。今まで落語に興味が無かったけど、これからは落語を見たいとか、自分も創作活動をしたいとか、参考になることがたくさん書いてございます。

落語というのは英語に直すとシッダンコメディーといいますが、今日私は座っていません。それは何故かと言いますと、このようなパネルを使ってするからなのです。このパネルというのは どういうものかといいますとこの様な特殊な布に、特殊な紙に自分で絵を描きまして、色付けをして その紙をこのパネルに置きながら話をしていくものです。

今日は最初に「転失気」という古典落語を英語でいたしますが、その前にこのパネルシアターでどのようなこと出来るかという紹介をちょっとさせて戴きます。昨年もいたしましたが・・・・デパートでおじいさんがエスカレーターにのっておりました。すると、突然後ろからおじいさんのベルトにつかまる人が居るのです。びっくりしたおじいさん、あわてて後ろを振り向きますと場内のアナウンスが「皆様、デパートでエスカレータにお乗りの節は、ベルトにおつかまりください」。

まくら
それとか、今日の「てんしき」という話は知ったかぶりをする和尚さんの話ですが、知ったかぶりをする人は周りにも結構いるものです。或る時、二人のおばさんが美術館に行きました。するとこちらの左側の女性が絵を見て「あっ、この絵知っている。これ、セザンヌの絵でしょう?」といいますと、こちらの女性(註:右側)が「いいえ、それはゴッホのヒマワリでございましょう」で、又次の絵のところでこんな絵(註:取り替える)がございまして「あらっ、これ知っているわ。これはマチスの絵でしょう?」と云いますと、「いいえ、これはルノアールの裸婦でしょう」

3つ目の絵のところで、左側の女性は自身満々に大きな声で云いました。
「アーラ。この絵は自信があるわ。これ、ピカソでしょう!」するとこちらの女性が「あら、奥様。それ鏡でございましょ」このように、パネルシアターでは、色々目で見ながらお話を進めて行くことが出来るのです。

今年も早いものでもう12月。色々なことがございました。とても人気があったのはこの人ではないでしょうか。こちら、「ハンカチ王子」ですね。このかたを追っかけて大勢のおばさんたちがアメリカまで行ったそうです。で、この人(田中君)とこの人(斉藤君)。この二人が日本の高校生野球チームの代表としてアメリカに行ったときの話です。二人はニューヨークでこの人(松井秀喜選手)に会いました。もう大喜びではしゃぎまわっていましたら この人(松井秀喜)がつかつかと田中君のところに行きまして、

「田中君。斉藤君はいい匂いがするのに 田中君はあまり良い匂いがしないね」
と、いいましたら 田中君が頭をかきながら、「ヤー、アノー。僕こちらに来てから先発していませんので」という話をしたとか、しなかったとか。
これは松井選手。こちらが斉藤選手で、こちらが田中選手です。

それでは 古典落語「てんしき」の英語バージョンを聞いてください。

               

Somewhere in Japan, there lived Oshousan and Kozousan which mean a priest and his pupil in an old temple.  One day, Oshousan was sick and asked the doctor to come to his temple.

“Hello, Oshousan. What’s the matter with you?”

“Well, I have a stomachache and my stomach is bloated. I don’t feel well.”

After the doctor examined Oshousan, he said, “Well, Ohousan. I don’t think you have a serious illness, but may I ask you if you have Tenshiki or not.”

“Tenshiki?” Oshousan didn’t know the word of Tenshiki. But he is a man who pretends to know, so he said, “I don’t have Tenshiki.”

“Oh, oh, really? Then I will mix you some medicine. Please come to my house to pick the medicine later.”

 

And the doctor left the temple. After the doctor left, Oshousan was very worried about Tenshiki. “What is Tenshiki? What is Tenshiki? I should ask him what Tenshiki is. Oh, I have a good idea. Tin-nen! Tin-nen!” He called his pupil Tin-nen.

“Yes, master. Can I help you?”

“Yes. Where did you put my Tenshiki?”

“Tenshiki? Oshousan, what is Tenshiki?”

“I told you before. You forgot, idiot!”

“Oshousan, will you please tell me again? This time I will never forget.”

“That’s no good. If I tell you, you are easy to forget. So ask someone else.”

