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神田雑学大学 平成20年10月24日 講座No.429


「まちを元気にするお手伝い」 講師 寺井素子

目次

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プロフィル
銚子市について
銚子市地域再生マネージャー事業
ヨソモノから観た銚子
米国PPPスタディツアー



講師 寺井素子さん

プロフィル

講師 寺井素子さん

元銚子市地域再生マネージャー
現千代田図書館企画・システムプロデューサー

 千代田図書館の寺井と申します。本日は、2007年4月から2008年3月まで1年間を過ごしました銚子のお話しを中心に、今年の夏に行ってまいりました米国スタディツアーについても少しお話しさせていただきたいと思います。


 まず、私のプロフィールですが、都市銀行や外資系投資銀行の秘書、1年弱の米国生活、旅館や料亭の運営を行う株式会社女将塾などを経て、2006年4月に新設された東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻の第一期生として入学しました。少子高齢化で税収が少なくなるなか、官と民がどのように連携して幅広い公共事業を行っていくべきか?を研究し活用していくことを目的にしている分野横断的な社会人向けの大学院です。

私は「公立美術館における公民連携」を研究テーマに選び、政策の実現を目的とした施設のあり方や、効率性と質の向上を目的とした手法選択、そのための官と民の役割分担について考えました。2007年3月に修了し、キャリアチェンジの第一歩となったのが銚子市地域再生マネージャーのお仕事です。

 つぎに、地域の活性化に関心を持ったきっかけについてお話しします。小学校のころ富山県の両親の田舎を夏休み毎に訪れていたのですが、東京と地方の生活や価値観のギャップを子供心に感じていたのが最初のきっかけと言えるでしょうか。

大学は国文学専攻です。卒業時は就職氷河期だったためとりあえずOLになり、国内外の旅行を楽しむようになりました。そして小さくても個性的で魅力的な欧米やアジアの街と比べ、国内の疲弊した金太郎飴型の観光地や温泉街に幻滅し、素晴らしい素材があるのに、どうしてこうなってしまったのだろう?と思うようになったのです。

銚子市について

 銚子市の概要 銚子市は本州の東端に位置し、天気予報でも出てきますので、行ったことがなくても場所はわかる、という人が多いのではないでしょうか。夏は東京より2-3度低く、冬は2-3度高い温暖な気候で、ただし風が強いため、体感温度は数字より少し低いです。温暖で高湿な海洋性気候を生かした醤油醸造が盛んでヤマサ、ヒゲタの2大メーカーがあります。

銚子犬吠崎灯台  東京からの距離感 直線距離で約120キロ、JRの特急で2時間弱です。特急は本数が少なく銚子発の最終が18時台と利便性は高くありませんが、その代わり高速バスが毎日約40本走っています。毎日の通勤は難しくても、小旅行にはちょうど良い距離で、昔から文人墨客も訪れるところでした。しかし、近年は観光客が減少傾向にあります。私自身が今回はじめてでしたし、私が銚子に居る間に訪ねてくれたゲスト8組11名(20代後半〜40代前半)のうち、銚子に来たことがあったのは1名のみでした。所要時間からすると、軽井沢や熱海、箱根と同じくらい気軽に行ける場所なのに、小旅行先としての認知度が低いのです。

銚子港の漁船  人口 銚子市の人口は、昭和40年の91,492人をピークに減少しています。世帯数は核家族化等により増加傾向にありましたが、平成19年をピークに減少に転じています。人口・世帯数の減少は近年急激で、17年の75,020人26,812世帯から減り続け、19年6月1日現在73,856人 27,261世帯、20年6月1日現在72,573人 27,135世帯、同年1月1日現在 72,233人 27,081世帯と推移しています。人口構成は、50代後半が最も多く若年層が少なく、少子化による学校の統廃合や老朽化した校舎の立替が進められています。

 産業 銚子といえば漁業が有名で、平成18年度・19年度に2年連続で数量では日本一になっています。一方、金額では6位となり、金額が1位で数量が7位の福岡と対照的です。また、あまり知られていませんが、実は農業も大変盛んです。とくにキャベツ畑の風景は観光資源にもなっています。ただ、市外の一般消費者には「灯台印」の認知度は低く、またお土産に買おうとしても直売所などはほとんどありません。
銚子港の漁船 工業は、食料品が高い割合を占め、その中でも水産加工業が圧倒的な比率を占めています。銚子でとれるイワシ、サバ、サンマの缶詰などが有名です。商業は、事業所数、販売額ともに減少傾向にあります。

