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神田雑学大学 平成20年1月18日 講座No390


AED(自動体外式除細器)の使い方教えます

講師  天木 嘉清 あまき よしきよ


(クリックをすれば該当の項へ進みます。
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プロフィール)

はじめに

AED(Automated External Defibrillator) 自動体外式除細器とは

心室細動による心停止とは、なぜAEDで復帰するのか

心室細動による心停止から除細動までの時間と生存退院率との関係

一般人による緊急AED操作が行なわれるようになるまで

劇的な効果

一般人のAED使用許可への歴史

突然誰かが倒れたら

胸骨圧迫による心臓マッサージのやり方

実 習


 講師:天木嘉清さん                        

天木嘉清さんプロフィール

医学博士
東京慈恵会医科大学客員教授
帝京平成大学救急救命学科担当 

著書
・筋弛緩薬−基礎からみた臨床への応用
・見て考えて麻酔を学ぶ








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1.はじめに

今日は私が今取り組んでいる心停止傷病者の生還のためのAEDの普及活動についてお話し、皆様にも緊急の際にAEDが使えるようになって帰っていただこうと思っています。私は現在帝京平成大学救急救命学科に籍をおいてAEDを扱う救急救命士の教育を行っています。

後ほど説明しますが心停止傷病者に対しAEDが有効といっても、心停止後すぐそれを用いないとなかなか復帰が難しいのです。ですから救急車での救急救命士の到着を待っている時間が長ければ長いほど復帰は難しくなります。その場に居合わせた一般の方が勇気をもってすぐさまAEDを使うことが生還率を一番高めることになるのです。一般の方々へのAED教育、これが今日の講義の一番のポイントです。
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2.AED(Automated External Defibrillator) 自動体外式除細器とは

 AED装置とマーク AEDについては下記のような説明が適当だと思っています。図のようなオレンジ色のハートに稲妻が走っているマークを駅や公共の集会場などで見ることが多いでしょう?このマークのすぐ側に持ち運びが簡単で電源も内蔵されているAED(自動体外式除細器)が置かれています。その定義は以下のようなものです。

  (AED装置とマーク)

1.心停止傷病者に対しに直流電気を与え、心再開を求める蘇生器
2.医学的知識を有さぬ一般市民が用いる
3.一刻も早く、処置を行えば救命できる目的で用いられる
4.処置結果に対して法的に問われない
5.医師などを探す努力で、見つからない時用いる
6.器械が全て判断、人間の知識は介入しない
7.指示は音声でおこなわれる


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3.心室細動による心停止とは、なぜAEDで復帰するのか

下の図左側を見てください。心電図が示されています。 心臓の各部位の働きに応じて正常な場合は左側のような波形がでています。 しかし心臓に充分な酸素が供給されないと、筋肉が痙攣して下図右側のような心室細動とよばれる波形が出ます。 この波形の時にAEDを用いると、心臓は再び元の波形に戻ります。

正常な心電図波形
 (正常な心電図波形)

 心停止時の心室細動の波形
(心停止時の心室細動の波形)


心停止傷病者に対しに電気を与えると心再開が起こるというのはどういうことでしょうか?心臓の細胞が電気を発生していてその電気で筋肉組織が動くということは以前から蛙の心臓を使った実験で知られていました。その知見を生かしアイントホーヘンは心電図の発明をし、彼は1924年のノーベル賞も受賞しました。

除細動器というのは1950年に出来たんですが、これがどうして出来たかというとエジソンが電灯を発見しましたよね。各家庭が電気を引くときにエジソンの会社の人達が電柱を立てて電気の供給を行うわけです。そのとき工事の人達がしばしば感電死したのです。どうしてこんな若者が電気ぐらいで死ぬのかというので、電気会社はロックフェラーの研究所にどうにかしてくれ、なにか治療方法はないのかということを委託したのです。

彼等は動物実験をやりました。犬や猫を感電させると心臓が停止して心室細動が出ることが分かりました。それを直すのはどうするか、薬をやったり色々しても駄目で、むしろもう一回弱い交流波を流してやると心室細動のブルブルした波が元に戻るという実験結果が出たのです。電気というのは心臓を止める時もあるが心臓を再開させることもある、心臓の収縮のどこで電気を与えるかによって、プラスにもマイナスにもなるということを発見して、それでAEDに代表される除細動器がアメリカのロックフェラー研究所の依頼ではじめて作られたのです。

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4.心室細動による心停止から除細動までの時間と生存退院率との関係