ちょっと途中を日本語で 
あるお寺のお住持(じゅっ)さん、体の調子を崩しましてお医者さんに往診に来てもろたんですなぁ。

▲お住持、診察させていただきました。ちょっと下の辺りが張ってるよぉに
 思うのですが、転失気(てんしき)はございますかな?

■あぁ、テンシキでございますか……?

このお寺のおじゅっさん、知らんねやったら知らん「何でございますか?」
と聞けばそれで良かったんですが、ところがそれをよぉ言わん。

■ウォッホン、テンシキはただいまはございませんなぁ
▲あさよぉか、ならばそのよぉに薬を調合いたしますので、後ほど珍念さんに取りに来ていた  だきますよぉ、どぉぞお大事に。

ポイッと帰ってしまいます。さぁ「そのよぉに薬を調合いたします」と言
われたもんですから、命に関わる事、もぉ気になって気になって仕方がない。
 
■テンシキとは何かいなぁ? 薬の調合するっちゅうてたさかいなぁ、記憶
 に無いなぁ。お経の中にも無いぞ……、なむあみだぶつ……、無いなぁ。ぶっ
 せつまかはんにゃはらみたしんぎょ〜……、無い。てんにましますわれらの
 ちちよ……、無いなぁ。あ〜めん、無い。どないぞしてテンシキの意味を知
 る方法は無いかいな……、そぉじゃ、珍念あれは物知りじゃあれに聞ぃてや
 りましょ。

■これ、珍念や。珍念は居てますかな
●へ、おっすぁん、お呼びでございますか?

■いま先生がお見舞いをしてくださいましたな
●へぇ
■あの折「テンシキはございますか?」と、お尋ねでしたな
●へ、聞ぃておりました
■で、珍念、テンシキとは何じゃ?
●知りません
■「知りません」? 確か前に教えたはずじゃろ
●忘れました、教えてください。

■「忘れました、教えてください」それがいかん、わたしがここでお前に教
 えてやることは簡単じゃが、それではお前さんの勉強にならん、身に付かん。
 そぉいぅ気持ちがいかんのじゃ、もっと身を責めて一生懸命勉強しょ〜、身
 に付けよぉといぅ気がのぉてどないすんのじゃ。わたしがここで教えたんで
 は、お前(ま)はんのためにならん、里方(さとかた)へ行て聞ぃてきなさい。

●分かりました、ほな行てまいります
■ちょ、ちょっと待ちなさい。聞ぃてくるだけでは覚えにくいなぁ「品物を貸してください」向こ ぉが品物を出して来る、それがすなわちテンシキじゃ。表の花屋さんにでも行て聞ぃてきな さい。それからな、先生が薬の調合をしてくれてるはずじゃ、帰りに寄ってもろてきなさい、 分かりましたな
●へ、分かりました。行てまいります。

            中略


さまざまな表情の大空メイさん


▲あぁお住持、お加減はいかがですかな?
■これは先生、お陰さまでスッキ
 リといたしました

▲それはよろしゅございました、それでは……
■ちょっと先生お待ちを、昨日診察してくださいましたあとに「呑酒器はありますか?」とお尋 ねでございました。あの折「無い」と答えましたが、よ〜く考えてみますと呑酒器がありまし た。

▲あれば結構です
■本日はその呑酒器をお目にかけよぉと思いましてな
▲いや、別に見せていただかなくても
■遠慮なさらなくともけっこぉ
▲いやいや、遠慮さしていただきます
■先生はさぞかし呑酒器がお好みでございましょ〜な?
▲好むといぅよぉな事はございませんが、ちょいちょい催す事はございます。
■「催す」なんぞとおっしゃいまして、夜になりますといぅと奥様と毎晩、
 呑酒器をやったり取ったりなさっているのではございませんかな?

▲いや、そのよぉな事はいたしておりません
■実は、寺代々に伝わる呑酒器がございましてな
▲寺代々に伝わる転失気でございますか? 臭いはいたしませんかな?

■臭いの無いよぉに、よ〜く洗って、拭いてございます。呑酒器でございます
▲洗って拭いて ある?

■三つ組みの呑酒器がございましてな
▲三つ組みの転失気でございますか?
■少々お待ちを……、これ珍念、珍念や。呑酒器を持って来るよぉ。ゲラゲラ笑うのでは無い、 お客様に失礼にあたる。この箱の中に入っておりますので。

▲箱の中に転失気が? 臭いが無い、洗ってある、拭いてある……、それで
 は拝見をさしていただきます……。ほぉ、これはまた見事なお盃でございま
 すなぁ

■いやいや、つまらん呑酒器でございましてな
▲え、転失気? いやいや、我々医者の方では転失気とはオナラの事でございますが、寺方 では盃の事でございますか?