 食料自給率 景気の悪い話ばかりが続きますが、銚子のカロリーベースの食料自給率は258%(平成17年度概算値)と驚異的で、日本が40%、千葉県が29%であることを考えると、大変な強みといえます。
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銚子市地域再生マネージャー事業

 地域再生マネージャー事業とは 地域総合整備財団(通称:ふるさと財団)による事業で、市町村の地域再生を目的とする取組を推進するため、地域再生に係る業務を委託する経費の一部を、3年間を限度として助成する事業です。平成16年度〜19年度新規募集まで(21年度終了予定)で終了し、現在は「地域再生人材相談事業」で蓄積されたノウハウの継承と共有が図られています。幅広い取組が対象となっており、自然体験型観光推進事業、バイオマス等他産業との連携による産業観光創出事業、ブランド戦略とIT活用による地域活性化、まちなか再生と食を活用したコミュニティビジネス創出事業など様々な事例があります。

 17年度・18年度の活動 銚子市では17年度から導入され、18年度にかけては、活性化のヒントとなる60のテーマの提案、人材の発掘と支援、「銚子を元気にする講座」(8回)の開催、商店街関係者へのアドバイスなどを行いました。3年間継続可能な事業の最終年度にあたる19年度は、常駐者を置いてほしいという市からの強い希望があり、ちょうど大学院を修了して職探しをしていた私が雇われ、派遣されたのです。

 19年度の活動 まず、商店街支援・経営者の意識改革を目的として、商店主向け講座、商店街への出張講座、視察、商店街イベントの支援を行いました。銚子には、漁業と水運で利根川沿いに栄えた時代、観音様の門前町として発展した時代、JR駅を中心に栄えた時代があり、港と駅を結んだ商店街を合計しただけでも、全長2〜3キロにおよびます。この他にも数多くの商店街があり、営業している店のほうが少ない通りもあります。その全部が全盛期の輝きを取り戻すのは不可能ですが、元気のある商店や商店街をまわって、まちの情報をもらい、アドバイスをする、といった活動をしました。

銚子案内書・とっておき、銚子散歩  最終年度は、観光PRも重点項目としました。観光情報拠点として活用できる首都圏の観光インフォメーション施設、博物館、民間の店舗等を開拓したり、シャトルバスやタクシーを活用した観光の提案や関係者の調整、「飲食店マップ」制作委員会への参加などを行いました。

 小旅行に丁度良い距離を生かし、東洋大学大学院公民連携専攻のゼミ合宿を誘致しました。教授陣を含め16名が参加し、ご協力いただいた市役所の方々を招いて院生によるプレゼンテーションも行いました。この合宿の様子は、銚子テレビ(地元のケーブルテレビ)でも紹介されています。

 そして、思い出深いのが95歳の郷土写真家星野修成氏のミニ写真展を開催したことです。有志4人が1万円ずつ出資して市役所の後援をいただき、市長をはじめとする4日間の来場者数は約320名にのぼりました。商店街の宝飾店内にて開催し、商店街活性化+観光+アートイベントの要素をもつ展覧会となりました。写真展の模様は、中央紙(地方版)、地元紙、銚子テレビで取り上げられたほか、この展覧会をきっかけに郷土史家の先生にご紹介いただき、NHK千葉放送局のラジオ番組「まるごと千葉60分」に星野氏が生出演しました。

 19年度の特徴 19年度の特徴に、地元マスコミへの露出が多かったことがあげられます。着任間もない時期に市長の定例記者会見で紹介してくださったことによるもので、中央紙の千葉版や地方紙に取り上げていただいたほか、星野氏も出演したラジオ番組「まるごと千葉60分」にも招かれ、銚子テレビには4回ほど取材を受けています。

 ブログを活用した情報発信も、最終年度の特徴的な活動です。「地域再生マネージャーの銚子だより」と題したブログは、等身大の目線で写真の多用し、観光・イベント情報や食べ歩きをメインに、国内外の参考事例の紹介や提案も折り込みました。1日1トピックで任期中計331回更新し、アクセス数は20年3月20日に11万件となりました。ちなみに7月7日にチェックしてみたところ13万件でした。いくつかの飲食店から「ブログをみたお客さんが来てくれましたよ」と嬉しい報告をもらったことで観光情報として活用されている実感があり、市民や市役所職員の定期的な閲覧者からも反応をいただいて、「情報共有」ツールとしての可能性も確認できました。共通の話題の提供できたことにより、市内での活動も円滑に行えました。

