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神田雑学大学講演抄録 第396回 平成20年2月29日

声のふしぎ−身の周りの”声“のはなし−

講師 鈴木 誠史


目 次

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はじめに

第1部

1.ヒトを流れる声の情報

2.音声発生のメカニズム

第2部

3.母音が声の基礎

4.自分の声は他人の声?

5.アナウンサーの声は違う?

6.“回文”があるなら“回音声”も



はじめに

講師鈴木誠史さんの顔写真  声は、人類だけに与えられた機能です。文字のない言語はありますが、声を持たない人類はありません。私たちは、育つ過程で声の出し方を覚え、意味を理解し、話をするようになります。しかし、これは成長過程で覚えることだけでなく、何千年、何万年のヒトの歴史の賜物です。 しかし、声のできるしくみや、声を使ったシステムの実際は、ほとんど知られていません。ここでは、みなさんが、疑問に思っている、声についての情報をお話します。

 ところで、科学的な話は、無味乾燥なことや、難しいことが多いですね。私は、長年の講義や話をする機会を通じて、興味のあるテーマを中心にお話する「レクチャー オン デマンド」を考えました。今日は、その手法でお話します。第1部では、声が作られる原理を紹介します。第2部は声についての疑問を集めたA,B,C,などのグループから、リクエストをいただいてお話します。

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第1部

1.ヒトを流れる声の情報

 声は通常音波として存在します。音波は大気の粗密波(音圧の変化でもある)ですがアナログの物理量です。この圧力変化は、外耳道を経て、鼓膜に達します。
 鼓膜は大気の圧力変化に応じて振動します。この振動は中耳の三つの小骨(つち、きぬた、あぶみ)を介して内耳に伝わります。内耳の蝸牛内のリンパ液に振動が伝わると、蝸牛内の基底膜も振動します。
 基底膜には有毛細胞が接しており、この振動で有毛細胞がマイクロフォニックと呼ばれる神経パルス(電気パルス)を発生します。
 なお、基底膜には入り口付近は高い周波数で強く振動し、奥は低い周波数成分に反応します。

 一方の内耳には三万余の有毛細胞があります。ここで発生する神経パルスの振幅はほぼ一定で、その頻度が刺激により種々変化しています。
 このパルスは神経繊維を通じてニューロンに送られます。ニューロンの四段階のネットワークを経て、大脳皮質の知覚性言語野で言語として認識されます。
 また、音の高さ,強度や音色なども認識されます。

 知覚の結果に基づき、運動性言語野で発生器官を制御する神経パルス列を発生します。神経パルスの刺激により,肺の圧力を高めて空気を押し出し,声帯を振動させるとともに、顎,舌、唇,口蓋垂などの発生器官を制御します。
 有声音の場合、声帯の振動に伴って、気流の変化(粗密波)が起きますが、この粗密波は音波であり、音源になります。
 この音源の粗密波は、声帯から唇(鼻孔)までの口腔〔鼻腔〕を共振させます。

 唇(鼻腔)から大気中に放射された粗密波は、圧力波として鼓膜に届きます。また、マイクを通じて圧力波は電圧に変換されます。電気信号になれば、記録・伝送・処理が自由に行なえます。

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2.音声発生のメカニズム

著書声のふしぎ百科  図1は発生器官と音源の波形、音声波形の例です。肺から器官を通じて押し出された空気の流れは,声門を通るとき、声帯がほとんど接触するような状態ならば、声帯は振動し、声帯を通る空気流も振動します。
 この気流の変動は、3角波状です。これを音源として、咽喉、咽頭、口腔から唇にいたる空間(声道とよぶ)が共振します。共振した空気の粗密波は、唇(鼻孔)から空中に放射されます。

 なお、声帯の存在する位置(声門)から、唇までの長さは、成人男性で17センチ、女性で14センチほどですが、人種によって多少異なります。

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第2部 リクエストによるプレゼンテーション

3.母音が声の基礎

講演風景  母音のない言語はありません。母音の差は、声道の形(顎の開き、舌の位置、唇の形など)によります。この模型は、声道の形を変えていますが、その合成音を聞いて下さい。

 母音の数は、言語によって違います。アラビア語は4、スウェーデン語は16です。日本語は少ない方です。母語にない言語の母音は、近い母語で間に合わせて発音し、聞いてしまいます。
 それが、外国語の習得のネックになります。日本人には、子音ではvやth、rとlの発音・聞き取りが難しいのは、同じ理由です。

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4.自分の声は他人の声? からだの組織を伝わる音声のせい

 音声メモの録音、留守電のメッセージやホームビデオなどで自分の声を聞いたとき、自分の声でないと思ったり、違和感を持つことはありませんか。他人の声は、そのままの声で再生できるのに、自分の声だけがおかしく感じます。

 録音された声は、口から放射された音波としての声です。他人の声は、音波として聞いています。それに対し、普段聞いている自分の声は音波として鼓膜から入る声と、発生に伴う口腔や鼻腔の壁、頭蓋骨の振動を、筋肉組織などを通じて聞く音が加わった複合した音です。

 耳孔に指を差し込んで、アイウエオを発音して下さい。イウがびっくりするほど大きく聞こえます。これが、音波ではない声の特徴です。
 このような差が、自分の声が自分でないように聞える原因です。

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5.アナウンサーの声は違うのでしょうか?

 アナウンサーは発音が正確です。母音のばあい、アナウンサーの一般人の声の差を聞いて下さい。また、声の高さにメリハリがあり、そのレンジは一般人の2倍くらいあります。また、語尾まではっきり発音します。  アナウンサーの声は、早く話しても、崩れません。一般人の話し方が、“草書”に当たるとすると、アナウンサーの声は、“楷書”に相当するでしょう。

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6.“回文”があるなら“回音声”があってもいい

 前から読んでも、跡から読んでも同じ語、文になる回文は、昔からの言葉遊びの一つです。
 声で、回文と同じことができないかと考えました。これを回音声と名付けます。
回文を録音し、逆に再生します。みな違う文、意味のない音になります。そこで、ローマ字綴りで、回文をつくり、それを逆再生します。同じように聞こえる語もありますが、破裂音があると違います。また、アクセントがおかしくなります。
 破裂音のないローマ字回文は、回音声に近いのですが、アクセントを含めると、違和感があります。アクセントの平板な、単語では同じように聞こえます。
 かなり難しいですが、回音声にチャレンジしてみませんか。

                                  
おわり
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文責:得猪 外明
会場写真撮影:橋本 曜 HTML制作:大野 令治

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