■ん? ち、珍念め……、騙しよったな
▲寺方の事でございますから、さぞかし古い時代から転失気と呼んでおられたのでございま しょ〜な?

英語に戻って

“Ha,ha,ha. Three pairs?  Bu,bu,bu”

 “Here! Here! Tin-nen. Put Tenshiki here! Doctor this is our Tenshiki.”

“Oh? Do you put Tenshiki in this box?”

“Yes.” “If you open it, does it smell?”

“No, I don’t think so. Because I washed it.”

“Wash? Did you wash Tenshiki?”

“Yes.” “How do you keep Tenshiki in this box?”

“I wrap them with soft cotton.”

“Wrap? Oh, I want to see to get my new information.” And the doctor held his nose.

“Doctor, are you ready? One, two, three.!”

“Wow, Oshousan. It’s Sakazuki!”

“No, It’s Tenshiki!”

“Oh? Do you call this Tenshiki at temple? We call this Sakazuki. In an old medical book, there is a word, Tenshiki. And that means ‘fart’!”

“FA,fa fa…fart? Tin-nen! You cheated me!

 Doctor, our temple belongs to Buddha!”                The end.

ここで飛行機こぼれ話を落語風にまとめてみましたので聞いてください。私が乗っていた頃は今からもう50年近くまえのことになります。

富士山と飛行機のパネルを見ながら説明する大空メイ講師 その頃の飛行機はプロペラ機。こらが富士山だとすると飛行機はこのあたりを飛びます。つまり高度3000メートルなのですね。これはDC4型プロペラ機でして、当時この飛行機に乗るためには このようなタラップを使っておりました。これ、その頃手動でした。

手動で飛行機のところまでお客さんを乗せていってこのように乗せるわけなのですが、初心者が動かしますとちゃんと目的の飛行機に着かないで 別の飛行機に行ってしまうことも度々でして・・・・まー、お客様たちは滅多に飛行機に乗れないので、それでも大喜びでタラップの上で手を振っておりました。

さて、そのタラップから飛行機に入りますと、なんとこんな顔をしたスチュアーデスが迎えてくれるわけですが、この方は誰かに似ているとか、似ていないというか。一応名前をよしみちゃんとしておきましょう。昔は一応基準がございまして、大体こんな人がスチュアーデスになるだろうな、と思っておりますと、時々びっくりするような顔に方にお目にかかることがございました。その方に親戚に偉い方がいらっしゃると どんな顔の人でも入れるという時代だったような気がします。

そこに乗ってきましたのがこの方。小朝さんに似たお客さん。「おい、姉ちゃん」昔は姉ちゃん、と呼ばれることも度々でして「俺の席はどこだい?」と云いますから、このよしみちゃんが「はい、こちらでございます」といって、席にご案内いたしますと、窓側にすでにアメリカ人らしき人が座っておられました。すると、小朝さんに似たその方が右手を出したりひこっめたりして、「ワン、プリーズ。ワン、プリーズ。」すると、そのブッシュさんに似たお客さんはびっくりしまして、「チョット、チョット。この人何がほしいのか、聞いてください」とよしみちゃんに云いますので、よしみちゃんは小朝さんの側に行きました。「アノー、お客様。何が欲しいのですか」と聞きますと、「何いってんだー。おれはただ、ひとつよろしく(One please)って言ってんだー」

そして間もなくですね、その隣に白い着物を着たおばあさんが乗ってこられまして、この方は「きょうこさん」というおばあさんなのですが、すぐに草履を脱ぎまして 座席の上に正座いたしました。そして、両手をあわせて拝むんですね。このよしみちゃんが「お客様。ベルトをおしめ下さい」といいますと、

「いや、結構。わしは結構じゃ」「でも、何かあったら困りますので、おしめ下さい」「だろう?なにかあるんだろう。飛行機は落ちるもんだ」といってしめ てくれない。「お客様。そんなことはございません」「いや、落ちるもんだ。わししゃ ちゃんとこういうもんを 着てきたぞ。」ぱっと脱いだその下は水着。「そしてこれも用意してきた」といって見せてくれたのがこの三角の布。(笑い)「どうして水着を着ていらっしゃったのですか」

