平成19年5月25日  第360回 神田雑学大学講演

空き巣・泥棒退治術 稲田淳夫

講師:稲田淳夫




目次

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はじめに
泥棒の実態
半数以上が職業的泥棒、住宅狙いには3タイプ
5分で入れなければ泥棒はあきらめる
最も理想的なのは侵入が困難に見える家
防犯への意識が高まり住まい選びの重要項目に






講師の稲田淳夫さんはじめに
かなり派手なご紹介をうけましたが私は元泥棒担当の一刑事を長年やったというだけで特に誇る点もありません。1933年長野県で生まれ警察官となって交番勤務や機動隊勤務などをやって28歳から60歳まで33年間、づーっと警視庁捜査第3課(空き巣・窃盗犯担当)いちずにやってきました。捜査3課は空き巣、金庫やぶり、自転車泥棒、置き引き、ひったくりとにかく泥棒に関係する総ての事件を扱う部署です。

ちなみに捜査1課は強盗、殺人などの事件、2課は詐欺などの知能犯を扱うところ、4課は暴力団専門です。いまはそうでもありませんが刑事というのは職人気質のふるい体質が残っていまして見習いからお茶汲みなどをやりながら先輩の仕事をみながら身体で覚えていくようなところがあります。

私の場合は自分でいうのもなんですが、わりと適性があったのか最初から窃盗犯をかなり検挙することができました。褒められると嬉しいもので昭和40年代は日曜、祭日も殆ど出勤して仕事に没頭しておりました。警察は普通移動があるものですが私は実績がかわれたせいか最後まで異動せず60歳定年後は経験を生かして、各地区防犯運動に参加、また防犯講演 テレビ出演などをやってきました。

泥棒の実態
 最近マスコミで泥棒の検挙率が低下していると報じられますが、検挙件数そのものは、そんなに下がっていないのです。東京管内で年間1500件ほどでしょうか。しかし犯罪件数そのものが増加しているのと、中国、韓国、ブラジルそのた海外からの出稼ぎ組みの活動が活発で手をやいているのが実情です。外国から来る泥棒にとって、日本は防犯意識が低く捕まっても比較的刑も軽く刑務所の待遇も非常に住みやすくなっているのです。

私も最初のころは必死で仕事をして多くの窃盗犯を刑務所に送りましたが、窃盗というのは比較的罪が軽く数年で刑期をおえて出てきます。社会では前科のある者にたいして冷たくまともな職業につけるケースは少ないのです。結局また泥棒をやって刑務所送り、出所してまた泥棒稼業の繰り返しでいたちごっこです。おまけに受刑中に仲間同士で犯罪手口の情報交換をしてあたらしい手口を覚えて出てくるので始末におえません。

私が扱った泥棒も何度か犯罪を繰り返して刑務所の中の会話から私もかなり有名になって捜査3課の稲田といえばかなり名が知られるようになっていました。町内会で「犯罪をなくして住みやすい街を」なんてスローガンを掲げてはりきっても泥棒の根絶は不可能です。結局窃盗を減らすには泥棒に入られないように防犯を徹底するしか対策はありません。私は仕事を通じて観察してきた泥棒の心理、手口などから防犯をどのようにしたらいいかお話したいと思います。

熱心に講義を聞く受講生半数以上が職業的泥棒、住宅狙いには3タイプ
 防犯の話をする時に、私はよく「泥棒の心理を知りなさい」と言っています。そこで、まずあまり一般に知られていない泥棒の実情について話しましょう。泥棒といっても一見普通の家に住んで普通の顔をして外見では区別することができません。警視庁管内で、建物に入る本格的な泥棒=侵入盗として年間1500人前後が逮捕されており、その半分以上は前科のある人物。プロと言えないにしても、彼らは泥棒を職業として捉えています。

毎年逮捕する犯人の20〜25%は未成年者が占めています。半分以上は再犯です。
刑務所での更正効果というものに疑問を感じざるを得ません。日本の法律では性善説、人権擁護の立場から刑務所内の設備はよくできていて食事も悪くなく、作業も軽度のもので入所者の居心地は決して悪くないのです。

懲役とは懲らしめる役と買いますが書きますが現実には懲らしめになっていません。入所者は率直にやったことを反省している者もいますが、大半は捕まったことを反省して仲間同士で情報を交換して、つぎはどうしたら捕まらないようにできるか知恵を絞っているのです。そして出所すると前科2犯ともなると家族も親戚も友人も殆ど相手にしてくれません。仕方がないからまた泥棒をやるかということになってしまうのです。初犯ぐらいでは世間体ということを非常に気にしますが再犯からは、そんなことはあまり気にならなくなるのです。

講師と受講生 私も泥棒専門を33年やってきましたが泥棒相手の仕事にはやはり経験がものをいいます。前科5犯とか6犯の大物の泥棒は駆け出し刑事の取調べなど相手にしないのです。わたしも自信が持てるようになったのは10年ぐらいたってからです。最近、検挙率が落ちているという批判もありますが、現実には逮捕している実数はあまり変わっていません。最近は外国人の泥棒がふえたり、行動範囲が広まって捕まえにくい事情はあるのですが、捜査の質が落ちたというものではありません。

決して出来心や思い付きで行なっているわけではないということを念頭においてほしいと思います。最近外国人の犯罪が増えていますが中国や南米の貧しい国のものにとっては、たとえ10万円でも彼らにとっては年収にも匹敵する大金で、日本は警備があまくたやすく侵入できることから出稼ぎ的な泥棒が非常に増えているのです。