心室細動が起きても、電気ショックをかけることによって、心臓の動きは回復する、それを除細動というのですが、実際には心室細動が起きて心臓が止まっている時間の長さが重要です。この間心臓というポンプから血液が供給されないわけですから、10分以上心室細動が続きますと、脳は大きなダメージを受けてしまいます。

たとえ心臓の動きがその後の電気ショックで回復したとしても植物人間になってしまうことが多いのです。下のグラフは心室細動による心停止から除細動までの時間と生存退院率との関係をグラフにしたものです。いかに心停止が起きてからすぐに除細動を行なうことが大事かということが理解できると思います。除細動を行なうとは具体的にはAEDを使うということです。

心室細動による心停止から除細動までの時間と生存退院率との関係グラフ          
(救急救命士標準テキストより作製)
一分ごとに生存退院率が7〜10%低下することに注目してください。


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5.一般人による緊急AED操作が行なわれるようになるまで

救急車が現場に来るまでの時間は全国で平均して6分と言われています。なにしろ交通渋滞ですからいくらサイレンを鳴らしても都内ではもっとかかる場合も多いのです。そして現場に救命士が到着しても現場での心肺停止確認とかモニター装着、解析作業などで数分かかるのです。

今ではなくなったのですが、救命士がお医者さんにAEDの許可確認の電話を必要とした時代もありました。これではどんなに早くても心室細動は11分は続いてしまいます。 グラフより分かるようにそれでは生存退院率が10%を切って数%になってしまいます。社会復帰できないわけです。

いくら優秀な救命士を私が育てても、現場に行くのに11分かかるのでは駄目。だから一般の目撃者にすぐやってもらわなければ駄目だということになったのです。そこで何の知識もない一般人が使えるAEDが出てきたのです。

突然死を防ぐということで除細動の一般使用ということが2003年の9月くらいから始まりました。特に後に申しますが皇室の関係の方が亡くなったということがきっかけになりました。それまで日本は非常に決断が遅かったのです。

海外ではどうか、最初は海外でも一般の人にはやらせなかったのです。最初は看護婦さんとか警察官とか警備員とかライフガード、そして特に客室乗務員に展開されました。スチュワーデスですね。飛行機の中は非常に突然死が多かったのです。なぜかというと飛行機の中は気圧の関係で酸素濃度が21%以下ですね。

そこへもってきてお酒を飲む。お客には高齢者や心臓に持病のある人も多い。そして離陸したら戻れない。離陸時はガソリンを沢山積んでいます。その重さのために離陸直後にすぐ着陸するということはなかなか出来ないのだそうです。

1995年にアメリカでは一般人にAED使用を許可しています。2000年にはクリントンがAEDの重要性を説いて10月にGood Samaritan’s Lawという有名な法律が出来ました。そしてそのときAEDの民間旅客機への配備が決まりました。Good Samaritan’s LawというのはAEDを使用したといって使用者が不利益を受けないよう法的責任を免除する法律です。アメリカは告訴の世界ですからこれをやらないとみんな逃げてしまうというので作られたのです。

日本でもこういう法律的整備をしてやらないと遺族は「あなたがAEDなんかするから主人は却って悪くなって死んじゃった、お医者さんが来るまで待てば助かったんじゃないですか」なんていう人が必ずいるのです。そうするとせっかく好意でやった人達がみんな嫌な思いをして、もうやらないという風になるのです。ですから法律の整備というのはAEDによる早期治療の実現にはキーになるのです。

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6.劇的な効果

アメリカラスベガスのカジノでAEDを使用したデータがあります。カジノでも興奮しますから心肺停止が多かったのです。それで救急車を呼ぶわけですがアメリカでも救急車が来るまで時間を要しています。

それじゃ賭博場にいる警備員にやらせようじゃないかということになりAEDをやらせたそうです。そうしたら心停止を起してから平均3.5分以下で処置が可能になり、なんと74%の人が回復した。除細動が3分以上たってかけた人も50%以上の人が助かって社会復帰が出来たというデータがあります。74%の人の中にはラスベガスの病院からそのまま帰ってもう一回カジノをやったという報告もあります。

下の図、これは航空機内のデータです。AEDの中に記録されている心電図のデータです。心肺停止が起きてから回復するまでをずっと時系列に記録してあります。 最初心室細動がブルブルと起きていますね。そこで客室乗務員が電気ショックをここで当てています。10時35分47秒のところですね。 その後どんどん正常な波形に戻っていっていますね。そしてこの人は助かったのです。ちゃんとフライトを終えてアメリカの病院入院したのです。