「わしゃ、半年前から水泳教室に行って、25メートル泳げるようになったんじゃ」
「はあ?」「わしゃ、三途の川を泳いで渡るんだ。でもな、家のにっくき嫁ごがな、コーチのところに行って ターンを教えないで下さいと言ったそうだ。三途の川を戻っては困るということじゃろう。こうなったら絶対死んでやる」てな訳で 水着はとにかく、こんな格好をして座っておられたお客様も結構いた時代でした。

やがて飛行機が場所を離れますと、「皆様、おしぼりと飴はいかがですか?」と言って スチュアーデスが飴とおしぼりを配ります。すると、この小朝さんに似たお客さんが、「姉ちゃん。このキャンデー何に使うの」といいますので、「これは、耳が痛くならないようにです」と云いますと、「あっ、分かりました。耳が痛くならないようにね」なーんといって 耳につめたから大変。その方の後ろがみんなまねをして耳につめたとか。飛行機に乗ったことのない農協の団体さんとか、まねをした時代でした。

離陸いたしますと、機長がアナウンスをいたします。その当時は機長はほとんどアメリカ人。中には一生懸命日本語を練習していた機長もいらっしゃいました。「レーディース アンド ジェントルメン。わたしのなまえ リトポンといいます。リトは小さい。ポンは泉。日本語で小泉といいます」(註:小泉さんの絵)

「みなさーん、まもなく ひだりてーに ふじさーんが みえまーす」といったとたん、乗客はみんな左に寄るものですから さあ、大変。飛行機が左側に傾きました。すると機長は「たいへーん!たいへーん!みなさーん。ひこうき かたむいた!すぐ、おどって!おどって くださーい!」といいますから、乗客はみな一生懸命踊り始めました。すると誰かが「もしかして これおどって じゃなくって 戻っての間違えじゃないの?」(笑い)本当に今では考えられないような出来事が次から次へと起こった時代でした。

さて、今日は去年いたしました古典落語「じゅげむ」の更にその続きを作ってまいりました。
この名前は架空の名前ですが、実は実存している方で長い名前はこちらの女性。現在も93歳で矍鑠として生きていらっしゃいます。この方の名前は「沢井 麿女鬼 久壽老 八重 千代子=さわい まろめき くすろ やえ ちよこ」さん。ご近所から良いという名前をいただいて全部つけてしまわれたそうです。女学校を卒業するときに名前が長すぎて卒業証書に書ききれないから短くしてくれといわれて沢井千代子とされ、その後女学校の体操の先生になられたそうです。

寿限無の利口な子供を挟んで両親のパネル さて、寿限無は良い名前をもらったおかげで とても利口な子供になりました。あるとき、父ちゃんがするめをかじりながら ちびちびとお酒を飲んでおりますと、「父ちゃん。そんなものばかり食べて お酒を飲んでいるとろくな大人にならないよ」「ろくな大人だと?俺はもうとっくに大人だ」「そうじゃないよ、父ちゃん。そういうものばかり食べていると生活習慣病が出て早く死んじまうんだよ」

「生活習慣病?」「そう。病気になって子供に迷惑をかけるんだよ。ちゃんとした大人は自分の体に責任を持って生きていかなくてはいけないんだよ。父ちゃん」「じゃあ、どうしたらいいんだ?」「父ちゃん、それはね、まごはやさしい、をたべればいいんだよ」
「孫?孫を食べる?おれには そんな怖いことはできねえ」

「そうじゃないよ、父ちゃん。‘まごはやさしい’はね 食べ物の頭文字を云うんだよ。こういうものを食べていると人間は病気にならないで ピンピンコロリンといけるんだよ。このままじゃ、父ちゃん。ネンネンコロリンじゃないか。」「そうか、じゃー‘ま’は 何だ?」

では、皆様も一緒に考えてください。“ま”はなにですか。「豆」。では、“ご”は?「胡麻」。“わ”は?「わさび」(聴講生から)。“わ”は「わかめ」です。
では、“や”は?「野菜」。“さ”は?「魚」。“し”は?「椎茸」。つまり、きのこ類です。最後“い”は?「いのしし」(聴講生から)(笑い)「いも」です。