外国人犯罪者は言葉の問題もあって自供させるのが難しく、日本での前科記録もないので指紋がとれても照合できず捕まえにくい原因ともなっています。外国人犯罪者の国籍のトップは中国が圧倒的にトップで、ついでブラジル、韓国朝鮮、ロシア、ベトナム人などの犯罪も増えています。しかも犯行はより荒荒しく、高度化しています。彼らは外見が日本人と区別がつかず、目立たず犯行を行なえるメリットを持ち、とくに侵入盗の場合は、日本人の泥棒と同じようにスーツを着用している場合が殆どです。

住宅を狙う泥棒には、昼間に留守宅を狙う「空き巣」、家族が家の中にいる時に人のいない部屋に侵入する「居空き」、家人の睡眠時に侵入する「忍び込み」の3タイプがあり、なかでも今一番問題になっているのが空き巣です。彼らが一番恐れるのは、人に見られること。侵入を試みているところで中を物色しているのを見られて声をあげられたり、通報されることを最も恐れます。

5分で入れなければ泥棒はあきらめる
 6割強の泥棒が、侵入を試みてから諦めるまでの時間を5分以内と答えています。ただし、高い塀などで家の周りを囲っていて、道路などから見える心配がなければ別です。泥棒も落ち着いて「仕事」が出来ますからね。ですから戸建住宅の場合、表玄関からでなく、大抵が通から自分の姿が見えず手早く作業が行なえる側面の窓や裏口などから侵入を試みます。戸建住宅ではピッキングや錠破りはほとんどおらず、一番多い侵入方法は「ガラス破り」

プロ級の泥棒に言わせると「ガラスはあってもなくても一緒」だそうです。
そして一般住宅の侵入盗は、特定の家を最初から狙っているのでなく、歩きながら侵入しやすそうな家を探す。ということも注目です。一般住宅を狙う泥棒は、壁に穴を開けてまで入ろうとは考えていません。彼らが持ってくる道具はドライバーやプライヤー程度。ですから侵入するポイントを捉えてその部分をある程度丈夫にしておけばよいのです。

講師の稲田淳夫さん最も理想的なのは侵入が困難に見える家
 では、ある程度の丈夫さとはどのくらいか。「留守と分かっていても入られないだけの丈夫さ」ということになると思います。そこで私が常に言っているのは「見える防犯」。住宅の周りに高い塀を作らない、つまり道路から陰になる部分を作らず、周囲から見えるようにしておくこと。また見た目で侵入が難しそうな家だという印象を与えることです。

私が考える理想的な家は「いろいろと試みたが入れなかった」ではなく、職業的な泥棒が見て、「ここは手強そうだ」と諦めて帰っていくような家です。だから“これみよがし”に防犯することがポイントです。例えばセンサーライトや防犯モニターなどがあります。

さらに「守る防犯」。表玄関ドアは最近2ロックが主流になってきていますが、勝手口は意外と忘れがち。開口部のアイテムを強化することが必要です。特にガラスに対する防犯設備を。例えば、丈夫で外部から取り外しにくい格子や雨戸、シャッターをつけるなどです。また最近は性能の良い防犯ガラスが出てきていますね。さらに防犯ガラスであるというシールを目立つように貼っておくと効果的です。これら防犯設備は、できれば家を建てるときに設置しておくのがベストでしょう。手間・コストの面でもその方が合理的です。

防犯への意識が高まり住まい選びの重要項目に
今まで建築会社が力を注いできたのは、コスト、デザイン、居住性の3点でした。裏を返せば、施主はその3点に要望を集中し、防犯対策についてはそれほど意識してはいなかった。しかし、今は、犯罪が増加し必然的にセキュリティが重要視されるようになったこともありますが、施主の防犯意識が高まり、各建築会社や住宅メーカーも真剣に取り組むようになってきました。これは喜ばしいことですね。

泥棒の下見のポイントは、まず住民が留守かどうかの確認です。
(1)インターフォンで呼んでみる.
(2)隠れて家の中の動きを見張る.
(3)窓、雨戸、カーテンの閉まり具合から判断する.
(4)郵便ポストのたまり具合から判断する。などですがこれらの点を念頭にいれておくといいでしょう。

家の構造は
(1)道路に面していて人の目があること。
(2)塀は無いか、出来るだけ低くすること。
(3)周りに踏み台や梯子かわりになるものがないこと。
(4)窓の構造を頑丈にして鍵をしっかりかけること。などが大切ですが、ほかにセンサーをつけるとかカメラでモニターできり設備をつければ非常に効果があります。
少し費用がかかりますが警備会社と契約しておけば、いろんなアドバイスを含めて非常に役にたちます。 

江戸時代の手錠 また犬がいるだけで侵入をあきらめる泥棒も多いのです。もし泥棒に侵入されたときのことを考えて、先ず家には大金をおかないことが第一です。当たり前のことですが預金通帳と印鑑は同じ場所におかない。それと貴重品をタンスや冷蔵庫、仏壇などにおかないことです。金庫も小型のものであれば金庫ごと持っていかれます。

「犯罪のない明るい街を」というのがもちろん理想ですが、残念なことに泥棒というのはいつの世にも必ず存在します。よその家はともかく、少なくとも自分の家だけは自分の責任でしっかり守るという強い気持ちで家を建てることが大切だと思います。

                         


講座企画・運営:吉田源司
文責:得猪外明
会場写真撮影 橋本 曜
HTML制作 和田 節子