この記録は非常に貴重ですね。良く波形を見ますとAEDをかけてしばらくはまだ心臓ポンプの動きが悪く、血液がなかなか脳のほうには流れにくくなっていることが読み取れますね。これからもAEDで電気ショックをかけたら、結果はともあれ、引き続いてCPR(心臓マッサージ)をすることが大切なことが分かります。これをやっておいてもらうと脳に血液が行くのを助けるので、あとで社会復帰するときに非常に助かるのです。

AED心電図記録

(機内で心室細動発生とAED処置・AED心電図記録より)

後ほど実習してもらいますがCPR(心臓マッサージ)とAEDは心肺停止を救うことの両輪で、この両方を緊急に現場にいる一般の方にやっていただくことが心肺回復と社会復帰のために非常に重要なのです。

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7.一般人のAED使用許可への歴史

1990年バージンアトランティック航空が世界で始めてAEDを機内に搭載、2001年にはアメリカ連邦航空局がアメリカ国籍機へのAED搭載を義務化しました。日本は遅かったです。それで日本の航空会社に乗ると危ないぞという声が外国人の中から出ました。

2000年に厚労省は航空機内による客室乗務員のAED使用を認可しましたが、一般人にAEDの現場使用を認める通知が出たのは2004年7月のことでした。講習会を受けた一般人の使用が薦められるという但し書きがありました。しかし講習を受けていない人はやってはいけないということではないのです。現在のAEDは一般の素人でも扱えるような機構になっていますから。それから各メーカーがAEDをどんどん作るようになって普及が始まるのです。

高円宮さまご逝去の新聞記事 右の記事を見てください。
2002年11月高円宮さまがカナダ大使館でスカッシュをやっていて、心室細動でお亡くなりになったのですね。そのときカナダ大使館の人がカナダだったらAEDがあるぞといって大騒ぎになりました。救急車は来たんですが間に合わないで搬送先の病院でその晩に亡くなっていますね。

大変失礼な言い方ですがこういう偉い方が亡くなると、それがきっかけで日本は動くのです。大平さんが亡くなったときも心カテの治療が伸びたり、小渕さんが亡くなったときにも脳梗塞の治療方法などがぐんと変わりました。日本は偉い人が亡くならないと動かないというのが残念ながら実態なのです。

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8.突然誰かが倒れたら

先ほどから言っていますように突然誰かが倒れたら一刻を争いますから現場にいるあなた方が対応しなければなりません。 そのときの手順は以下です。

1.119への連絡、電話は切らない、現場から逃げない

2.意識、呼吸がなければ心臓マッサージ

3.AEDがあれば直ちに準備

4.躊躇せず、始める、

5.AEDが終わったらまた心臓マッサージ


AEDがない時はどうするか?119番をしますと、先方は電話を切らないでくださいといって色々指示してくれます。心臓マッサージをして下さいと言ってきます。そんなことしたことがないと言っても通信司令員が電話の向こうで指示を言いますからその通りやれば良いのです。マウスツーマウスをやるように指導がありますが、これは感染の恐れもあるし一般市民には抵抗もあります。経験のない方ではやらなくてもいいです。心臓マッサージだけでも充分効果があるのです。

まず意識の確認は呼びかけです。答えがなければ意識がないのです。それから胸を開けるのです。そうすると胸やおなかの上下で息をしているか、していないかは簡単に分かります。動いていないなら心臓が止まっていると考えて良い。脈を取るのは難しいですからやらなくてよいです。

そして直ちに心臓マッサージに入っていいのです。心臓マッサージは脳に血液を送るためにするのです。脳に血液が10分間行かなかったらもう回復は難しくなります。一刻も早く心臓マッサージが必要なのは脳細胞を守るためなのです。

そしてその間にAEDがないかを探し出す。AEDがこの九段生涯学習館でも入り口にありましたね。これがあるときにはそこには講習を受けた人が誰かいます。だからその人を探すのが一番良い。いなくてもAEDは蓋を開ければ自動的にスイッチが入り音声ガイドが始まります。その音声にしたがってやれば素人でも簡単に出来ます。

そして躊躇せず、始めるということはとても大切です。あなたが躊躇するとその人はもう復活しません。救命隊を待っていては間に合いません。野次馬がいて色々言う人がいても無視して断固としてやること。そしてAEDを一回かけてその時点でも救援隊が来なければ心臓マッサージを続けるのです。もうすぐそばに緊急救命士は来ています。