「こういうものを食べているから 日本人はかふんしょうで 世界一長寿の国なんだよ。」「花粉症?それって 鼻がくしゅん、くしゅんするやつだろう」
「ちがうよ、父ちゃん。日本人はね。世界一糞をする国民なんだよ。日本人は一日400グラムも糞をたれるのに対して、欧米人は たったの150グラムなんだよ。日本人は食物繊維をたくさんとるから過糞症。だから長生きするんだよ。父ちゃん」

「なんて、汚い話だ。すっかり酒がまずくなってしまった」と、父ちゃんはサッサとじゅげむを寝かせて外に出かけようとしたとき ムクッとじゅげむが起きたから大変。「父ちゃん。眠れないよ!」「バカ。子供は寝て居なければ いけねえ時間だろう?いつまでも起きているとこわーいお化けが出てくるぞ」

「そんなもの 本当に居ると思っているの?父ちゃん。父ちゃんは本当に見たことあるの?」「おれはねえけどよ。近所の人が見たって云ってるぞ」「だめ、だめ。父ちゃん。自分の目で確かめないことは口にしてはいけないよ」「分かった。分かった。俺はねえけど、早く寝ろ!」
「寝ろ、寝ろって、無理だよ。そうだ。何かはなしをしておくれよ。
そしたら寝てあげてもいいよ」「本当に寝るんだな?」「うん。」「なんの話がいいんだ?」「日本の古いお話がいいなあ」「よし、してやるから ねるんだぞ」「うん。ちゃんと話してよ」
といって話してくれたのが「鶴の恩返し」

鶴の恩返しのパネルと大空メイ講師“昔、昔あるところに 若者がいました。仕事から帰る途中、雪道に一羽の鶴が罠にかかっているのをみつけると やさしい若者はすぐ助けてやった。すると鶴は「ツルーツルー」といってうれしそうに空に飛んでいった。

「父ちゃん 鶴はツルーツルーって鳴かないよ。」「いいんだ。黙って行ったら失礼だろう。それに何とかいいながら飛んでいくもんだ」“すると、その晩 トントンとドアーをたたく音がする。若者が出てみるときれいな女の人が「今晩一晩泊めてください。」若者は大喜びで「いいとも、いいとも。」

すると 女の人は「機織り機を貸してください」と云うではないか。
若者が出してやると「機織り機を織っているときは 絶対に中をのぞかないで下さい」そういってから その晩娘さんは 一晩中ギーバタン、ギーバタン。

次の朝、娘さんがきれいな反物を若者の前に出すと「これを町に行って売ってきてください」若者が町に行って売るっていうと、高いお金で売れたそうだ。次の晩も娘さんは“ギーバタン。ギーバタン”若者はもう見たくて、見たくて我慢が出来ません。「決して見ないで」という約束を破って ソーっと開けてしまいました。するとそこには 鶴が自分の羽を抜いて織物を織っているではないか。見られた娘さんは悲しそうに「見られたからにはもうここにいることは出来ません」そう云って、鶴はどこかへ飛んでいってしまいました。

がっかりしたのは若者だ。「あー、あー。覗くんじゃなかった」後悔してももう遅い。「そうだよ、父ちゃん。約束は守らなきゃいけないんだよ。終わりでしょう?父ちゃん」「まだだ」「えっ?まだ続きがあるの?」“で、次の日だ。又若者が仕事から雪道をとぼとぼと歩いていくと、なんと、なんと、又一羽の鶴が罠にかかっているではないか。若者はこれもあの鶴に違いない。といって助けてやるんだ。すると鶴はツルーツルーと言いながらどこかに飛んでいった。その晩、‘トントン’とドアーをたたく音。若者が出てみると、今度は余り美しくない女が「今晩一晩泊めてください」といって 立っている。

若者はまあ、美しくねえけど、機を織ってくれるに違いねえ、と思って止めてやることにした。「機織り機貸してやろうか?」というと「ええ、まあ」とあまり余り乗り気でない返事。それでも、やがて‘ギーバタン。ギーバタン’その音がピタッと止んだので、若者はそうっと覗いてみるとなんとそこは もぬけのから。家財道具を全部もっていかれちゃった。鶴だと思ったら鷺(詐欺)だった。(笑い)「父ちゃん、父ちゃん。こんな話 ネエーだろう」「いいから聞け!」