観光イベント祭り 観光資源文化財

 マスコミへの露出が高くなった結果、諸団体から講演に招かれるようになりました。市内の計11団体で講演し、また、離任直後には市の広報紙へも寄稿させていただきました。はじめてお話を頂いた時は、目上の方が集まる会で、銚子のことをよく知らない私が何を話したらよいのか悩みましたが、開き直って「ヨソモノから観た銚子」と題して背伸びをせず率直にお話ししたところ、想像以上に反響があり、戸惑ったほどでした。問題意識を顕在化するきっかけをつくることができたのではないかと思います。

銚子市地域再生マネージャーブログ “銚子だより” http://choshidayori.at.webry.info/

講演会場風景

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ヨソモノから観た銚子

 それでは講演でお話しした内容を、簡単にお話しします。
 銚子の印象 まず、私は今回の仕事まで、一度も銚子を訪れたことがありませんでした。きっかけや動機がなかったのです。その私が銚子へ来る前に抱いていた印象は、イワシやサンマが沢山とれることや、醤油、犬吠埼灯台、銚子電鉄とぬれ煎餅、澪つくしの舞台だった、という知識にもとづくものです。農業も盛んであることや、キンメダイやカキが美味しいこと、食料自給率の高さ、利根川の河口、祭が盛んなこと、夕陽が美しいことなどは知りませんでした。価値のある情報が、うまく発信できていないのではないでしょうか。

銚子電鉄 利根川河口の夕陽

 JRで銚子に到着した時の第一印象は、低層建築が多くで電線が地中化されているためか、空が広く感じ、天気がよかったこともあって光が明るく感じられました。駅前に降り立つと風向きにもよりますが潮の香りがし、通りを少し歩くと水面が見え、水が近いのも印象的でした。ただしこの水は海ではなく利根川なのです。そして春先で風が強く、干物が美味しいだろうなぁと思ったのでした。五感に訴える第一印象は、銚子の強みです。

 しばらく暮しはじめて気づいたのは、店構えや包装紙などレトロなものや、ビッグ・ボリュームの食べ物がおおく、まちのあちこちで「昭和の香り」を感じることでした。そして、豊富な地魚を使った鮨屋は当然としても、蕎麦屋など、江戸の食文化も存在感があり、隠れた魅力だと思いました。一方、標識や看板が少ないなど地元以外の人には不親切な要素が多く、飲食店での提供が遅く価格設定が高いほか、観光業従事者にも笑顔がないなど、おもてなしの心が足りないのではないかと思う場面もありました。加えて、総武本線の終点駅なのに駅弁もなければ情報拠点のイメージも薄く、銚子駅の存在感の薄さも気になりました。

講演中の寺井講師 産業 すべての産業に共通して足りないのは、「付加価値」と「情報発信」です。  漁業は、魚種が豊富なのが災いして、特定の魚のブランド化が難しいのが問題です。その中で「銚子のつりきんめ」は千葉ブランド水産物第1号認定品となり、市場で有名ですが、一般消費者には必ずしも認識されていません。

 農業は、温暖な気候を生かした野菜の多毛作で大変に盛んなのですが、銚子の名前からは農業のイメージがわきません。全国規模で有名なブランド野菜や有機栽培など、付加価値の高いものが少ないせいかもしれません。灯台印のキャベツは市場では有名ですが、一般消費者までは浸透していません。そして、地魚を食べさせる店はあっても、地元の農畜産物を食べさせる店はほとんどないのです。直売所も同じです。

 製造業や小売業なども、付加価値の高いものが少ないのが特徴です。地元では知られている名物は市内に散在していますが、観光客などがその情報にアクセスできないのも問題です。一方で、地元の食材を生かした付加価値の高い新名物を生みだす目的で「銚子うめぇもん研究会」が設立されたり、Uターン組の若手が活躍するお店などは、注目に値します。

 主力産業の一つである観光は、全体に団体客仕様で個人客への対応の遅れが目立ちます。隠れた観光資源の発掘や、利根川流域の自治体などとの広域連携も課題です。定期観光バスに代わり岬をめぐるシャトルバスは、関係者の連携と認知度の向上が必要です。共通して言えるのは付加価値の向上と情報発信で、大きな投資をしなくてもできることが沢山あります。

銚子風景1 銚子風景2

活性化のキーワード キーワードの1つめは「情報発信」。情報には、トレーサビリティー(産地、生産者)、ストーリー(風景、こだわり、開発秘話)、特長(個性、差別化)などがあります。費用をかけない発信の手段としては、ブログの活用やマスコミ等の利用があげられます。