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9.胸骨圧迫による心臓マッサージのやり方

下の図を見てください。
心臓マッサージはこういう風に手を組んで、はだけた胸の乳頭の中点のところを手掌で押すのです。胸の真ん中です。全身の重みを手掌にかけて、胸が4〜5cmくらい圧迫されて下がるくらいの力を入れて1分間に100回くらいのテンポで押すのです。

肋骨が折れそうになるくらい押すのです。大体30回心臓マッサージをして2回ほどマウスツーマウスで息を吹き込み、また30回くらい心臓マッサージを行なうというサイクルで救急車を待つというのが適切です。さきほど言いましたようにマウスツーマウスの人工呼吸に抵抗があればしないで、心臓マッサージだけでも効果があります。
心臓マッサージの手の組み方

 心臓マッサージの仕方




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10.実習(日本光電東京株式会社 信国 明 のぶくに あきら 氏協力による)

今から人形を使って皆様が誰かが突然倒れた場面に遭遇した時の対処を実際に実習をして頂きます。AEDを倒れた人の胸につけますとAEDは自動的に心電図を測定し、心室細動の波形を検知したときのみ、電気ショックボタンを押すように音声で指示してきます。こうなればしめたものです。80%以上の方はもう助かったも同然です。

熱心に聴講している様子

◆急病人が倒れます。

◆目撃者はかけよって意識の確認をします。

「大丈夫ですか?」大声をかけゆすります。
(肩を強くたたいて意識確認、寝ているだけかも知れませんから)


◆応援を呼びます。

一人では心臓マッサージをしたりAEDを探したり、救急車を手配したり出来ません。
大声で周りの人たちに応援を求めましょう。
(逃げる人が多いです。相手の目を見て確実に指示してください。)


◆応援に来た人に役割を分担します。

「すみませんあなた119番へ電話して救急車要請してください」
「あなたはAEDを探してきてください」
「心臓マッサージが出来る方はいますか」
心臓マッサージは疲れますので何人かで交代にしますので何人かを確保したいです。


 あごを手であげて気道確保

◆倒れた人を仰向けにしてあごを手であげて気道を確保します。

そして洋服の前をあけ胸を露出させます。
そして気道を確保しつつ自分の耳を倒れている人の口や鼻に近づけ呼吸音を確認、
同時に露出した胸や腹が上下に動いているかどうかおよそ10秒かけて確認。

◆10秒間たっても呼吸の状況が分からない場合は呼吸がないと判断し、直ちに人工呼吸に入ります。

鼻をつまみマウスツーマウスで息を胸が膨らむ程度を確認しながら行います。

心臓マッサージ

◆胸骨圧迫による心臓マッサージを行ないます。

30回行い次に2回マウスツーマウスで息を吹き込み、また心臓マッサージを30回と繰り返します。 これはAEDを使う時を除いて救急隊が到着するまで、交代ででもいいですから続けます。 (このくらい激しく押しても血圧は25とか30くらいまでしか出ません。ですから殆んど血液は行かないのですが、
それでも少しでも脳に血液が行っているということがとても大切なんです。)


◆AEDが来ました。

◆AEDの蓋を開けると自動的に電源が入ります。そして自動的に音声案内が始まります。

(音声ガイド)

・AEDの箱から四角い袋を取り出してください。

・袋を破いてパッドを取り出してください。

・パッドの一つをシートから剥がして図のように右胸に貼ってください。

・もうひとつのパッドをシートから剥がして左脇腹に貼ってください。

・電極パッドには左右どちらも違いがありません。

・身体に触らないでください。心電図を調べています。

・電気ショックが必要です。充電しています。身体から離れてください。

・点滅ボタンをしっかりと押してください。⇒電気ショック

・電気ショックを行ないました。身体に触っても大丈夫です。

・直ちに胸骨圧迫による心臓マッサージと人工呼吸を始めてください。

 2分間継続してください。

(AEDのパッドをつけたまま胸骨圧迫を続けます。)

・胸骨圧迫と人工呼吸をやめてください。身体に触らないでください。

・心電図を調べています。

・電気ショックが必要です。充電しています。身体から離れてください。

・点滅ボタンをしっかりと押してください。⇒電気ショック

・電気ショックを行ないました。身体に触っても大丈夫です。

・直ちに胸骨圧迫による心臓マッサージと人工呼吸を始めてください。

 2分間継続してください。

◆救急車が来ました。

以上です。是非AEDを恐れずに勇気を持って一般人は使うことの啓蒙をよろしくお願いいたします。
終わり

文責 臼井良雄   写真撮影:橋本 曜   HTML制作:上野 治子


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