“次の日だ。又若者が仕事帰りに罠にかかった鶴を見つけて助けてやるんだ。すると、鶴はツルーツルー(ありうがとう)といって うれしそうにどこかに飛んでいった。その晩 又 ‘トントン’とドアーをたたく音がする。若者が出てみるって云うと 青白いかををした女が「今晩一晩泊めてください」

「おめえ、病気だろう。まあ、いいから 入れ 入れ。」すると「機織機を貸してください」「病気なのに 無理に織らなくってもいいよ。いいよ。」というと「そうは行きません」
娘さんはやがて‘ギーバタン。ギーバタン’その音がぴたっと止んだので 若者がそうっと覗いてみると、なんと「アリャー、アリャー」女の人が死んでいた。鶴だと思ったら雁(癌)だった。
「父ちゃん。もう、いいよ」「いや、まだある。最後まで聞け」

“又、次の日。若者が仕事の帰りに鶴を助けてやるんだ。すると鶴はうれしそうに「ツルー、ツルー」といいながらどこかへ飛んでいった。するとその晩 ‘トン、トン’とドアーをたたく音。若者が開けてみると、そこには中島啓子か、森玖美子みたいな頑丈そうな女が「一晩泊めてください」といって立っていた。今度こそちゃんとした機を織ってくれるに違いないと若者が「いいから、いいから、早く入って機を織ってくれ」というと やがて ‘ギーバタン、ギーバタン’。これが又ぴたっと止まったので、若者がびっくりしてそうっとドアーを開けてみると、なんとむこうの塀の上を、たんすを担いだ女がタッターターと逃げて行くではないか。鶴だと思ったら鳶(トビ職)だった。

「父ちゃん。もう、止めておくれ。それじゃー眠れなくなっちゃうよー。もっとまともな話はないの?」「どんな話がいいんだ?」「日本民話。日本民話たくさん」「そうか、今度こそ、
寝るんだぞ」「うん」

寿限無に弟が生まれたパネルと大空メイ講師 やがて、寿限無に弟が生まれました、お父さんもお母さんの大喜び。早速お寺の和尚さんのところに行こうとすると、じゅげむが「父ちゃん、母ちゃん。お寺の和尚さん メタボリックシンドロームで死んじゃったよ。でも、いい人が居るよ。学校の科学の先生。」さっそくみんなは化学の先生に会いに行きました。会いに来たのがこの人(パネルー小泉さんに似た絵)。「先生。家に2番目の子が生まれました。なにか良い名前をつけてください」「そうですか。では、どういう名前が良いのですか?」「えー、絶対病気にならないという名前」
「そうか、そうか。では、血液、血液。というのはどうですか」
「それは、ちょっと。生々しすぎませんか」

「なら、酵素が良い。酵素というのは人間の体を司る大切なものだ」
「へえ、それは良いですね。他には?」

そこで出来たのが:「酵素、酵素、活性酸素のすりきれ、だいこんおろしのカタラーゼ、パ−オキシターゼをまぜまーぜ、食う寝るところは六本木ヒルズ、高いところはダイオキシン、まごはやさしい、カロテンテン、カリウム、燐、鉄、マンガンでロン、論より証拠のドコサヘキサエンサンはどこさ、CD-ROMのDNA,大豆ペプチドの ぬるぬーるの ぬるすけ」これがじゅげむの弟の名前。

さて、この子も良い名前をつけていただいたおかげで、すくすくと大きくなりました。例によって父ちゃんは相変わらずするめをかじりながら、お酒をちびり、ちびり。「父ちゃん、そんなものばかり食べていると、ろくな大人にならないよ」「ばかいえ、俺はもうとっくに大人だ。早く寝ろ」「寝てあげても良いけど、なにかお話してよ」「話をしたらねるな?」「うん、寝るよ」
といって話してくれたのが 「かさじぞう」

“昔、昔、おじいさんとおばあさんがすんでいました。「父ちゃん、名前は?」
「そんなもの知るかい」「だめだよ。名前がないとどうも真実味にかけるなあ」
「分かった。かってにつけろ」「じゃー、森さんにするよ」(註:前森総理に似た絵)
「森さんというおじいさんが住んでいました」