 2つめのキーワードは「付加価値」です。加工により良い素材をさらに良くするのはもちろん、包装やプレゼンテーションも大切です。先にあげた情報も、大切な付加価値です。付加価値の高いものを継続的に提供し、認知度を高めることによってブランド化することも大切です。

 3つめとして、「本物」を加えたいと思います。定期観光バスで観光地をまわるより特徴のある街並み(生活の舞台)を歩き、豪華な会食料理より地元の人が食べる料理を食べる、といった志向の変化を忘れてはなりません。  このほか、コンパクト・シティなど、活性化を考える際の一般的なキーワードも簡単に紹介しました。

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米国PPPスタディツアー

 今年の夏、東洋大学の公民連携が主催するスタディツアーに参加し、ワシントンDC、アトランタ、オーランド(フロリダ)をまわってPPP(Public/Private Partnership)に関する事例を見てまいりました。

事例 ワシントンDCのユニオン・ステーションは、モータリゼーションの影響で鉄道利用が減少してから、劇場への転用が失敗し、一時は床からキノコが生えていたそうです。それを商業施設に再度転用したのが成功して、現在に至っています。高い天井を生かし、新たに2階部分を作って床面積を増やしているのがポイントです。

ユニオン・ステーション概観" ユニオン・ステーション内部

 ワシントンDCの郊外にあるオイスター・スクール(小学校)は、自治体が財政難のなか老朽化した校舎の建て替えが必要となりました。そこで、民間のディベロッパーに敷地の一部に集合住宅を建てる許可を与える代わりに、校舎の建て替えをしてもらったのです。閑静な高級住宅地の地下鉄駅から5分という恵まれた立地を生かしたプロジェクトです。英語とスペイン語のバイリンガル教育などカリキュラムの充実を図ったおかげで地域の通わせたい学校となり、拡張の計画もあるそうです。

オイスター・スクール新校舎" オイスター・スクール敷地内の集合住宅

 ツアーの目玉は、初のPPP市といわれるサンディ・スプリングス市の見学でした。サンディ・スプリングスは2005年12月に誕生した人口約9〜10万人の市です。市の運営体制は市長と議員6名、公務員はシティ・マネージャーを中心とする4人で、あとは民間スタッフ135名です。日本とは自治体サービスの内容が違いますので簡単に比較はできませんが、受託会社本社のバックアップ体制の活用などにより、効率化と質の向上を図り、市民の高い満足度を得ています。ちなみに、市庁舎は賃貸物件です。

サンディ・スプリングス市庁舎 サンディ・スプリングス市図書館


 サンディ・スプリングス市では、地元の図書館にも立ち寄りました。貸出延滞に罰金制が導入されていることと、図書館が地域のアート活動の拠点になっていることが印象的でした。

 フロリダでは、徹底した景観の管理と、各地から優秀な教師を集めた質の高い学校が特徴的なディズニーが経営する街と、夫婦どちらかが55歳以上なら住むことができる、アクティビティの充実したリタイアメント・コミュニティーを見てきました。

フロリダの学校 フロリダのリタイアメント・コミュニティ


 米国から学べること サンディ・スプリングス市の事例などから、日本の参考になる事項をいくつか挙げます。
 まず、「自治」の考え方が違います。コミュニティー単位での自治が基本で、現在の日本より自治体への依存度が低いのです。アメリカの成り立ちも関係していますが、実は江戸時代の日本も役所への依存度が低かったのです。最近はまちづくりの観点から江戸が見直されています。

 次に、政策の立案・実施の分離です。契約によって公共事業を実施し、組織の柔軟性と成果主義によって効率性と質の向上が図られています。
 そして、合理化とスケールメリットです。特に不動産の所有に対する考え方が違い、自治体は庁舎を所有していません。また、受託会社の本社が提供するシェアード・サービスを活用することで、スケールメリットを出しています。

 最後に、アカウンタビリティ(説明責任)に対する考え方ですが、1980年代の米国も財政難を経験したため、学べることも沢山あります。財政難になると、自治体は限られた財源で市民のニーズにこたえなければならず、市民は税金の使途にシビアになります。日本でも情報公開が進んでいますが、アメリカでは一歩進んで、いかに分かりやすく伝えるか、が求められるそうです。

 時間配分が悪く、十分なお話ができませんでしたが、お時間になりましたのでこれで終わらせていただきます。
終わり

文責:寺井 素子
会場写真撮影:橋本 曜
HTML制作:大野 令治

本文はここまでです



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