「おばあさんは?」「勝手につけろ」「では、今日子さん」「岸田今日子に似ているからか」
「そうだよ」「では、森さんというおじいさんと、今日子というおばあさんが住んでいました。二人はとても貧乏でした」「父ちゃん、どのくらい貧乏なの?」「それは、もう、お正月が来るって云うのに、食べるものが何も無いくらいだ」「へー、年金はどうしたの」「年金?森さんは国民年金払って居たかなあ」「あーそうだ。分かった。父ちゃん。年金俺俺詐欺に取られたんだよ」
「おれおれさぎ?誰に?」「この人に・・・・」(註:ほりえもんに似た絵)
「そんなばかな」

大空メイ講師 “その晩のこと。また、トントン、とドアーをたたく音。おじいさんが出てみるって云うと、そこには又変な人が立っていた。「よく人が来る家だね」「朝丘ゆきじと申します。雪道に迷いました。一晩泊めてください」(註:朝丘ゆきじに似た絵)びっくりしているおじいさんに、「機織り機がありましたら貸してください。泊めていただくお礼に機織をいたします」「父ちゃん。貧乏なのに機織機なんてあったの?」「ねえ。ねえからねえっていうと」「あーら。そう。ジャー結構」といってどこかへ行っちまった。

“そのとき、台所のほうでなにやら がさがさ音がした。ばあさんがあわてて台所に言ってみると、何も姿が見えない。でも、ヨーク見るって云うと、なにやら足元で動き回っているこどもが居る。針の刀を振り回してばあさんの足にチクチクチク。「あんた、一寸法師?」「そう。」「なんで、こんなところに居るの?」「都に行く途中みちに迷いました」ばあさんが 都に行く道を教えてあげるっていうと「これ、お礼」といって、おいて言ってくれたのが玉手箱。
「なんで、父ちゃんそんなところで玉手箱がでてくるの?」

「お礼といやあ、玉手箱だろう」「それで、玉手箱から煙が出てくるの?」
「違う。煙ジャーねえ」「では、何が出てくるの?」「犬、しろ」「えー?玉手箱から犬がでてくるの?」「そうだ。それで、しろはなにをしたの?」「ここ掘れワンワン」「分かった、父ちゃん。そこを掘ると金銀財宝がチャンポンジャランだね。」「違う。まだ何も良いことをしていないのに、そんなもの出るわけがねえ。出てきたのは灰。」「はい?」「はい」「あっ、分かった。それを蒔くと桜の木がはえてあっというまに花が咲くんでしょう。」「違う。出てきたのは豆の木」

「豆?」
“蒔けば、あっという間に豆の木がスクスク、スクスクと大きくなって、天まで届いてしまった。「分かった、父ちゃん。その豆の木におじいさんが登って天まで行くんでしょう?」「違う。じいさんは年寄りだから そんなことは出来ない。登ったのは、ジョージ。」(註:ブッシュ大統領に似た絵)「ジョージ?なんでジョージがこんなところに来るの?」「ホワイトハウスのホットライン。ホットラインで呼んだ」

“ジョージがトントントンと空まで上っていくってーと・・・・
「そこで何をしたの?」「戦争」「誰と?」「イランの大統領と。ジョージは大統領のベールを奪って空からおとしてくれた」「えっ?空からベールが落ちてくるの」「そうだ。ばあさんは喜んだのなんのって。」「あんた、このベール、明日町に行って売ってきてくださいな。そしてそのお金でお正月のお餅を買ってきて下さいな」

“でな訳で、次の日朝早くじいさんはばあさんの作ってくれたおむすびとベールを背中にしょって街に出かけた。「父ちゃん、おかしいよ。さっき食べるものはもう何も残っていないって言ったじゃないか。」「米びつの中にちょこっとお米が残っていたんだよ。深く追求するな」
“街に出かける頃 ちらほらと 雪が降り出した。爺さんが歩いて行くとあたり一面雪景色。すると、前方になにやら人影が7つ・・・・・
「あっ、父ちゃん。それ、お地蔵さんだよ。でも、おかしいね。お地蔵さんなら6人のはずだよ。」


熱心に話を聞く受講生と大空メイ講師


“じいさんが近寄ってみるっていうと、なんと裸の男が一人お地蔵さんの側でガタガタ震えている。「なんで父ちゃん、裸なの?」「たった今、人間になったばかりだあ」「あー、おいら知っているよ。それ、落語に出てくる元犬でしょう。毎日人間になりたい、人間になりたい、といって お地蔵さんにお参りをすると、ある日願いがかなって人間になるんだよ。とうちゃん、おじいさんはその人に名前を聞いたの?」「うん、聞いた。お前、名前はなんと言うのだ?って聞くと、シロ。シロだけでは分かんねんじゃないか。何々シロウってあるだろう?」
「ただ、しろ」「えっ?ただ しろ?おー、良い名前じゃねえか。ただしろう、なんて まるで役者みたいな名前だ」

“そんなわけで、爺さんはただしろうに 「寒かろう、この蓑を着なさい」といって 蓑をかけてやった。「へえ、それからどうしたの?おじいさんはタダシローをつれて町に行くんでしょう?」「いや、行かない」「どうして」「爺さんが時々振り向くと、タダシロウが、電信柱に片足上げてるではないか」「そりゃー、もといぬだもの、仕方が無いよ。それで、町までついてきたの?」「いや、途中メス犬が出てきて ついていていっちゃった。

“町に着いたじいさんは、大きな声で ‘エー、イランのベールはいらんかね?イランノベールはいらんかね?’と叫んだけどなかなかベールは売れない。
そのうちおなかがすいたので、おむすびを出して食べることにした。と、おむすびがあっという間に手からポロッと落ちて、コロコロコロコロ転げだした。
「あっ、わしの大事なおむすびー、待ってくれ」でも、おむすびはころころこ
ろと転がってあなのなかにポンと入ってしまった。

がっかりした爺さんがぼうっと穴の中を覗いていると・・・」「分かった、ねずみがお礼をくれるんだよ。金銀財宝、チャンポンジャラン」「違う。おむすびは穴の中を ころころころころ転がって、出たところは・・・」「出たところはピョンヤン」「えっ?ピョンヤン?」「そう、喜んだのは、キムさん。(註:キム・ジョンウィルに似た絵)近頃、ゆっくりごはんも食べていない。

それでお礼にくれたのが菅笠5こ。菅笠が5つ。ピョンヤンから飛んできた。」「どうやって菅笠が来たの?」「ミサイル。ミサイルでぴゃーと飛んできた。」
「へー、それで、おじいさん、どうしたの?」
“もう、夕方だ。帰らなくっちゃーとしたとき、町外れのお寺で鐘の音が。
誰がたたいているのかと思ったら・・・「分かった、父ちゃん、ゴーンさんでしょう」(註:カルロス・ゴーンに似た絵)(笑い)

“爺さんが菅笠を持って家に向かうと。先ほどのお地蔵さんのところにやってきた。「おじぞうさん、おじぞうさん。今日はベールが売れなくって申し訳ございません。お供えのお餅がありません。その代わり、この菅笠をかぶってくんろ」といって おじいさんは一人ひとり菅笠を被せてあげました。「あれー!菅笠は5つ。お地蔵様は6人。一つ足りない、どうしよう?」

“おじいさんはふと思い立つと、「お地蔵様、このイランのベールをかぶってくんろ」てんで、おじいさんはさいごのお地蔵様にベールを被せてやりました。すると、お地蔵様の目がギョロッと開いて「ありがとう!」やがて家に帰ったおじいさん。てぶらのおじいさんを見て、おばあさんはびっくりだ。「あらっ、あんた なんで手ぶらなの?どうなさいました」おじいさんはわけを話してやると「まあ、まあ、それは良いことをなさいましたね。

今夜はお湯でも飲んで早く寝ましょう。」ばあさんがやかんに水を入れて火にかけるというと、やかんが‘ぎゃー!’といって飛び上がって逃げていった。みると、ぶんぶくちゃがま。「仕方が無い、何も飲まずに寝るとするか」と、おじいさんと おばあさんは その晩は飲まず食わずで布団に入りました。すると、真夜中に ドスン、ドスンと音がする。
「父ちゃん分かったお地蔵様がお礼に来たんだよ」

“じいさんとばあさんが 障子の穴から外を覗くって言うと、なんとそこには米俵だの、着物だの、野菜だのが 山ほど積まれているではないか。そして向こうの方に帰って行くお地蔵様。爺さんが障子を開けると、一番後ろに居た小さなお地蔵様が、トトトーっと爺さんのところに来て、石油缶を一つ出すと、
「ついでに、この石油イラーン?」
これがじゅげむの弟に聞かせてあげた 傘地蔵の話です。
日本民話は全部でいくつ出てきたでしょうか?

−終わりー



講座企画・運営:吉田源司
文責:高尾憲明
会場写真撮影:橋本曜
HTML制作:和田節子